25回SCO首脳会議で習近平氏が示した5つの提案とは
2025年9月1日に中国北部の港湾都市・天津で開かれた上海協力機構(SCO)首脳会議で、習近平国家主席が行った基調演説は、ユーラシア地域の安全保障と経済協力の方向性を示す重要なメッセージとなりました。本記事では、その内容を日本語でコンパクトに整理します。
天津で開かれた第25回SCO首脳会議
今回の会議は、上海協力機構の最高意思決定機関である元首理事会の第25回会合として開催されました。習主席は、設立から24年を経てSCOが「世界最大の地域組織」となり、26カ国が参加し、協力分野は50を超え、加盟国の経済規模はおよそ30兆ドルに達していると強調しました。
習主席は、SCOの原点として「上海精神」を改めて位置づけました。これは、相互信頼、互恵、平等、協議、文明の多様性の尊重、共同発展の追求といった原則から成り、加盟国がこの精神に基づいて協力を積み重ねてきたと振り返りました。
「上海精神」とこれまでの成果
演説では、SCOがこれまでに築いてきた具体的な成果がいくつか挙げられました。
- 国境地域における軍事的な信頼醸成メカニズムを構築し、広大な国境を友好と協力の「絆」へと転換してきたこと
- テロリズム、分離主義、過激主義という「三つの勢力」に対する多国間での取り組みを先駆けて実施し、法執行や治安協力を継続してきたこと
- 一帯一路構想の下で、大型プロジェクトから「小さくて美しい」生活密着型プロジェクトまで数多く実施し、中国と他のSCO諸国との累計貿易額が2.3兆ドルを超えたこと
- 約1万4千キロに及ぶ国際陸上輸送ルートが整備され、中国と欧州を結ぶ中欧班列(China-Europe Railway Express)の運行本数が11万本を超えるなど、多面的な連結性ネットワークが整えられてきたこと
- 長期的な善隣友好協力条約を締結し、人文交流や地方間交流、女性・若者・メディア・シンクタンク間のネットワークを広げてきたこと
- 国連など国際機関との連携を深め、「真の多国間主義」を掲げて国際社会で建設的な役割を果たしていると位置づけたこと
習主席が示した5つの方向性
こうした歩みを踏まえ、習主席はSCOの今後に向けて五つの方向性を提示しました。
1. 相違を認めつつ共通点を追求する
加盟国は皆「友情とパートナーシップで結ばれた存在」だとし、互いの違いを尊重しながら戦略的な意思疎通とコンセンサスづくりを進めるべきだと訴えました。協力の「パイ」を大きくし、各国の持ち味を生かすことで、地域の平和と安定、繁栄に責任を果たすことが強調されました。
2. 互恵とウィンウィンの発展
各国の発展戦略をより緊密に連携させ、一帯一路構想の高品質な実施を進めることで、共同で計画し、共同で建設し、その成果を分かち合う枠組みを強めるとしました。エネルギー、インフラ、グリーン産業、デジタル経済、科学技術革新、人工知能など幅広い分野で協力を深め、ともに現代化へと歩む構想が示されました。
3. 開放性と包摂性の重視
ユーラシアは古くから東西交流の舞台であり、人々が交易や文化交流を通じて互いに学び合ってきたと振り返りました。その歴史を踏まえ、加盟国が人的交流を強化し、経済協力を支え合い、互いの文明が共に花開く「文明の庭」をともに育てていくべきだと述べました。
4. 公平と正義の擁護
第二次世界大戦に関する「正しい歴史認識」を促し、冷戦思考や陣営対立、いじめのような行為に反対する立場を明確にしました。国連を中心とする国際体制と、世界貿易機関(WTO)を中核とする多角的貿易体制を支持し、「平等で秩序ある多極化」と「万人に利益をもたらす包摂的な経済グローバリゼーション」を提唱しました。
5. 実効性と効率の重視
SCOの改革を継続し、資源投入と能力構築を強化して、意思決定をより科学的にし、行動をより効率的にする必要性が指摘されました。その一環として、安全保障上の課題に対応する総合センターや麻薬対策センターの活用を進めるとともに、SCO開発銀行を早期に設立し、安全保障と経済協力を支える基盤を強化する構想が示されました。
中国が表明した具体的な支援策
習主席は、中国が自国の発展をSCOの発展と結びつけ、加盟国の人々のより良い暮らしへの期待に応えていくと強調しました。そのうえで、今後の具体的な措置として次のような計画を示しました。
- ニーズのある加盟国で100件の「小さくて美しい」生活関連プロジェクトを実施すること
- 2025年中にSCO加盟国に対して20億元の無償援助を提供すること
- 今後3年間で、SCO銀行連合の加盟銀行向けに100億元の融資を追加で供与すること
- 来年からSCO向けの奨学金枠を現在の2倍に拡大し、共同の博士課程プログラムを立ち上げ、高度人材を育成すること
- 今後5年間で、加盟国に10カ所の魯班工坊(職業訓練拠点)を設置し、1万人分の人材育成機会を提供すること
今後のSCOと国際秩序を見る視点
習主席は、意志があればどんな境界も乗り越えられるという中国のことわざを引用し、SCOの創設理念に立ち返りつつ、人類の「より良い未来」に向けて共に歩むよう呼びかけました。
加盟国数や経済規模が拡大し、国際的な影響力が増すなかで、SCOがどのように地域の安全保障と経済協力、そしてグローバル・ガバナンスの場で役割を果たしていくのかは、日本を含む周辺地域にとっても無視できないテーマです。天津での演説は、その行方を考えるための一つの重要な手がかりと言えます。
Reference(s):
Full text: Xi's speech at 25th SCO Council of Heads of State meeting
cgtn.com








