中国のナノテク特許が世界首位 白書が示す産業の実力
2025年12月8日現在、今週日曜日に北京で発表された白書によると、2000〜2025年に世界で認可されたナノテクノロジー関連特許のうち、中国が43%を占めたとされています。ナノメートルという極めて小さな世界の技術が、いまや世界経済の勢力図を塗り替えつつあります。
中国のナノテク特許、世界の約4割に
白書「China Nanotechnology Industry 2025」は、過去25年間に世界で付与されたナノテク関連特許が107万件を超え、そのうち約46万4,000件を中国が占めているとまとめました。シェアにして43%で、米国、日本、大韓民国(韓国)を合わせた件数を上回る規模です。
この白書は、北京で週末から週明けにかけて開かれている第10回ナノサイエンス・アンド・テクノロジー国際会議のナノテク産業フォーラムで発表されました。主催は中国の国家ナノ科学技術センターで、最新の研究動向と産業戦略を議論する場となっています。
半導体からバイオまで、特許が集中する4つの柱
中国のナノテク特許は、特に以下の4分野に集中しているとされています。
- 半導体デバイス
- 触媒化学
- バイオ医薬(バイオメディシン)
- 新素材
半導体はスマートフォンやデータセンター、自動車などデジタル社会の基盤であり、ナノレベルでの加工技術が性能を左右します。触媒化学は環境技術やエネルギー効率の向上に直結し、バイオ医薬は新薬や遺伝子治療、新素材は軽量で丈夫な部材や次世代電池などに応用されます。
半導体デバイス:都市クラスターが牽引
白書によると、半導体関連のナノテク特許では、北京、上海、深圳、蘇州といった大都市が先導的な役割を果たしています。研究機関や大学、大手企業、スタートアップが地理的に集まり、設計から製造、材料開発までを一体で進める「都市クラスター」が形成されているのが特徴です。
バイオ医薬と新素材:成長が期待される分野
バイオ医薬関連の特許は、北京、上海、広州に集中しているとされます。感染症対策や高齢化への対応など、医療ニーズの高まりを背景に、ナノ粒子を使ったドラッグデリバリー(薬物送達)や診断技術の研究が加速しています。
新素材の分野では、ナノカーボンやナノ複合材料などが注目され、省エネ建材や電気自動車用の高性能バッテリーなどへの応用が見込まれています。こうした技術は、エネルギー転換や脱炭素といった世界共通の課題とも深く結びついています。
中国科学院が世界トップの特許保有者に
特許の出願人別で見ると、中国科学院が2万3,400件の特許を保有し、世界で最も多いとされています。基礎研究と応用研究を一体で進める大規模な研究機関が、ナノテク分野の知的財産の中核を担っている構図です。
さらに、中国のナノテク特許のうち、譲渡やライセンスなど何らかの形で「動いた」特許の割合は8%を超えています。これは、大学や研究所で生まれた技術が企業に移転され、製品やサービスとして活用される「商業化」の効率が高まりつつあることを示しています。
3万4,500社・約1,000万人が働くナノテク産業
白書は、2025年5月時点で中国のナノテク関連企業が3万4,500社を超え、そのうち739社が株式市場に上場していると報告しています。累計の雇用は992万人に達し、一つの巨大産業として社会と経済を支える規模になっています。
ナノテク産業は、単独の「業種」というよりは、エレクトロニクス、自動車、医療、エネルギー、環境ビジネスなど、複数の産業を横断する「基盤技術産業」です。研究開発から製造、サービスまで広範囲に雇用を生み出していることがうかがえます。
世界市場は2025年末に1.5兆ドル規模へ
白書によると、世界のナノテクノロジー市場は2025年末までに1.5兆ドル(約数百兆円)規模に達する見通しです。2018年から2025年までの年平均成長率は17%を超えるとされ、世界経済全体の成長率を大きく上回るハイペースです。
この成長市場のなかで、中国は特許と企業数の両面で存在感を高めています。一方で、欧米や日本、アジア各国・地域も材料、計測機器、医療分野などで強みを持っており、協調と競争が同時に進む構図と言えます。
日本の読者が押さえておきたい3つの視点
今回の白書は、中国のナノテク産業の規模やスピード感を示すと同時に、日本や他の国・地域にとっての問いかけでもあります。日本の読者にとって重要になりそうな視点を3つに整理しました。
- サプライチェーンの変化:半導体や新素材で中国企業の存在感が増すことで、調達先やパートナーの選び方が変わる可能性があります。
- 共同研究と国際ルールづくり:医療や環境など、人類共通の課題に関わるナノテクでは、国際共同研究や安全性・倫理に関するルールづくりがより重要になります。
- 人材と教育:ナノテクは物理、化学、生物、情報などを横断する分野です。研究者だけでなく、ビジネスや政策に関わる人も、基礎的な理解を持つことが求められつつあります。
ナノメートルという肉眼では見えない世界での競争と協力が、日常のデジタル機器や医療、エネルギーのあり方を左右する時代になっています。2025年のいま、私たちはどのような技術を育て、どのようなルールと価値観でそれを使っていくのか――今回の白書は、その問いを静かに投げかけているように見えます。
Reference(s):
cgtn.com








