中国で初の全国科学普及月 30日間のサイエンス・カーニバル
中国で今年9月、初めての「全国科学普及月」が始まり、30日間にわたるサイエンスの祭典が全国各地で展開されました。改正された「科学技術普及法」に基づき初めて実施されたこの取り組みは、科学技術の成果をわかりやすく伝え、市民一人ひとりが科学に親しむきっかけづくりを目指しています。
全国規模の「科学カーニバル」がスタート
全国科学普及月は、中国科学技術協会が主催する新たな国家プロジェクトです。期間中は、科学技術の革新的な成果に光を当てるとともに、科学精神や科学者たちの歩みを紹介し、科学を身近な「生活のことば」にしていくことが掲げられました。
開幕式は、北京の国家科学技術伝播センターと中国科学技術館で行われ、これを皮切りに、9月を通じて100件を超える関連展示やイベントが企画されました。テーマも宇宙やエネルギーから日常生活に役立つテクノロジーまで幅広く、子どもから大人までを対象にした内容となっています。
30以上の研究チームが参加 「見て・聞いて・触れる」展示
目玉の一つが、30を超える研究チームの成果を集めたイノベーション成果展です。これまでにない「初の試み」となる展示も多く、来場者が実際に装置に触れたり、音や映像で仕組みを体感したりできるよう工夫されています。
中国科学技術館のスタッフであるWei Lei氏は、電子繊維を使った新素材の展示について次のように説明しています。
「この新しい電子繊維の核となるのは導電性の繊維です。繊維自体は細いのですが、その内部には非常に精密な微細構造が組み込まれています。交流電流を流すと、発光層が光を放ちます」と語り、肉眼では見えないミクロの構造が光という形で立ち現れるプロセスを紹介しました。
来場者は、発光する繊維の実物を見たり、その仕組みの解説を聞いたり、素材に触れて質感を確かめたりしながら、研究室の世界と日常生活をつなぐイメージを膨らませることができます。
広がる連携 「みんなでつくる」科学普及
全国科学普及月のもう一つの特徴は、幅広い組織が連携している点です。中国科学技術協会の科学普及部門トップであるNi Zhiyu氏によると、今回の取り組みには、全国レベルの学会や地方の科学技術協会だけでなく、企業、大学、研究機関、教育拠点、ミュージアムネットワーク、各種アカデミーなどが参加しています。
Ni氏は、「全国各地で特色ある活動を展開し、すべての分野を取り込み、すべての地域をカバーし、全メディアを活用し、市民全員が参加し共有できる科学普及の祭りをつくりたい」と話します。
- 分野横断的で「オール・サイエンス」の内容
- 都市部から地方までを含む全国的な展開
- オンラインとオフラインを組み合わせた情報発信
- 市民参加と体験を重視したプログラム
こうした設計により、科学イベントが一部の専門家だけの場ではなく、幅広い人々が自然に参加できる「社会の行事」として根づくことが期待されています。
法律で位置づけられた「9月の科学月間」
中国では、改正された科学技術普及法が2024年12月25日に施行され、毎年9月を全国科学普及月と定めました。今回の取り組みは、その新制度のもとで迎えた最初の年となります。
法的な裏付けが与えられたことで、単発のキャンペーンではなく、毎年継続して科学普及を進める枠組みが整った形です。教育機関や研究機関、企業なども、9月を軸にした長期的なプログラムやアウトリーチ活動を計画しやすくなります。
「科学を楽しむ」文化づくりへ
今回の全国科学普及月は、最先端の研究成果を披露する場であると同時に、科学を楽しむ文化を育てる試みでもあります。展示やイベントの多くが、専門用語をできるだけかみ砕き、体験や対話を通じて理解を深めるスタイルをとっているのが印象的です。
デジタル技術が生活のあらゆる場面に入り込むなかで、科学の仕組みや限界を知り、自分なりの納得感を持つことは、社会の議論に参加するための基盤にもなります。全国科学普及月のような取り組みは、そうした「静かなリテラシー」を育てる一つの場と言えそうです。
今年立ち上がったこの新しい試みが、今後どのように市民の日常と結びつき、どのような形で発展していくのか。来年以降の9月の動きにも、静かに注目が集まりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








