中国発AI眼科モデル「EyeFM」国際試験で診断精度が大幅向上
AIを使った新しい眼科医療の国際ニュースです。 中国本土の研究チームが中心となって開発した視覚AIモデル「EyeFM」が、国際臨床試験で医師の診断精度を大きく高めたと報告されました。日常診療の「第二の目」になり得るこの技術は、世界の目の健康をどう変えるのでしょうか。
中国主導の国際チームが開発
医学誌Nature Medicineに掲載された今回の研究は、中国本土の清華大学(Tsinghua University)と上海交通大学(Shanghai Jiao Tong University)が中心となり、複数の国・地域の研究者と協力して進められました。2025年現在進む医療AIの中でも、国際的な規模とデータ量の大きさが目を引きます。
視覚に特化した「基盤モデル」EyeFM
研究チームが開発した「EyeFM」は、眼の画像からさまざまな病気の兆候を読み取ることを目的とした視覚に特化した基盤モデルです。基盤モデルとは、大量のデータで事前学習し、さまざまなタスクに応用できるAIの土台となるモデルのことを指します。
EyeFMは、世界の多民族データセットから集めた約1450万枚の眼の画像と、それに対応する臨床テキストを組み合わせて学習しています。単一の国や人種ではなく、多様な背景を持つ患者データを取り入れることで、幅広い人々に対応しやすいモデルを目指したとされています。
国際臨床試験で「第二の目」として検証
EyeFMの性能は、中国、インド、マレーシア、デンマーク、赤道ギニア、アメリカ合衆国の一次医療機関や専門クリニックで働く44人の眼科医によって検証されました。研究では、このモデルを医師の診断を補助する「臨床のコ・パイロット(副操縦士)」として位置づけています。
- 6つの国・地域の医師が参加
- 一次医療から高度専門医療まで、さまざまな現場を想定
- AIと医師が協力する形での実用性を評価
診断精度が92.2%に向上
さらに、中国の医療機関で行われた単施設・二重マスクの臨床試験では、EyeFMの効果が具体的な数字として示されました。二重マスクとは、医師も患者も自分がどのグループに属しているかを知らされない、公平性を高めた試験デザインのことです。
この試験には、網膜疾患のリスクが高い668人の患者が参加し、16人の眼科医が次の2つのグループに無作為に分けられました。
- EyeFMのサポートを受けながら診断するグループ
- 従来通りの診療のみを行うグループ(対照群)
主要な分析では、EyeFMのサポートを受けた医師の診断精度は92.2%に達し、対照群の75.4%と比べて大きく向上しました。約17ポイントの差は、見逃しや誤診を減らすうえで無視できない数字といえます。
従来の医療AIとの違い
今回の研究は、これまでの眼科向けAIツールの限界も浮かび上がらせています。論文によると、従来のツールには次のような課題がありました。
- 画像だけなど、単一のデータ種別からしか学習していない
- 過去の診療記録に偏り、さまざまな施設や状況で事前検証されていない
- ランダム化比較試験がほとんど行われてこなかった
- 医師とAIがどのように協働できるかを評価した研究が少ない
EyeFMは、こうした弱点を補う設計になっています。
- 眼の画像と診療記録のテキストを組み合わせた学習
- 世界の多民族データセットを用いたトレーニング
- 一次医療から専門病院まで、さまざまな現場での利用を想定した検証
- 医師がAIの提案に対してフィードバックを返し、それを素早く反映できる「ドクターフィードバック」機能
このフィードバック機能により、設備が限られた診療所でも、最先端の専門病院でも、現場ごとのニーズに合わせてモデルを調整しながら使っていける設計になっているとされています。
研究はまた、こうした大規模医療AIモデルの開発と評価の進め方そのものが、他分野でAIを導入する際の「再利用可能な設計図」になり得ることも示しています。
一次医療から専門病院まで、どう使えるか
研究チームはEyeFMを、医師に代わる存在ではなく、臨床のコ・パイロットとして位置づけています。実際に想定される活用場面としては、次のようなものがあります。
- 一次医療のクリニックで、眼底写真から重症の疑いがある患者を早期に拾い上げる
- 専門病院で、複雑な症例の見落としを防ぐための「ダブルチェック」として活用する
- 医師が不足する地域で、経験の浅い医師の判断を支える補助ツールとして使う
こうした使い方が広がれば、地域や国・地域による医療アクセスの差を少しずつ縮める効果も期待できます。
AIが医師の仕事をどう変えるか
今回の研究は、大規模な医療AIモデルが一次医療と専門医療の両方を支えうることを、高いレベルのエビデンスとともに示したものといえます。一方で、AIが示した結果をどう解釈し、最終判断を誰がどのように下すのかという問いは、これからも残り続けます。
診断精度が上がることで、患者にとっての安心感は高まるかもしれません。その一方で、医師とAIの役割分担、責任の所在、説明の仕方など、社会全体で考えるべき論点も増えていきます。
日本を含む各国・地域の医療現場にとって、今回の国際ニュースは、AIと人間がどのように協働しながら医療をアップデートしていくのかを考える良いきっかけになりそうです。あなたは、自分や家族の目の検査を受けるとき、どこまでAIに関わってほしいと思いますか。
Reference(s):
cgtn.com








