砂漠化地帯が「グリーンエネルギー谷」に 中国内モンゴルの新エネ転換
中国内モンゴル自治区のかつて砂に悩まされた土地が、太陽光発電と砂漠化防止を組み合わせた新エネルギープロジェクトによって、緑豊かなエネルギー拠点へと生まれ変わりつつあります。本記事では、砂地を草原に変えながら電力も生み出す取り組みと、地域産業の低炭素転換の最前線を追います。
砂の大地に広がる太陽光と牧草の共生モデル
中国広核集団(CGN)が中国内モンゴル自治区興安盟科右中旗で進める砂漠化防止一体型プロジェクトの現場では、太陽光パネルの下でライグラスやエノコログサなどの高品質な飼料用牧草が青々と育っています。太陽光発電と砂漠化防止を一体化したこのモデルが、長年砂に悩まされてきた土地に新たな生命を吹き込んでいます。
同プロジェクトは総設備容量30万キロワット(300メガワット)の太陽光発電所で、45メガワットの蓄電設備も組み合わせた構成です。2025年5月30日にはフル出力で送電網に接続され、新エネルギーの安定供給に貢献し始めました。
特徴的なのが、パネルの下に牧草を植える草地と太陽光発電の相互補完モデルです。パネルの日陰や地表温度の緩和効果を利用して、乾燥に強いアストラガルス、ライグラス、ダウリアライムギ、エノコログサ、アルファルファなど約1万1300ムー(約753ヘクタール)の牧草が植えられています。
「かつてこの一帯は、ところどころに草がある程度で、強い風が吹くと砂地がむき出しになり、あちこちに風食の穴ができていました」と、新エネルギー分野で16年の経験を持つプロジェクト電気マネジャーの徐翔氏は振り返ります。
植生回復とCO2削減、地域経済への波及効果
科右中旗林草局の紀仁泰副局長によると、砂漠化が深刻だった時期には50%未満だった植生被覆率が、整備後は70%を超えるまでに回復しました。プロジェクトは年間35万トンの二酸化炭素排出削減効果を持つとされ、気候変動対策の面でも存在感を増しています。
経済的な恩恵も広がっています。地元の牧民は、冬場の家畜用として牧草を無料で刈り取ることができるほか、現場での雇用や牧草播種機械のレンタルなどを通じて収入を得る機会が増えました。
自然環境と地域経済の双方にメリットをもたらすこの取り組みは、次のような二重の成果を生み出しています。
- 砂漠化防止と草地の回復により、生態系を保全
- 太陽光発電と蓄電により、クリーンな電力を安定供給
- 牧草を通じて家畜飼料を確保し、牧民のコストを削減
- 現場での雇用創出により、地域の所得向上に寄与
- CO2削減で、低炭素社会への移行を後押し
一方で、冬季に牧草をどのように生き残らせるか、太陽光パネル清掃用の機械が植生に与える影響をどう抑えるかといった課題も残っています。「研究者のような厳密な姿勢で向き合えば、乗り越えられない問題はありません」と徐氏は話し、データに基づく検証を続けています。
高エネルギー産業の低炭素化 グリーンアルミニウムの台頭
砂地をエネルギーの源に変えるだけでなく、内モンゴル東部ではエネルギー多消費型産業の低炭素化も進んでいます。その象徴が、内モンゴル霍煤鴻駿アルミ・電力が採用するグリーンアルミニウムモデルです。
同社では現在、風力や太陽光などのグリーン電力がエネルギー投入全体の45%を占めています。アルミ精錬は大量の電力を必要とする産業の代表格であるため、電源を新エネルギーに切り替えることが、排出削減の大きなカギになっています。
グリーン電力の比率を高めることで、アルミ製造に伴う炭素排出は大幅に抑えられます。環境負荷の低いアルミ製品は、自動車や家電、建材などの分野で需要が高まっており、企業競争力の向上にもつながります。
新エネルギー産業チェーンが描く宝の盆地構想
東部内モンゴルの新エネルギー開発は、単なる発電事業にとどまらず、設備製造や電力を用いた産業高度化へとつながる産業チェーンの形成を伴っています。風力・太陽光・蓄電を組み合わせた統合型モデルや、従来電源をグリーン電力に置き換えるグリーン電力代替の取り組みが、その中核となっています。
こうした動きにより、かつての砂だらけの荒地は、再生可能エネルギーが集積するグリーンエネルギーの谷へと姿を変えつつあります。持続可能な経済成長を支える宝の盆地としてのポテンシャルも開かれています。
生態保護と経済成長を同時に実現するこのモデルは、似た環境を抱える他地域にとっても参考となり得る事例です。新エネルギーが環境保全と質の高い発展を両立させる黄金のカギになり得ることを、具体的な数字と変化が示しています。
日本の読者への問いかけ 砂漠化対策とエネルギー転換をどう両立させるか
中国内モンゴルの事例は、日本が直面する再生可能エネルギー拡大や地方の活性化を考える上でも、いくつかの示唆を与えます。
- 環境対策とエネルギー供給を一体で設計する発想
- 地域住民の収入や暮らしを支える仕組みづくり
- 産業構造転換とセットで進める長期的なビジョン
砂漠化地帯をグリーンエネルギーの拠点へと変える挑戦は、気候変動時代における地域づくりの一つの方向性を示しています。今後、このモデルがどのように発展し、他地域へ広がっていくのかに注目が集まりそうです。
Reference(s):
Sandy wasteland to green valley: Inner Mongolia's new energy drive
cgtn.com








