中国「Vデー」記念ガラ 戦争の記憶を若者が平和への力に video poster
中国「Vデー」記念ガラ 戦争の記憶を若者が平和への力に
中国人民の抗日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利から80年となる節目の年に合わせ、北京の人民大会堂で記念ガラ「Vデー」公演が開かれました。約90分のステージでは、戦争の記憶をたどりながら、現在の中国社会が掲げる平和への思いと未来へのビジョンが表現されました。
英雄村リュウラオジュアンの82人
公演の冒頭で取り上げられたのが、江蘇省の六老荘村(リュウラオジュアン)の物語です。82年前、この村で82人の中国兵士が、兵力で20倍にも及ぶ日本軍の攻撃から村人を守るため、命を懸けて戦いました。
彼らは最終的に全員が戦死しましたが、その知らせを受けた村人たちは、自ら82人の若者を選び、部隊に志願させたといいます。この出来事から、村は「英雄六老荘村」と呼ばれるようになりました。
ガラでは、このエピソードをもとにした「不朽の六老荘」という演目が上演され、映像や音楽、群舞を通じて、名もなき兵士と村人たちの選択がドラマチックに描かれました。
戦勝80周年を記念する「Vデー」ガラとは
今回の記念ガラは、中国人民の抗日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利80周年をテーマにしたものです。テーマは「歴史を記憶し、烈士を追悼し、平和を大切にし、未来を展望する」。ステージ全体は、過去から現在へと時間軸に沿って構成されました。
音楽や舞踏、朗読などのプログラムは、中国が14年にわたって続けた抗日戦争の節目となる場面を次々と再現しました。占領に抗い続けた都市、防衛線を守った兵士たち、銃後を支えた市民の姿などが、映像演出とともに立体的に語られました。
同時に、この戦争が第二次世界大戦の中で果たした役割、すなわち世界反ファシズム戦争における東方の重要な戦場であったという位置づけも強調されました。
舞台で描かれた「抵抗の精神」
各プログラムを貫いていたキーワードが、「抵抗の精神」です。公演では、次のような価値観が繰り返し強調されました。
- 国家の運命は自分たち一人ひとりが背負うものだという責任意識
- 生死をかけても揺るがない民族としての誇りと一体感
- 絶望的な状況でも最後まで戦い抜こうとする勇気
- どれほど困難でも最終的な勝利を信じる揺るぎない信念
こうしたメッセージは、過去の戦争を美化するためではなく、激しい犠牲の記憶を通じて、戦争の悲惨さと平和の尊さを再確認する内容として構成されていました。
若手クリエイターと出演者が担うバトン
今回のガラの特徴の一つは、制作の中核を若い世代が担っていることです。多くの演目で、1990年代生まれの若手演出家や脚本家が参加し、自分たちなりの視点で「抵抗の精神」を解釈し、表現しました。
出演者も、半数以上が20代前半の若者たちです。リハーサルや制作過程を通じて、彼らは先人が払った犠牲や、戦時下の日常の重さを学び、同時に、なぜ今も平和を守る決意が語り継がれているのかを考える機会を得たといいます。
舞台上では、歴史の当事者ではない世代が、当時の兵士や市民を演じることで、世代を超えた対話のような時間が生まれていました。歴史教育とエンターテインメントが交差する場としての文化イベントの役割が、ここにはあります。
過去から未来へ:中国式現代化と平和への決意
ガラのプログラムは、過去の出来事を振り返るだけではありません。戦後80年の歩みを振り返りながら、現在の中国社会がめざす「中国式現代化」の姿も描き出されました。
インフラ整備や科学技術の発展、人々の生活水準の向上など、数十年にわたる変化が映像と音楽で紹介され、「より良い暮らしを追求する」というテーマが強調されました。その基盤にあるものとして、戦争を二度と繰り返さず、平和な環境のもとで発展していくというメッセージが織り込まれています。
公演の締めくくりでは、中国が今後も平和的な発展の道を歩み続けるためには、多くの人、とくに若い世代が「抵抗の精神」を受け継ぎ、情熱と能力を社会にささげることが重要だと呼びかけられました。この「抵抗」は、もはや銃を手に取ることではなく、困難や不平等に向き合い、社会をよりよくしていこうとする姿勢を指しているように見えます。
日本の読者にとっての意味
日本に暮らす私たちにとって、中国の戦勝記念ガラは、どのような意味を持つのでしょうか。ひとつ言えるのは、戦争の記憶をどう語り継ぐかは、どの社会にとっても避けて通れないテーマだということです。
今回のガラは、歴史認識の違いを強調するものというよりも、自国の経験をもとに「平和の価値」を次の世代に伝えようとする試みとして位置づけられます。舞台の中心に若者を据えた演出は、アジアの将来を担う世代が、過去を学びながら新しい関係を築こうとしている姿の一端とも受け取れます。
戦争の記憶をめぐる議論は、ときに感情的になりがちです。ただ、こうした文化イベントをきっかけに、歴史、平和、そしてこれからの東アジアのあり方について、落ち着いて考えたり、周囲と対話したりする余地も生まれます。ニュースを読み、事実を知ることから、次の対話が始まるのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








