中国・蕪湖で新型無人機と小型機が初公開 低空経済イベントを読む
2025年9月5〜7日に中国東部の安徽省蕪湖市で開かれた「2025低空経済発展大会」で、新型の物流用無人航空機(UAV)と小型固定翼機が初めて一般公開されました。中国の低空経済を象徴するこの動きを、日本語で整理します。
低空経済イベントで何が起きたのか
「2025低空経済発展大会」は、中国の低空経済分野の専門家や起業家など100人以上が集まった国際ニュース性の高いイベントです。テーマは「シナリオイノベーションが牽引し、安全で秩序ある発展を」。産業同士が交流する場をつくり、低空経済の高品質な発展をめざすことが目的とされました。
会場となった蕪湖市は、ここ数年、航空・ドローン関連産業の集積を進めている都市です。この大会は2022年から4年連続で開かれており、今回までに合計82件の重点プロジェクトが契約され、投資総額は598億元(約84億ドル)に達しています。
新型貨物ドローン「祥雲V」のポイント
今回の低空経済ニュースの中心のひとつが、初公開となった貨物ドローン「祥雲V」です。これは、中国電子科技集団(CETC)傘下の蕪湖鑽石飛機製造公司が独自に開発した無人航空機で、研究開発段階では詳細がほとんど公表されていませんでした。
「祥雲V」は、双発エンジンを備えた貨物ドローンで、最大5トン級の機体に次のような性能を持つとされています。
- 最大ペイロード(積載量):2,000キログラム
- 最大航続距離:2,000キロメートル
- 貨物室容積:14.5立方メートル
設計コンセプトは、多様な航空物流への対応です。通常の貨物輸送に加え、緊急救援などのシーンも想定されており、遠隔地の物流ニーズに低コストかつ効率的に応えることが期待されています。開発企業によれば、コア技術を含めて「完全な国産化」を実現し、自立的な技術コントロールを確保している点も強調されています。
物流と防災をつなぐ低空インフラ
一定の積載量と航続距離を両立した貨物ドローンが普及すれば、従来は時間やコストの面で不利だった遠隔地への輸送が変わる可能性があります。災害時に道路網が寸断された場合にも、空から生活物資や医療物資を届ける手段として機能することが想定されます。
低空経済は「新たな空のインフラ」をつくる試みとも言えます。今回の「祥雲V」の登場は、その一つの具体的なかたちとみることができます。
新世代4人乗り機「CA40」の特徴
もう一つの主役が、新世代の4人乗り固定翼機「CA40」です。こちらも研究開発中は詳細が伏せられてきましたが、会場で仕様が公表されました。
「CA40」は、フライトトレーニング(操縦訓練)を主な用途として設計された小型機で、次のような特徴があります。
- 座席数:4席
- 最大巡航速度:時速260キロメートル
- 航空電子機器とエンジン:ともに国産システムを採用
- 機体:全複合材(オールコンポジット)構造で、設計上の寿命制限なし
安全面では、スピン(失速旋回)に入りにくい設計や、機体に氷が付着することを防ぐ防氷機能などが組み込まれているとされています。燃料面では、重油系燃料に対応したエンジンにより、高い燃費性能を追求している点もアピールされています。
訓練から観光まで、多用途を想定
「CA40」は、操縦訓練機としての利用に加え、次のような用途への展開が見込まれています。
- 航空学校などでのパイロット養成
- 上空からの巡回・パトロール
- 観光飛行
- 個人や企業によるプライベート航空利用
燃費や機体寿命といった運用コストにかかわる要素を抑えつつ、安全機能を強化した設計は、低空経済の前提となる「安全で秩序ある運航」の一端を担うものと言えそうです。
蕪湖が示す「地方都市×低空経済」のモデル
蕪湖市は、2022年から4年連続で低空経済発展大会を開催してきました。2025年までに締結された重点プロジェクトは82件、投資総額は約598億元に上ります。これは、地方都市が特定の産業分野に焦点を合わせ、継続的に企業とプロジェクトを呼び込むことで、新しい産業クラスターを形成しようとしている動きと捉えられます。
2025年の大会では、航空機そのものの発表だけでなく、産業同士が連携するための「シナリオ」、つまり具体的な活用場面やビジネスモデルの議論も重視されました。低空経済は、航空機メーカーだけでなく、物流、観光、防災、デジタルインフラなど多様な分野と結びつく可能性があるからです。
日本の読者がどこに注目するとおもしろいか
日本語で国際ニュースを追う読者にとって、この低空経済の動きは次のような視点で考えるきっかけになりそうです。
- 物流の再設計:ドローンや小型機を前提にすると、山間部や遠隔地への物資の届け方はどのように変わりうるのか。
- 安全とルール作り:大会テーマに「安全で秩序ある発展」とあるように、技術だけでなく運航ルールや監視体制がどれだけ重要か。
- 地方都市の戦略:蕪湖のように、地方都市が特定分野のイベントを継続開催し、投資を集めていくモデルは、他地域でも応用できるのか。
低空経済は、単に新しい航空機が増えるだけではなく、「空の使い方」をめぐる社会の合意形成が問われるテーマでもあります。どんな技術やルールがあれば、私たちの生活は本当に便利で、安全になるのか――中国・蕪湖からのニュースは、そんな問いを静かに投げかけています。
Reference(s):
cgtn.com








