中国の山でサーモン養殖?新疆・天山で進む「内陸サーモン」の今 video poster
中国の内陸部、新疆ウイグル自治区の天山山脈でサーモンが養殖されています。海から遠く離れた山でサーモンを育てるこの取り組みは、どのような環境と技術に支えられているのでしょうか。この国際ニュースを、日本語で分かりやすく整理します。
氷河の雪解け水が育てる「山のサーモン」
サーモントラウト(サーモンと同じサケ科の魚)は通常、冷たい海や川で養殖されるイメージがありますが、中国では新疆ウイグル自治区の天山山脈の高地で、まったく違うスタイルの養殖が進んでいます。
現地の養殖場は、天山山脈の高所に位置し、氷河からの雪解け水を利用しています。この雪解け水は、
- 不純物が少なく澄んでいる
- 冷たく、サーモンの生育に適した水温を保ちやすい
- 酸素が豊富で、魚が元気に育ちやすい
といった特徴があり、サーモントラウトの成長に理想的な環境をつくっているとされています。こうした「山のサーモン」は、内陸部でも高品質な魚を安定的に供給したいというニーズのなかで注目を集めています。
高地養殖を支えるハイテク設備
天山山脈の養殖場では、魚はハイテク設備を備えた施設で育てられています。水温や水質、酸素量などを細かく管理することで、魚の健康状態を保ち、効率的な生産を目指しているとみられます。
収穫のタイミングになると、サーモントラウトは大きなチューブを通して真空ポンプでやさしく吸い上げられます。この方法は、
- 人の手で何度もすくい上げる必要がない
- 魚体に強い衝撃を与えにくい
- 短時間で多くの魚を移動できる
といった点から、魚に余計なストレスを与えにくい仕組みだとされています。ストレスが少ない処理は、魚の品質や身の締まり、さらには衛生面にもつながると考えられています。
新疆・尼勒克県での一貫体制と鮮度へのこだわり
収穫されたサーモントラウトは、新疆ウイグル自治区の尼勒克(ニルカ)県にある加工施設へと運ばれます。現地には世界水準とされる加工設備が整い、短時間で処理が行われます。
現地の流れは、おおまかに次のように整理できます。
- 天山山脈の高地の養殖場でサーモントラウトを育成
- 収穫時に真空ポンプでチューブを通じて移送
- 尼勒克県の施設で、数時間以内に急速冷凍(フラッシュフリーズ)
- 同じ施設内で加工し、出荷の準備を整える
養殖から冷凍・加工までを一つの地域で完結させることで、「養殖場から食卓まで」の時間を短くし、高い鮮度を維持しやすい体制を整えている点が特徴です。現地では、こうしたプロセスによって他にない鮮度の魚を届けられるとしています。
サステナビリティと食の安全保障へのヒント
海から遠く離れた山岳地帯でのサーモン養殖は、サステナビリティ(持続可能性)の観点からも注目されています。氷河の雪解け水を活用しつつ、高度に管理された施設で魚を育てることで、安定した生産を目指していると考えられます。
また、内陸部でも高付加価値の水産物を生産できれば、
- 消費地に近い場所での生産による供給の安定
- 長距離輸送に伴う時間やリスクの低減
- 冷凍技術によるフードロス(食べられるのに捨てられる食品)の抑制
といった点でもメリットが生まれる可能性があります。こうした取り組みは、今後の食の安全保障や水産業の新しいモデルとしてどのように発展していくのかが、引き続き注目されます。
私たちが考えたい3つのポイント
新疆の「山のサーモン養殖」は、日々の買い物や食卓の選択を見直すヒントにもなります。記事の最後に、考えるきっかけとなるポイントを3つ挙げます。
- 1. 鮮度とは何か
現地では数時間以内の急速冷凍と加工により鮮度を重視しています。私たちが「鮮度が高い」と聞いたとき、どのようなプロセスをイメージするでしょうか。 - 2. 技術と動物への配慮
真空ポンプでの移送は、魚にストレスをかけにくい方法として導入されています。ハイテク技術と動物への配慮を、どう両立させていくべきかという問いも浮かびます。 - 3. 環境負荷とエネルギー
高地のハイテク養殖や急速冷凍には、電力などのエネルギーも必要になります。安全でおいしい水産物を確保しつつ、環境とのバランスをどう取るのかも重要な論点になりそうです。
海から遠く離れた新疆の山で育つサーモンは、技術と環境、そして食の安全保障が交差する新しい水産モデルの一つといえます。今後、同様の試みが世界各地で広がるのか、日本の食卓にもどのような形で影響してくるのか、引き続きウォッチしていきたいテーマです。
Reference(s):
Why China is farming salmon in the mountains – far away from the ocean
cgtn.com







