中国CERES-1ロケットが新衛星打ち上げ ロマンチックな任務名「鵲橋仙」 video poster
2025年9月5日、中国北西部の酒泉衛星発射センターから商業ロケット「CERES-1 Y15」が打ち上げられ、3基の衛星と「エロス・スター」軌道上試験プラットフォームが太陽同期軌道に投入されました。中国の商業宇宙分野の進展と、そのロマンチックな任務名が話題になっています。
9月の打ち上げミッションの概要
今回の打ち上げは、2025年9月5日金曜日の19時39分に行われました。打ち上げに使われたのは、民間企業が運用する小型商業ロケット「CERES-1」の15号機(Y15)です。
ロケットには次の4つのペイロードが搭載されました。
- エロス・スター軌道上試験プラットフォーム(2号機)
- 衛星「Kaiyun-1」
- 衛星「Yuxing-3 08」
- 衛星「Yunyao-1 27」
これらは太陽同期軌道と呼ばれる、高度や軌道面が工夫された軌道に投入されています。太陽同期軌道は地球観測などに広く使われる軌道で、今回の衛星ミッションとも相性が良いといえます。
「エロス・スター」とは何か
エロス・スターは、中国で初めての国産商業ロケット上段の軌道上試験プラットフォームです。中国の民間企業「Galactic Energy」が独自に開発しました。
2024年6月6日に1号機が打ち上げられており、今回の2号機はそれに続く存在です。約1年3か月を経て、ふたたび新たな試験プラットフォームが軌道に送り出されたことになります。
エロス・スターは、CERES-1ロケットの最終段をベースに、軌道上で長期間運用できるようにシステムを改修したものです。これにより、次のような特徴を持つ「試験の場」として機能します。
- 長期間、軌道上で運用できる上段ステージ
- 新しい技術・部品・製品の低コストな軌道上実証
- 複数の顧客や用途に対応しやすい、柔軟な試験環境
本来は使い捨てになりがちなロケット上段を「軌道上プラットフォーム」として再活用することで、ロケットの利用価値を高め、商業宇宙における資源再利用の新しい形を探る試みでもあります。
3基の衛星、それぞれの役割
今回の打ち上げでは、性格の異なる3基の衛星も同時に軌道へ送り出されています。いずれも地球観測や宇宙環境の理解に役立つミッションを担っています。
Kaiyun-1:地球観測と宇宙センシング
「Kaiyun-1」衛星は、主に地球観測と宇宙センシング(宇宙環境の観測)に用いられます。観測データを収集し、地上へ送信することで、さまざまな科学研究に必要な基礎データを提供します。
こうしたデータは、気候・環境のモニタリングや災害対応、地理情報サービスなど、多様な分野で活用される可能性があります。
Yuxing-3 08:新素材と高解像度リモートセンシング
「Yuxing-3 08」衛星は、軌道上で新しい温度適応型材料の試験を行うことが大きな目的です。宇宙空間では、温度が大きく変化するため、こうした環境に対応できる材料の性能評価は重要です。
その後、この衛星は地球観測ミッションにも活用される予定で、分解能5メートル級のリモートセンシングカメラを使って地表を撮影します。都市計画や農業、資源管理などへの応用が想定される解像度です。
Yunyao-1 27:GNSS掩蔽観測で大気を「透視」
「Yunyao-1 27」衛星には、衛星測位システム(GNSS)の信号を利用した「掩蔽(えんぺい)観測」用の装置が搭載されています。
この観測手法では、GNSS信号が地球大気や電離圏を通過する際の変化を捉えることで、大気の温度・湿度・気圧、さらに電離圏の電子密度といった情報を取得します。
得られたデータは、気象予測の高度化や気候変動の研究、通信・測位の精度向上などに役立つと考えられます。
任務コード「鵲橋仙」に込められた物語
今回のCERES-1 Y15ミッションには、「鵲橋仙(Que Qiao Xian)」という任務コードが付けられました。これは中国でよく知られた詩と伝説に由来します。
物語の主人公は、天の川によって引き裂かれた恋人同士「牽牛(牛飼い)」と「織女」です。彼らは一年に一度だけ、カササギたちがつくる橋「鵲橋」の上で再会できるとされています。この伝説は、七夕や中国の「七夕節(七夕祭)」とも結びつき、「中国版バレンタインデー」として親しまれています。
今回のミッションバッジには、この「鵲橋」が描かれています。そして2024年6月に打ち上げられた1号機と、今回の2号機という2基のエロス・スター試験プラットフォームが、軌道上で「出会う」ことになります。技術ミッションでありながら、物語性のあるネーミングを通じて、中国の宇宙開発のロマンチックな一面も垣間見える構図です。
中国の商業宇宙分野にとっての意味
エロス・スターを開発したGalactic Energyは、これまでに27の顧客のために合計85基の衛星ペイロードを軌道へ送り出してきました。打ち上げ実績を積み重ねることで、中国の商業宇宙分野における信頼性を示しているといえます。
今回のミッションには、次のようなポイントがあります。
- ロケット上段の再活用による、資源の高度利用とコスト低減へのチャレンジ
- 地球観測・新素材・大気観測という異なる分野の衛星を同時に打ち上げることで、多様なニーズに応える商業宇宙サービスの姿を示したこと
- 任務名「鵲橋仙」が象徴するように、技術と文化的ストーリーを組み合わせた発信スタイル
小型衛星や軌道上実証の需要が高まるなかで、こうした商業ロケットと試験プラットフォームの組み合わせは、今後の宇宙ビジネスの重要な選択肢の一つとなっていきそうです。
日本の読者にとっても、単なる「打ち上げ成功」のニュースとして片付けるのではなく、商業宇宙のビジネスモデルや、技術と文化をどう結びつけて発信していくかという視点から眺めることで、新しい問いや発想が生まれてくるかもしれません。
Reference(s):
CERES-1 rocket launches new satellites for China's space program
cgtn.com








