中国の大気汚染対策、世界が注目 PM2.5削減と成長の両立
国連が定める「きれいな空気のための青い空の国際デー」に合わせて、中国の大気汚染対策があらためて世界の注目を集めています。環境をめぐる国際ニュースの中でも、その成果とスピード感が際立っています。今年のテーマは「Racing for Air(より良い空気への競争)」で、北京では国連環境計画(UNEP)中国事務所が記念イベントを開きました。かつて深刻な大気汚染で知られた中国が、どのようにして「青い空」を取り戻しつつあるのかを数字とともに見ていきます。
国連記念日に、中国の青い空に注目
中国メディアCMGによると、イベントに出席した国連関係者は、大気汚染は依然として「現代で最も深刻な環境・健康リスクの一つ」だと指摘しました。汚染物質は国境を越えて拡散するため、すべての国と地域が責任を分かち合い、大気を守る必要があると強調しました。
その一方で、かつて世界で最も大気汚染が深刻な都市の一つとされた北京が、現在では世界で最も空気がきれいな首都の一つに変わりつつある点が紹介されました。中国の取り組みは、国際社会から高い評価を受けています。
北京が示した「汚染都市」からの転換
中国で国連コーディネーターを務めるChang Qide氏は、中国が講じてきた大気汚染対策について「環境改善のための強力な枠組みを築いた」と評価しました。特に、民間企業と国有企業の双方が参加し、かつて大きな排出源だった産業も巻き込んだ協力体制が特徴だといいます。
Chang氏は、北京の経験が世界の他の都市にとっても重要な参考になると指摘しました。都市ごとに事情は異なるものの、「汚染の削減と経済発展は両立しうる」というメッセージは共通しているからです。
10年でPM2.5を57%削減、それでも成長率5%超
CMGによれば、過去10年で中国の国内総生産(GDP)は69%増加する一方、大気中の微小粒子状物質PM2.5の濃度は57%低下しました。重度汚染の日数も92%減少したとされています。
それでも中国は、年間5%を超える経済成長率を維持してきました。従来、「経済成長か環境保護か」という二者択一で語られがちだった中で、中国は両方を同時に進めるモデルケースとして注目されています。
PM2.5は、直径2.5マイクロメートル以下の非常に小さな粒子で、肺の奥深くまで入りやすく、心肺機能への影響が懸念されています。この指標が大きく改善していることは、健康リスクの低減にもつながると期待されています。
7年で米国30年分の削減という評価
中国工程院メンバーのHe Kebin氏は、米メリーランド大学の研究機関の分析を紹介しました。それによると、中国のPM2.5濃度の削減幅は7年間で、米国が30年かけて達成した減少幅に相当するという結果が示されたといいます。
He氏は、こうしたスピード感のある削減は世界的にも注目に値すると述べ、中国の経験が他地域の政策設計にも貢献しうるとの見方を示しました。
2013年からの具体策と数字で見る成果
中国は2013年以降、大気汚染の予防と抑制に向けて一連の対策を進めてきました。CMGによると、その柱となっているのは産業構造とエネルギー構造の見直しです。
具体的には、次のような施策が実施されています。
- 老朽化し環境負荷の高い生産設備の淘汰
- 石炭ボイラーの改修や、高効率機器への更新
- 石炭から、よりクリーンなエネルギー源への燃料転換
その結果、国全体の平均PM2.5濃度は2013年の72マイクログラム毎立方メートル(μg/m³)から、2023年には29.3μg/m³まで低下しました。10年間で半分以下まで改善したことになります。
2060年に向けたエネルギー転換と将来像
CMGは、2060年に向けた長期的な見通しも伝えています。推計によれば、年間平均のPM2.5濃度は現在の20μg/m³超から、一桁台まで下がる可能性があるとされています。
エネルギーと産業構造も大きく変わることが見込まれています。
- 一次エネルギーに占める非化石エネルギーの比率は72%に上昇
- 電力供給では、再生可能エネルギーが7割超を占める見通し
- 産業部門における石炭消費は15%未満まで低下
- 自動車市場では、新エネルギー車のシェアが6割超に拡大
こうした見通しが実現すれば、中国のエネルギー構造は大きく転換し、大気汚染と温室効果ガス排出の両面でさらなる削減が期待されます。
世界が中国から学べること
国連関係者が強調したように、大気汚染は国境を越える課題であり、一国だけでは解決できません。その中で、中国の経験は、政策の一貫性と産業界の巻き込み、市民の日常生活レベルでの行動変容を組み合わせることで、大きな成果を上げうることを示しています。
「Racing for Air」というテーマが示す通り、きれいな空気をめぐる競争は時間との勝負でもあります。中国の事例を手がかりに、他の国と地域がどのように自国の大気環境政策を設計し、協力を深めていくのかが、これからの大きな焦点になりそうです。
Reference(s):
China's remarkable global achievement in air pollution control
cgtn.com








