地球の酸素は3段階で増加 中国チームが20億年の記録を解読
地球の大気中の酸素は、どのようにして今のように豊富になったのでしょうか。中国の研究チームが、過去約20億年にわたる「酸素の増え方」を3つの大きな段階として描き出し、生命の起源や進化、そして地球が長期的に住みやすい惑星であり続ける条件に新たな手がかりを示しました。
何が分かったのか:地球大気の酸素は「3回のサージ」で今の水準に
成都理工大学と南京大学の研究者らが主導した今回の研究は、最近、権威ある科学誌「Nature」に掲載されました。チームは、堆積岩に閉じ込められた硫酸塩に含まれる「三重酸素同位体」の記録を解析し、地球大気の酸素が過去20億年のあいだに少なくとも3回の大きなサージ(急増)を経て現在の水準に至ったことを示しています。
研究を率いた成都理工大学・堆積地質研究所の李超(Li Chao)教授は、今回の成果について次のように説明します。「私たちの研究は、地球の酸素濃度が約4億1,000万年前に現在と同程度の水準に達していたことを、これまでで最も直接的に示す大気の証拠を初めて提供し、地表の酸素化が3段階で進んだことを裏付けました。」
これまで科学者たちは、地球表層の酸素の貯蔵量や、その供給源と消費源がどのように変化してきたのかを直接示す「決め手」となるデータや測定技術を十分に持っていませんでした。今回の研究は、系統的なサンプリングと既存研究のデータを統合し、そのギャップを埋める試みでもあります。
三重酸素同位体とは?酸素の「指紋」を読む
李教授によると、「三重酸素同位体」とは、酸素が持つ3種類の安定した同位体のことです。これら3つの同位体の割合は一定ではなく、大気や海洋で起こる生物・化学・地質のプロセスによって、ごくわずかに変化します。
研究チームは、この微妙な違いを「地球が残した指紋」のように読み取ることで、太古の地球表層環境がどのように変化してきたのかを逆算しました。具体的には、堆積岩の中に閉じ込められた硫酸塩に含まれる三重酸素同位体の組成を詳しく測定し、その変化のパターンから大気中の酸素濃度の長期的な推移を描き出しています。
3回の「酸素サージ」と地球の酸素史
新たに得られた三重酸素同位体の記録から、地球の酸素濃度は次の3つの時期に大きく増加したと示されています。
- 第1のサージ:古原生代(約24億〜21億年前)
地球大気の酸素が、それまでほとんど存在しない状態から初めて大きく増加した時期とされます。 - 第2のサージ:新原生代(約10億年前)
再び酸素が大きく増える変化が起きたと考えられます。 - 第3のサージ:古生代(約4億4,000万年前)
現在の水準に近い酸素豊富な状態へと向かう決定的な増加が起きました。
これらの変化は、地球の酸素がほとんど存在しないレベルから、段階的に増加していったことを示しています。そして、酸素濃度は約4億1,000万年前には、今日の安定した酸素リッチな状態にほぼ到達していたと結論づけられています。このプロセス全体は、ほぼ20億年という非常に長い時間スケールにわたって進行したことになります。
大気と海洋の長い「対話」:酸素が海を周期的に酸化
研究は、地球大気だけでなく、海洋環境の変化にも光を当てています。とくに新原生代の記録では、炭素・硫黄・酸素の同位体比が鋭く、かつ連動して変動していることが明らかになりました。
これは、大気中の酸素が増えたあと、その酸素が主に酸素に乏しかった海洋を周期的に酸化していたことを示しています。言い換えると、大気と海洋のあいだで酸素が行き来しながら、長い時間をかけて地球表層環境が変化していった姿が、同位体の記録から浮かび上がったということです。
生命の進化と居住可能な惑星への示唆
李教授は「この研究は、複雑な真核生物がどのように段階的に進化してきたのかを理解するための確かな土台を築くだけでなく、居住可能な惑星の形成や、古い時代に生まれた炭化水素源岩(石油や天然ガスのもととなる岩石)の形成を探る新たな視点を提供する」と述べています。
さらに、「この長い過程を通じて、大気と海洋がどのように相互作用してきたのかを明らかにし、地球がいつ、どのようにして生命に適した星になったのかという根本的な問いに近づくための重要な一歩だ」と強調しています。地球が酸素に満ちた世界へと変わっていく流れそのものが、生命の進化と地球の居住可能性を考える上で欠かせないピースだという見方です。
私たちにとっての意味:遠い過去から「住みやすさ」を考える
数十億年前の話は、日々のニュースからは遠く感じられるかもしれません。しかし、地球大気の酸素がどのような条件で増え、どれほどの時間をかけて安定していったのかを知ることは、現在の地球環境と将来の地球の姿を考えるうえで重要です。
また、今回の研究が示す「段階的な酸素化」や大気と海洋の相互作用の姿は、太陽系外の惑星を観測するときに、そこが生命にとって住みやすいかどうかを推測する手がかりにもなります。どのような大気の変化が起これば生命が存在しうるのか──地球の過去を詳しく知ることは、その判断基準をつくることにもつながります。
遠い過去の酸素の「指紋」を読み解きながら、地球と生命の未来像を描こうとする試みは、今後も国際ニュースや科学分野で大きな注目を集めていきそうです。
Reference(s):
Scientists trace phased rise of oxygen on Earth over 2 billion years
cgtn.com








