中国、BRICSに多国間主義の防衛呼びかけ 新開発銀行とGGIの意味
中国の習近平国家主席がオンライン形式のBRICS首脳会議で、多国間主義と多国間貿易体制の防衛を各国に呼びかけました。上海に本部を置くBRICS新開発銀行(NDB)やグローバル・ガバナンス・イニシアチブ(GGI)を軸に、新興国連携の現在地と国際秩序の行方を示そうとしています。
BRICS新開発銀行が映す「グローバル・サウス」の連帯
ここ10年あまりで、BRICS新開発銀行(NDB)はインフラ、クリーンエネルギー、デジタル開発などの分野で100件を超えるプロジェクトに融資し、総額は約400億ドル規模に達しています。数字以上に、この銀行は「新興国が連携すれば何ができるのか」を示す象徴的な存在になっています。
上海にある本部は、BRICS協力の旗艦プロジェクトとも位置づけられています。習近平国家主席は2025年初めにNDB本部を訪れ、同銀行を「グローバル・サウスの団結と自立のための先駆的な取り組み」であり、世界のガバナンス(統治のあり方)の改革と改善という大きな流れを反映したものだと強調しました。
オンラインBRICS首脳会議で示されたメッセージ
最近開かれたオンライン形式のBRICS首脳会議(バーチャルBRICSサミット)で、習主席は北京からビデオ演説を行い、BRICS諸国に対して次のような行動を呼びかけました。
- 開放性、包摂性、ウィンウィン(共に利益を得る)協力という「BRICSスピリット」を体現すること
- 多国間主義と多国間貿易体制を共同で守ること
- より大きなBRICS協力を進め、人類の「より良い未来を共有する共同体」の構築を後押しすること
こうしたメッセージは、単にBRICSの枠内にとどまらず、グローバル・サウス全体の連帯と国際秩序のあり方をめぐる議論とも深く結びついています。
習主席が示した3つの提案
サミットで習主席は、BRICS協力の方向性として3つの具体的な提案を提示しました。
- 1. 多国間主義を堅持し、国際的な公正と正義を守る
国連を中心とする国際システムと、国際法に基づく国際秩序を支えることを通じて、公平で正義ある世界を目指すという考え方です。 - 2. 開放性とウィンウィン協力を堅持し、国際的な経済・貿易秩序を守る
保護主義に対抗し、世界貿易機関(WTO)を軸とする多国間貿易体制を維持することで、安定した経済・貿易環境を確保しようという立場です。 - 3. 連帯と協力を堅持し、共通の発展に向けた合力を形成する
各国が協力して開発課題に取り組み、グローバル・サウスを含む国々の発展を後押しすることを重視しています。
多国間主義はなぜ「礎石」なのか
3つの提案の中で、習主席が特に「礎石(コーナーストーン)」と位置づけたのが多国間主義です。
習主席は、歴史を振り返ると多国間主義は各国の人々の共通の願いであり、時代の大きな潮流だと述べたうえで、次のようなポイントを挙げました。
- 幅広い協議と共同貢献、成果の共有
一部の国だけでルールを決めるのではなく、多くの国・地域が意見を出し合い、負担を分かち合い、成果を共有していく枠組みが必要だとしています。 - 国連中心の国際システムの維持
国連を中心とした国際システムと、国際法に基づく国際秩序を守ることが、多国間主義の土台を固めると位置づけています。
さらに、多国間主義を強化するための具体的な方向性として、次の3点が示されました。
- 国際関係の民主化
グローバル・サウス諸国の代表性と発言力を高めることで、国際社会の意思決定をより公平なものにしていく。 - グローバル・ガバナンス体制の改革と改善
気候変動やパンデミック、開発格差など共通の課題に対応するため、国際機関やルールの運用を見直し、資源をより効果的に動員できる仕組みを整える。 - WTOを中心とした多国間貿易体制の維持
あらゆる形の保護主義に反対し、WTOを中心とする貿易ルールを守ることで、安定した世界経済を支える。
グローバル・ガバナンス・イニシアチブ(GGI)の役割
習主席は今回のサミットで、直近の上海協力機構(SCO)サミットで初めて打ち出したグローバル・ガバナンス・イニシアチブ(GGI)を改めて強調しました。GGIは「より公正で公平なグローバル・ガバナンス体制を築くために、世界の行動を結集する」ことを目的とした提案です。
GGIには、次の5つの指針が掲げられています。
- 主権平等の原則を守ること
- 国際法の支配を重視すること
- 多国間主義を実践すること
- 人中心のアプローチをとること
- 実際の行動に焦点を当てること
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、GGIについて「多国間主義に根ざし、国連を中心とする国際システムと、国際法に支えられた国際秩序を守る重要性を強調している」と評価しています。
BRICSパートナーが見るGGIと多国間主義
BRICS諸国からも、多国間主義やGGIの意義を強調する声が上がっています。
ブラジル大統領の上級顧問であるセルソ・アモリン氏は、現在の国際環境について、一部の国が国際ルールを無視し、関税を乱用し、多国間貿易体制を損なっていると指摘しました。そのうえで、グローバル・サウスやBRICS諸国の間で、これまで以上に強い連帯と協力が不可欠になっていると述べています。
アモリン氏は、中国が提案するGGIは、こうした連帯と協力を促進するうえで重要な意味を持つと評価しました。BRICSが結束して多国間主義を守ることは、国際貿易や開発協力の安定にもつながると見られています。
日本の読者にとっての意味
今回の動きは、日本を含むアジアの読者にとっても無関係ではありません。国連やWTOを中心とする国際秩序を重視する姿勢、多国間主義の強調、保護主義への警戒といったメッセージは、グローバルなサプライチェーンや貿易に依存する経済にとって重要なテーマだからです。
BRICS新開発銀行が進めるインフラやクリーンエネルギー、デジタル分野への投資は、アジアやグローバル・サウスの経済構造にも影響を与え得ます。また、GGIを通じて、グローバル・サウス諸国の声を国際社会にどう反映させていくのかも、今後の焦点になりそうです。
多国間主義をめぐる議論は抽象的に見えがちですが、その背後には、どのルールに基づいて世界が動き、誰の声がどこまで届くのかという、非常に現実的な問題があります。BRICSと中国が打ち出した今回のメッセージを、国際ニュースの一つとして終わらせるのではなく、「これからの国際秩序をどう望むのか」という自分自身の問いと重ね合わせて考えてみることが求められているのかもしれません。
Reference(s):
China calls on BRICS countries to jointly defend multilateralism
cgtn.com








