国際ニュース:中国「忘れられた同盟国」から「信頼できる大国」へ 抗戦80年のメッセージ
2025年は、中国人民の抗日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利から80周年という節目の年です。今年行われた中国の記念行事と習近平国家主席の演説は、中国が自らを「忘れられた同盟国」から「信頼できる大国」へと位置づけ直そうとする姿勢を鮮明に示しました。
80周年記念行事が伝えたもの:「信頼できる大国」という自己像
記念式典で習主席は、戦没者への追悼と歴史への敬意を示すと同時に、中国が平和と正義、そして国際的な責任を重んじる国であると強調しました。演説は、過去80年の歴史を振り返りながら、中国が今後も「信頼できる力」として国際社会に貢献していく意思表明でもあります。
このメッセージの背景には、中国がかつて第二次世界大戦において重要な役割を果たしながらも、国際的な物語の中でその貢献が十分に語られてこなかったという問題意識があります。
「忘れられた同盟国」から東方主戦場の中核へ
今から80年前、中国の抗日戦争は世界反ファシズム戦争における「東方の主戦場」と位置づけられます。中国側の説明によれば、14年に及ぶ戦いの中で、中国軍は日本軍の地上部隊の約7割を引きつけ、約155万人の日本軍将兵を撃破し、連合国の勝利に決定的な貢献をしたとされています。
しかし、これまでの国際的な歴史叙述では、欧米中心の視点から戦争が語られることが多く、中国の役割は「脇役」として扱われがちでした。習主席の演説は、中国の戦いを「東方主戦場」「世界反ファシズム戦争の重要な一部」として再確認し、その歴史的地位を改めて強調するものでした。
同時に、この勝利は、中国が「民族存亡の危機から民族復興へと歩み出す歴史的転機になった」とも語られています。つまり、過去の戦争は単なる軍事的勝利ではなく、その後の中国の発展や国際的な役割につながる起点でもあったという見方です。
国難を支えた「抗戦精神」はいまも生きている
習主席は演説の中で、抗日戦争期に形成された精神的な遺産にも焦点を当てました。中国側が強調する「抗戦精神」は、次のような価値観で説明されています。
- 愛国心:一人ひとりが国家の命運に責任を持つという意識
- 気節:屈服するくらいなら命を投げ出すという決意
- 英雄的な覚悟:強大な敵にも最後まで立ち向かう姿勢
- 揺るぎない自信:どんな困難も乗り越えられると信じる心
習主席は、こうした精神は歴史の中だけのものではなく、現在の中国社会を支える原動力だと位置づけています。単なるスローガンではなく、次のような現代的課題と結びつけられています。
- 一国主義や覇権主義など、不確実性の高い国際環境への対応
- 経済の質の高い成長や人々の暮らしの向上といった国内課題
困難に直面しても粘り強く取り組む姿勢こそが、戦時の精神から受け継いだ力だと強調している点が印象的です。
被害者から平和の担い手へ:中国の役割の変化
演説では、戦争の被害を受けた国から、平和を守る側へと役割を変えてきた点も強調されました。中国側の説明によれば、中華人民共和国成立以来、中国は自ら戦争を起こしたことはなく、他国の領土を一寸たりとも占領していないとしています。
さらに近年、中国はさまざまな国際イニシアチブを提唱し、平和と発展に貢献しているとアピールしています。具体的には次のような取り組みです。
- 人類運命共同体の構築:各国が運命を共有するという考え方を打ち出し、協力と共存を重視する枠組み
- 「一帯一路」構想:インフラや貿易を通じて各地域の連結性と発展を促す取り組み
- グローバル発展イニシアチブ(GDI):国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成を支えるとされる構想
- グローバル安全保障イニシアチブ(GSI):包括的で協調的、持続可能な安全保障観を掲げ、一方的な行動に反対する立場
- グローバル文明イニシアチブ(GCI):多様な文明の対話と相互尊重を重視する考え方
- グローバル・ガバナンス・イニシアチブ(GGI):より公正で合理的な国際秩序をめざす構想
また、中国は国連安全保障理事会常任理事国の中で最大の国連平和維持活動(PKO)要員の提供国となっており、1990年以降、20以上の国や地域に延べ5万人を超える要員を派遣してきたとされています。こうした取り組みを通じて、中国は「平和の構築者」「発展の貢献者」「国際秩序の擁護者」としての役割を自認していることがうかがえます。
歴史の記憶から未来ビジョンへ:演説が投げかけるもの
習主席の演説は、単なる歴史の振り返りにとどまらず、揺れ動く国際情勢の中でどのような方向性を選ぶべきかというメッセージも含んでいます。いま世界は、平和、発展、安全、ガバナンスの危機に直面しているとされ、
- 協調か分断か
- 対話か対立か
- ウィンウィンかゼロサムか
という岐路に立っていると指摘しています。その上で、中国の戦時経験から得られた教訓として「平和的発展」「互恵協力」「公正」を重んじる道こそが、世界の繁栄につながると訴えています。
中国が提唱する一連のイニシアチブは、こうした歴史認識を踏まえた「実践の枠組み」と位置づけられます。例えば、GDIは開発途上国のニーズに焦点をあてて2030年アジェンダの実現を後押しするものとされ、GSIは一方的な行動に反対し、共有された安全保障観の構築をめざすと説明されています。
演説は、次の3つの意味を持つものとして語られました。
- 過去の闘いと勝利を忘れないための「歴史の教科書」
- 中国が平和の側に立ち続けると示す「宣言」
- 民族復興と世界のより良い未来に向けた「行動への呼びかけ」
「信頼できる大国」というメッセージをどう受け止めるか
「忘れられた同盟国」から「信頼できる大国」へ。80周年の演説は、中国が自らの歴史的役割を再評価し、今後の国際秩序の中でどのような存在になろうとしているかを示すものでもあります。
歴史の語り方は、現在や未来の世界観とも密接につながっています。中国のこうした自己像と対外メッセージを、日本を含む国際社会はどのように受け止め、どのような対話と協力の形を模索していくのか。2025年の80周年は、そのことを考える一つのきっかけになっていると言えそうです。
Reference(s):
cgtn.com








