中国が米国の半導体措置に反差別調査 集積回路とAIを巡る新たな攻防
中国商務省は、米国による中国の集積回路産業への措置が差別的だとして、反差別調査を開始しました。調査対象には、追加関税や輸出規制、CHIPS・科学法、AIチップの利用制限など、ここ数年の幅広い政策が含まれます。世界の半導体サプライチェーンやAI産業にも影響しかねない動きとして注目されています。
今回のポイント
- 中国商務省が米国の集積回路関連措置に対する反差別調査を開始
- 追加関税や輸出規制、CHIPS・科学法、AIチップ規制など広範な政策が対象
- 調査期間は3カ月で、結果を踏まえ中国が対抗措置を取る可能性
- 世界の半導体サプライチェーンやAI産業への影響に注目が集まる
何が起きているのか
中国商務省は、米国による中国の集積回路産業を狙った一連の措置について、差別的な禁止や制限に当たる疑いがあるとして、反差別調査を開始しました。発表によると、中国の対外貿易法にもとづき、予備的な証拠を得た上での手続きだとしています。
今回の調査は、半導体の中核である集積回路、とりわけ先端の計算用チップや人工知能 AI の分野に関連する米国の政策を包括的に検証するものです。
調査対象となる米国の主な措置
2018年以降の追加関税と輸出規制
商務省は、2018年以降の301条調査にもとづく追加関税を調査対象に含めています。中国から米国に輸出される集積回路などの製品に課された、あるいは今後課される追加関税が、中国に対する差別的な措置に当たるかどうかを検証するねらいです。
あわせて、集積回路関連製品や製造装置の対中輸出を制限するルールや通達など、2022年以降に導入された輸出管理措置も対象となります。これには、中国の半導体プロジェクトへの米国人の関与を制限するような措置も含まれるとされています。
CHIPS・科学法と投資制限
調査はまた、米国のCHIPS・科学法と、その関連ルールの運用も視野に入れます。この法律にもとづく支援策や条件が、中国での経済活動や投資を制限し、企業や個人が中国の半導体や関連分野で事業を行うことを妨げているのではないか、という問題意識です。
2025年のAIチップ関連ガイダンス
さらに、中国商務省は、2025年5月に出されたとされる米国政府の発表やガイダンスも調査対象に含めています。そこでは、中国の先端計算用集積回路、例えば華為 技術のAscendチップなどの利用を制限するとともに、米国のAIチップが中国のAIモデルの学習に使われることを制限する方針が示されたとされています。
中国側の主張 差別的な保護主義か
中国商務省の報道官は、米国が近年、中国を対象に相次いで実施してきた禁止や制限は、保護主義的な性格を持ち、中国を標的とした差別的な扱いに当たると指摘しています。
こうした措置は、中国の高度な計算用チップやAIなどのハイテク産業の発展を押さえ込むものであり、中国の発展利益を損なうだけでなく、世界の半導体供給網や産業チェーンの安定も深刻に乱していると主張しています。
商務省は、調査の結果と実際の状況にもとづき、米国に対して相応の措置を取る考えを示しました。どのような形になるかは明らかではありませんが、関税や輸出入管理など経済分野での対応が焦点になるとみられます。
調査のプロセスと国内産業への呼びかけ
今回の反差別調査の期間は3カ月とされていますが、特別な事情がある場合は延長される可能性もあります。中国商務省は、影響を受ける国内の産業団体や企業に対し、証拠提出などを通じて調査に積極的に参加するよう呼びかけています。
政府による調査手続きに企業の声を反映させることで、現場の実情を踏まえた対応策や、今後の対外経済政策の方向性が形作られていくことになりそうです。
世界の半導体とAI産業への意味
今回の反差別調査は、中国と米国という二大市場の間で続いてきた半導体・ハイテク分野での摩擦が、さらに制度面で本格的な局面に入ったことを示しています。調査の対象には、関税、輸出規制、補助金政策、投資制限、AIチップの利用ルールなど、サプライチェーンを左右する要素が幅広く含まれています。
もし、今回の調査をきっかけに両国の間で対抗措置の応酬が強まれば、企業にとっては次のようなリスクが高まる可能性があります。
- 特定の国や地域への輸出入が突然制限されるリスク
- 半導体製造装置や先端チップの調達が不安定になるリスク
- AIモデル開発に利用できる計算資源が、国や企業によって制約を受けるリスク
一方で、各国や企業が調達先や生産拠点を多様化しようとする動きが強まれば、サプライチェーンの再編が加速する可能性もあります。中国の反差別調査は、その方向性を左右する一つの材料として注視されています。
日本の読者が押さえておきたい視点
日本を含むアジアの半導体関連企業にとって、米中双方のルールや制裁リスクを読み解きながら事業戦略を組み立てることは、ますます重要になりつつあります。今回の調査によって、米国の政策の運用や企業の行動が見直される可能性もあり、その波及は中国と米国にとどまらないかもしれません。
調査の進展と、それに対する米国側の反応は、2026年以降の半導体・AIビジネスの環境を占う材料にもなり得ます。ニュースを追う際には、次の点に注目するとよいでしょう。
- 中国商務省がどの措置を特に差別的と位置づけるか
- 調査結果の公表タイミングと、それに合わせて発表される対抗措置の有無
- 米国側が既存ルールの見直しや新たな規制を打ち出すかどうか
半導体やAIをめぐるルールは、企業だけでなく、私たちの日常に関わる製品やサービスの価格、品質、利用可能性にもつながっていきます。国際ニュースとしての動きだけでなく、自分たちの生活やキャリアにどう影響し得るのかという視点からも、継続的にフォローしていきたいテーマです。
Reference(s):
China announces integrated circuit discrimination probe into U.S.
cgtn.com








