ゴールデン・パンダ賞審査委員長が語る「世界で愛される物語」の条件 video poster
世界各国の視聴者に届く「良い物語」とは何か──2025年に開催された第2回ゴールデン・パンダ賞のテレビドラマ部門審査委員長を務めた英国のプロデューサー、Mal Young(マル・ヤング)氏が、そのヒントを語りました。国や文化の違いを超えて作品を届けたいクリエイターにとって、示唆に富む視点です。
ゴールデン・パンダ賞とMal Young氏
Golden Panda Awards(ゴールデン・パンダ賞)は、異なる国と地域の作品を対象とし、映像を通じた国際的な交流を目指す賞です。その第2回でテレビドラマ部門の審査委員長を務めたのが、英国のテレビプロデューサーで脚本家のMal Young氏です。
Young氏は、英国アカデミー賞(BAFTA)の最優秀ドラマシリーズ賞や、エミー賞のドラマシリーズ部門および脚本チーム部門など、権威ある賞を受賞してきた人物です。長年の制作現場の経験を背景に、「世界中の視聴者に届く物語づくり」についての知見を共有しました。
Young氏の発言から見える3つのポイント
詳細な言葉の一つ一つが紹介されているわけではありませんが、Young氏が語った「国や文化を超えて響く物語づくり」の考え方からは、おおまかに次の3つのポイントが浮かび上がります。
1. 感情は国境を越える共通言語
国や文化が違っても、人が感じる喜び、悲しみ、恐れ、希望といった感情は共通しています。物語が国境を越えられるかどうかは、視聴者が登場人物の感情にどれだけ共感できるかにかかっている、という視点です。
- 派手な特殊効果よりも、人間同士の関係性や選択のドラマに焦点を当てる
- 視聴者が「自分ごと」として感じられる葛藤や喜びを丁寧に描く
- 主人公だけでなく、脇役にも感情の厚みを与え、世界観に奥行きを持たせる
感情の描写が具体的であればあるほど、遠く離れた国の視聴者にも「これは自分の話だ」と感じてもらえる可能性が高まります。
2. ローカルなディテールと普遍的なテーマの組み合わせ
世界中で支持される作品の多くは、その土地ならではの文化や日常を丁寧に描きながら、家族、友情、正義、成長といった普遍的なテーマを扱っています。Young氏の視点からも、作品を「どの国でも通じるように薄める」のではなく、「自分たちらしさを保ちながら普遍的な問いを投げかける」ことが重要だといえます。
- 舞台となる街や生活習慣など、ローカルな要素はむしろ前面に出す
- しかし物語の核となるテーマは、どの国の視聴者でも理解できるものにする
- 文化的なギャップは「壁」ではなく、好奇心を引き出すきっかけとして活用する
ローカルな色を消してしまうと、かえって「どこにでもある、どこにも属さない」物語になりがちです。強い個性と普遍性のバランスが、世界で通用するドラマづくりのカギになります。
3. シンプルで明快なストーリーテリング
言語や文化の違いがあるからこそ、物語の骨組みはシンプルであるほど理解されやすくなります。Young氏が重視するのは、視聴者が数分で「誰が何を望み、何がそれを邪魔しているのか」を理解できる構造です。
- 主役の目的と障害を、最初の場面でできるだけ明確に示す
- サブプロット(脇のストーリー)は、多すぎるよりも「少数精鋭」に絞り込む
- セリフだけに頼らず、映像や行動で物語を語る
複雑な設定や長い説明に頼らなくても、視聴者が自然と状況を理解できる構成であれば、翻訳や字幕を通しても物語がスムーズに伝わります。
日本のクリエイター・視聴者へのヒント
国際ニュースでもエンタメニュースでも、いまや作品が世界同時に配信される時代です。2025年12月現在、日本のクリエイターや視聴者も、世界市場と切り離せない環境にいます。ゴールデン・パンダ賞で語られた視点は、日本のドラマやアニメ、オンライン動画制作にも応用できる考え方です。
クリエイターにとって
- まず「誰に共感してほしい物語なのか」を具体的に描き出す
- 自分の生活や社会で感じている違和感や問いを、物語の核に据える
- 海外の視聴者を意識しつつも、「日本らしさ」や自分の視点を安易に手放さない
視聴者にとって
- 海外ドラマや映画を観るとき、「どの感情表現が自分にも分かるか」に注目してみる
- 作品のどの部分がローカルで、どの部分が普遍的なのかを意識してみる
- 気に入った作品を、SNSなどで他者と共有し、自分なりの解釈を言語化してみる
こうした見方を持つことで、単に作品を「消費」するだけでなく、物語を通じて世界とのつながりを感じやすくなります。
物語づくりは「共感」と「対話」の場に
国や地域の違いを越えて作品を評価するゴールデン・パンダ賞の場で、Young氏が示したのは、特別なテクニックよりも、視聴者との真剣な対話を大切にする姿勢でした。物語は、異なる背景を持つ人々が出会い、お互いを理解しようとするための共通の場にもなります。
これから国際的な作品づくりを目指す人にとって、「誰にでも分かる物語」ではなく「誰もが自分なりに感じ取れる物語」を目指すことが、世界で愛される作品への第一歩になりそうです。
Reference(s):
Golden Panda Awards juror on what makes a good story for everyone
cgtn.com








