全固体電池レースが加速 中国・重慶が新たな生産ハブとして台頭
世界で全固体電池の開発競争が一気に加速しています。その中で、中国・重慶市が巨大な生産拠点と自動車産業をてこに、新たなハブとして存在感を高めています。本記事では、中国を軸にした動きと、米国・日本・韓国の戦略を整理しながら、この国際ニュースの意味を考えます。
世界で加速する全固体電池レース
全固体電池のアイデア自体は19世紀から知られていましたが、実用化は長く遅れてきました。原因は、電気を運ぶ力である電導度の低さや、材料同士の界面で起きる問題などにより、性能と信頼性を十分に確保できなかったためです。
しかし21世紀に入り、材料科学の進歩によってこうした課題が徐々に克服され、量産と普及に向けた道筋が見えつつあります。走行距離の延長や安全性の向上、コスト低減への期待から、全固体電池は自動車メーカーや投資家にとって最重要テーマの一つになっています。
現在、技術・資本・サプライチェーンをめぐる世界的な競争は激化しており、米国、日本、韓国、中国という四つのブロックが形成されつつあります。スタートアップから大手自動車メーカーまで、多様なプレーヤーが開発スピードを押し上げています。
中国・重慶が新たな生産ハブに
中国南西部の重慶は、全固体電池をめぐる中国の動きの中でも、とくに注目度を高めています。市内の両江新区では、中国最大の全固体電池生産拠点が現在建設中であり、新エネルギー車の電池産業をけん引することが期待されています。
中国の大手リチウム企業であり、リチウム金属や水酸化リチウム分野で世界的なプレーヤーとされる贛鋒リチウムも、重慶を旗艦拠点として選びました。同社はここに主力工場と研究機関を整備し、新エネルギー車用電池のサプライチェーンを強化するとともに、地域の電動化と高級車産業の発展を加速させる方針です。
重慶には、長安汽車や塞力斯(Seres)といった自動車メーカーも集積しています。なかでも長安汽車は、新エネルギー車への大規模な転換を打ち出しており、今後数百万個規模の高度な電池需要を生み出すと見込まれています。この巨大で安定した需要は、研究開発や試験、生産立ち上げを同時並行で進めるうえで大きな強みとなり、他都市にはない優位性となりつつあります。
米国・日本・韓国:それぞれの戦い方
米国:資本市場とスタートアップがけん引
米国では、自動車メーカーと資本市場の後押しを受けたスタートアップが全固体電池の開発をリードしています。フォルクスワーゲンが支援するクアンタムスケープや、フォードとBMWの支援を受けるソリッドパワーは、全固体型の技術開発を進め、数百メガワット時からギガワット時規模に及ぶパイロット生産ラインを運用しています。
豊富な資金調達力と試作生産の経験を背景に、実用化のハードルを一つずつ下げていく戦略が特徴です。
日本・韓国:大企業による総合力勝負
日本と韓国では、エレクトロニクスや自動車で世界をリードしてきた大企業が前面に出ています。トヨタは全固体電池関連で千件を超える特許を保有しているとされ、材料と製造の両面で蓄積してきた知見を生かし、量産段階に近づきつつあります。
韓国のサムスンSDIやLGエナジーソリューションは、スマートフォンなどの電池や従来型リチウム電池で培ったノウハウを活用しながら、全固体電池の量産を2027年以降に見据えています。既存の生産・調達網を生かせるかどうかが、時間との勝負になっています。
中国のアプローチ:大企業とイノベーターの組み合わせ
中国では、大手企業が方向性を示しつつ、多数のイノベーターが広く参加する形で全固体電池の開発が進んでいます。寧徳時代(CATL)やBYDといった大手電池メーカーは、硫化物系と呼ばれるタイプの全固体技術に投資しています。
同時に、衛藍新能源(WELION New Energy)、贛鋒リチウム、国軒高科(Gotion High-Tech)などの企業は、全固体と液体電解質の中間に位置付けられるセミソリッド電池で先行し、将来の開発に役立つデータを蓄積しています。
中国の強みは、システム全体の優位性にあります。世界最大の新エネルギー車市場を持つことで、さまざまな利用シーンが生まれ、技術の試行錯誤と改良を高速で回せる環境が整っていることです。自動車メーカーにとって、より長距離を走れ、安全性の高い電池への需要が技術進歩の主な原動力となっています。
さらに、材料から製造プロセスまで、既存の液系リチウム電池産業で確立した基盤を活用できることも強みです。この土台があるからこそ、コストを抑えながら全固体電池への移行スピードを上げることが可能だと見られています。
重慶が直面する課題
とはいえ、重慶がすべての面で優位というわけではありません。長江デルタや珠江デルタと比べると、リチウム電池向けの原材料、製造装置、高度人材などの面でなお遅れがあるとされています。
そのため重慶にとっては、両江新区のような中核プロジェクトの周囲に、競争力のあるサプライチェーンをいかに素早く構築できるかが最重要課題です。電池材料メーカーや装置メーカー、人材育成機関などを巻き込みながら、産業集積を一段と厚くしていけるかが、全固体電池産業での地位を左右します。
日本から見る全固体電池レースの意味
全固体電池をめぐる国際競争は、もはや研究室レベルの話ではなく、大規模投資と都市戦略を伴う産業競争の段階に入っています。特に、中国・米国・日本・韓国という四極の構図が明確になるほど、どの地域が実証と量産をどれだけ早く回せるかが重要になります。
自動車産業と電池産業を一体で育てようとする重慶の動きは、日本やアジアの他の都市にとっても、多くの示唆を与えます。今後、どの地域がどの段階で連携し、どこで競争するのか。全固体電池のニュースは、単なる技術トレンドではなく、産業や都市の戦略を考えるうえでのヒントにもなりそうです。
この記事のポイント
- 世界の全固体電池競争は、中国、米国、日本、韓国の四極構造が形成されつつある
- 中国・重慶市の両江新区では、中国最大の全固体電池生産拠点が建設中
- 中国では、大手企業と多数のイノベーターが参加する形で開発が進行
- 重慶は巨大な需要を持つ一方で、材料・装置・人材の面でサプライチェーン強化が急務
Reference(s):
Global solid-state battery race heats up, China seizes an edge
cgtn.com








