中国の新技術:30メートル解像度で道路CO2をリアルタイム監視
都市の道路から出る二酸化炭素(CO2)を、30メートル単位でリアルタイムに「見える化」する中国本土の新技術が報告されました。2025年のいま、各国・各都市が脱炭素に向けて交通対策を模索する中で、政策づくりの精度を一段引き上げる可能性があります。
何がニュースなのか
最近、学術誌Sustainable Cities and Societyに掲載された論文によると、中国本土の研究者チームは、都市道路上のCO2排出の「発生源」と「変化」を高い解像度で追跡できるハイブリッド型フレームワークを開発しました。
このフレームワークは、30メートルごとの空間解像度で、1時間ごとの道路上のCO2濃度を予測し、さらに日中の時間帯におけるCO2濃度の増加分を動的に捉えることができます。従来の「ざっくりとした地域別の排出量」から、「どの道路のどの区間で増えているのか」を細かく見る段階へと進んだ形です。
都市の道路CO2、なぜここまで細かく見る必要があるのか
論文の責任著者である中国科学院 空間情報研究所のWang Li研究員は、従来のCO2排出インベントリ(排出量の台帳)は空間解像度が粗く、道路区間ごとの違いや時間変化を捉えにくかったと指摘します。
都市の拡大や人口移動により、道路交通に伴うCO2排出は増え続けています。これは、以下のような点で都市にとって大きな課題になりつつあります。
- 局地的な気候(ヒートアイランドなど)の悪化
- 大気質や公衆衛生への影響
- カーボンニュートラル(実質排出ゼロ)の達成に向けた障害
だからこそ、「どの道路で・どの時間帯に・どの程度の排出があるのか」を精度高く理解することが、対策の入口になります。
Panoptic-AIとモバイル観測を組み合わせたハイブリッド型
今回のフレームワークの特徴は、Panoptic-AI(パノプティックAI)と呼ばれる人工知能技術と、モバイル観測の仕組みを組み合わせている点です。
研究チームは、次のような機器を連携させてデータを取得します。
- パノラマカメラ:道路や周辺の様子を広範囲に撮影
- 高精度の温室効果ガス分析装置:CO2濃度をリアルタイム測定
- 気象センサー:風向・風速、気温などの気象条件を把握
さらに、取得したデータをAIで統合し、次のような複数の要因を同時に解析します。
- 交通量や交通状態
- 建物の配置や高さなどの市街地の構造
- 植生(街路樹や緑地)の分布
- 風や気温などの気象条件
この結果、単に「CO2が多い場所」を示すだけでなく、「なぜそこが多いのか」という原因に迫ることができる点が、この技術の強みです。
Shenzhenで実証、排出源の識別精度は93%超
この技術は現在、中国南部の広東省深圳市で実際に運用されています。研究チームによると、道路上のCO2排出源の識別において、平均で93%を超える精度を達成しました。
また、このフレームワークを用いることで、
- 交通状況の変化がCO2排出に与える影響
- 周辺の土地利用(商業地か住宅地か、緑地の有無など)の違い
- 気象条件の変化
といった個々の要因が、CO2排出の空間的・時間的なパターンにどのように効いているのかを定量的に示すことが可能だとされています。
今後は、深圳以外の都市にも応用することで、都市交通ネットワーク全体の脱炭素施策を検討するための基盤として役立てることが期待されています。
AI×環境モニタリングがもたらす新しい「都市の見え方」
Wang研究員は、この技術を、従来の排出インベントリや衛星による温室効果ガス観測と組み合わせることで、多次元かつフルスペクトルなカーボンモニタリングシステムの構築につながると位置づけています。
衛星観測は広域の傾向をつかむのに優れていますが、個々の道路区間レベルでの詳細な変化を見るには限界があります。一方、今回のようなモバイル観測とAI解析は、市街地のミクロな構造や交通の流れを踏まえた解析に強みがあります。
両者を組み合わせることで、
- 都市全体のCO2排出の「大きな流れ」
- 特定の道路や交差点といった「ホットスポット」
を一体的に把握しやすくなります。都市計画や交通政策、さらには健康リスク評価など、多方面での応用が想像できます。
日本の都市にとっての示唆
2025年現在、日本を含む多くの国・地域で、交通部門の脱炭素が大きなテーマになっています。都市のCO2排出を減らすには、電気自動車の普及や公共交通の充実といった「手段」と合わせて、「どこを優先的に変えるべきか」という精密なターゲティングが欠かせません。
今回の中国本土の取り組みは、
- 道路単位の詳細データに基づいた施策づくり
- AIとリアルタイム観測を組み合わせた環境モニタリング
- 脱炭素と都市の暮らしやすさの両立
といった観点で、日本の都市政策にもヒントを与えてくれる内容だと言えます。
自分が毎日通勤・通学で通るあの道路のCO2排出を「見える化」できたら、どんな議論が生まれるのか――そんなことを想像しながら、この技術の今後の展開を追っていきたいところです。
Reference(s):
Chinese scientists monitor on-road CO2 emissions via hybrid framework
cgtn.com








