カリフォルニア州知事選でTikTokが主戦場に スペイン語動画で有権者に接近
カリフォルニア州知事選で、民主党候補がスペイン語だけのTikTok動画に賭けています。ラテン系有権者の心をつかむための、この新しいデジタル戦略は、米国政治とSNSの関係がどう変わりつつあるのかを映し出しています。
TikTokは「新たな選挙遊説の場」へ
元バイデン政権で保健長官を務めたザビエル・ベセラ氏は、カリフォルニア州知事選に向けてTikTokを本格的に活用し始めました。特徴的なのは、当面はスペイン語の動画だけを投稿すると決めている点です。
ベセラ陣営は、英語話者向けの従来型メディアよりも、スペイン語話者が多く利用しているプラットフォームに早い段階から入り込み、ラテン系コミュニティと直接つながることを狙っています。選挙キャンペーンの現場でTikTokを主戦場の一つとみなす動きが、本格化しつつあると言えます。
なぜスペイン語限定なのか:TikTok利用層の違い
ベセラ氏がスペイン語に絞る背景には、TikTokの利用状況に関するデータがあります。陣営や各種調査によると、ラテン系の成人は、黒人や白人の成人よりもTikTokを高い割合で利用しているとされています。
2024年のピュー研究所の調査では、短期間でTikTokのユーザー数が急増する中で、人種・民族によって利用パターンに差があることが示されました。
- ラテン系成人のほぼ半数がTikTokを利用
- 黒人成人の利用は約39%
- 白人成人の利用は約28%
こうした数字を踏まえ、ベセラ陣営は「ラテン系の若い有権者が日常的に使う言語と場所」に合わせてメッセージを届けようとしています。スペイン語で発信することで、単なる翻訳ではなく、文化や生活感覚を共有するコミュニケーションに近づける狙いもあります。
トランプ氏もTikTok参入 ホワイトハウスも公式アカウント開設
TikTokを巡る動きは民主党だけではありません。共和党のドナルド・トランプ氏は、第1期政権時代にTikTokの親会社バイトダンスとの取引を禁じようとした経緯がありますが、昨年自らTikTokアカウントを開設し、現在は数百万人規模のフォロワーを抱えています。
トランプ氏は、バイトダンスに米国内事業の売却先を見つけるよう求める期限を繰り返し延長してきました。直近の月曜日にも、TikTokの将来に関する何らかの合意があることをほのめかしましたが、具体的な内容は明らかにしていません。
一方、ホワイトハウスも先月、公式のTikTokアカウントを開設しました。規制や安全保障をめぐる議論が続く一方で、政権中枢も含めて政治の現場がTikTokを重要な発信ツールと見なしていることが分かります。
右傾化するラテン系票を引き戻す試み
ベセラ氏のTikTok戦略は、民主党全体の課題とも結びついています。昨年は、テキサスやフロリダといったいわゆる赤い州だけでなく、カリフォルニアやニュージャージー、ニューヨークといった青い州でも、トランプ氏がラテン系の支持を伸ばす「右傾化」の動きが観測されました。
民主党にとって、ラテン系有権者の支持を維持・拡大できるかどうかは、中長期の勢力図を左右する重要なポイントです。そこで、他の政治家がまだ試行錯誤している段階のプラットフォームで、早い時期からコンテンツを積極的に投入し、「コアなユーザーベースを先に押さえる」ことを目指しているのです。
英語公用語化の議論と多言語サービス縮小のなかで
この動きは、連邦レベルの言語政策とも対照的です。トランプ政権は現在、米国における英語の公用語化を目指す方針の一環として、多言語サービスの縮小を進めています。公的サービスや情報提供を英語中心に整理しようとする流れです。
そうした中で、ベセラ氏がスペイン語だけのコンテンツを前面に出すことは、「英語以外の言語を話す人々にも政治参加のチャンネルが必要だ」というメッセージとしても読むことができます。言語と政治参加の関係が、SNS上で再び問われているとも言えます。
これからの選挙キャンペーンはどう変わるか
カリフォルニア州知事選でのTikTok活用は、今後の選挙キャンペーンのあり方を占うテストケースになりそうです。そこから見えてくるポイントを整理すると、次のようになります。
- プラットフォームと政策のねじれ:規制や売却を巡る政策議論が続く一方で、政治家自身はTikTokを欠かせない発信ツールとして利用している。
- デモグラフィック(人口構成)の重み:ラテン系を含む若い有権者がどのプラットフォームを使い、どの言語で情報を得ているかが、選挙戦略の中心に据えられつつある。
- コミュニケーションスタイルの変化:短い動画で、カジュアルな語り口や日常の一コマを見せる手法が、従来の演説やテレビ広告に代わる影響力を持ち始めている。
日本の読者にとっても、これは「国際ニュース」として眺めるだけでなく、SNS時代に政治と有権者の距離をどう縮めていくのかを考えるヒントになりそうです。日本語で追う米国政治ニュースの一つとして、カリフォルニア発のTikTok選挙戦略の行方を見ておく価値は大きいと言えるでしょう。
Reference(s):
TikTok: A new way to reach voters in California's governor race
cgtn.com








