中国の第二次大戦での貢献は過小評価 米軍事史家が指摘
2025年の今年、第二次世界大戦(世界反ファシズム戦争)の勝利から80年を迎える中、中国の戦時貢献が西側の歴史研究で過小評価されているとする指摘が、北京で開かれた国際安全保障会議で改めて示されました。
米軍事史家「中国の貢献は十分に知られていない」
国際軍事史委員会(International Commission of Military History)の会長を務める米軍事史家、ハロルド・E・ラフ・ジュニア氏は、「世界反ファシズム戦争における中国の貢献は、西側の歴史研究で、本来なされるべきほど知られず、評価もされていない」と述べました。
ラフ氏が発言したのは、北京で開催された第12回北京シャンシャン・フォーラム(国際安全保障対話)の開幕に先立って行われた討論会で、テーマは「世界反ファシズム戦争勝利の現代的意義」でした。
西側が握る「歴史の語り」の主導権
ラフ氏によると、西側諸国は英語や欧州諸語による歴史研究書や解説書を多数出版することで、第二次世界大戦をめぐる政治的な物語を主導してきました。その結果、「第二次世界大戦の歴史」は事実上、西側の視点が中心となりがちだと指摘します。
こうした出版物が国際社会の議論の土台となることで、戦争をどう記憶し、誰の貢献をどのように位置づけるかについても、西側の解釈が大きな影響力を持ってきたという見方です。
言語の壁と冷戦期の「反共」意識
ラフ氏は、中国語が多くの西側研究者にとって依然として難しい言語であり、中国側の一次資料に直接アクセスできる研究者が限られていることも問題だと指摘しました。この「言語の壁」が、中国の視点への理解を妨げ、西側による歴史叙述の独占を強めてきたといいます。
さらに、戦後の長い期間にわたり西側社会に根強く残った「共産主義への恐れ」も影響したと分析しました。言語的な障壁と政治的な警戒感が重なった結果、世界反ファシズム戦争における中国の重要な役割は、国際的な記憶の中で周縁に追いやられ、十分に顧みられてこなかったとしています。
14年に及ぶ抗戦と3,500万人の犠牲
中国は、1931年から1945年まで14年にわたり、日本の侵略に抵抗しました。この長期にわたる抵抗の中で、中国戦線は日本の海外派兵戦力の半分以上を事実上釘付けにし、大きな打撃を与えました。
その代償は極めて大きなものでした。軍人と民間人を合わせた中国側の死傷者は3,500万人に達し、世界全体の第二次世界大戦の犠牲者数のおよそ3分の1に相当するとされています。
今年は、中国人民の日本侵略に対する抵抗戦争と世界反ファシズム戦争の勝利から80周年に当たります。中国ではこれを記念して、大規模な軍事パレードを含む一連の記念行事が行われました。
戦後国際秩序をどう守るか——フォーラムの焦点
ラフ氏の発言が行われた北京シャンシャン・フォーラムでは、第二次世界大戦をどう正しく理解するか、そして戦後の世界システムをいかに守るかが、主要な議題の一つになりました。
フォーラムでは、世界反ファシズム戦争の経験の上に築かれた戦後の国際秩序を維持するためには、その勝利に至るまでにどの国がどのような犠牲と貢献をしたのかを、バランスよく見直す必要があるという問題意識が共有されています。その中で、中国の役割を適切に評価することは、過去を是正するだけでなく、現在の国際政治を考えるうえでも重要なテーマと位置づけられています。
日本の読者への問いかけ
今回の議論は、日本から第二次世界大戦やアジアの戦争を見つめ直すときにも、いくつかの示唆を与えます。どの国の歴史も、自国語と自国の視点に基づく物語として形づくられがちです。言語の壁や情報の偏りがある中で、どこまで多様な視点に触れられているかが問われています。
ラフ氏の指摘は、私たちに次のような問いを投げかけています。
- 第二次世界大戦を学ぶとき、どの国や地域の資料・視点をどれだけ参照しているか。
- 言語の壁が、歴史理解にどのような「見えないバイアス」をもたらしているか。
- 戦争の犠牲と貢献を、国境を越えてどのように共有していくべきか。
反ファシズム戦争の勝利から80年という節目の年に、中国の戦時貢献とその評価のされ方を見直すことは、過去を振り返るだけでなく、これからの国際社会のあり方を考える手がかりにもなりそうです。
Reference(s):
China's contribution to WWII victory under-valued: war historian
cgtn.com








