中国アニメーションはなぜ世界で愛されるのか 上海美術映画製作所の視点 video poster
中国アニメーションがなぜいま世界で存在感を高めているのか。その背景には、「中国らしさ」と、人間の普遍的なテーマを両立させようとするクリエイターたちの挑戦があります。
上海美術映画製作所のアートディレクターであり、ゴールデン・パンダ賞の審査員も務める蘇大(Su Da)氏は、中国の国際ニュースを伝えるCGTNの単独インタビューで、その「秘密」を語りました。
中国アニメーションはなぜ世界で支持されるのか
蘇氏によると、中国アニメーションが世界の観客の心をとらえ始めている理由は、単に映像技術やアクションの派手さではありません。鍵になっているのは、文化と物語の力です。
たとえば、映画「哪吒2(Ne Zha 2)」のような作品が国境を越えて受け入れられるのは、次のような要素が組み合わさっているからだといいます。
- 人間の弱さや成長、葛藤といった「人間の条件」という普遍的テーマ
- 中国の神話や歴史、美術に根ざした独自のビジュアルと世界観
- 観客が感情移入しやすいドラマ性の高いストーリーテリング
つまり「中国アニメーション」であることは、海外市場にとってハンデではなく、作品の個性と魅力の源になりつつある、といえます。
「哪吒2」が象徴する普遍性と「中国らしさ」
蘇氏は、世界の観客に届く作品とは、特定の国や地域だけに通じるメッセージではなく、誰もが共感できる感情を描いていると説明します。そのうえで、「哪吒2」のような作品は、まさにその条件を満たしながら、中国らしい美意識と語り口を貫いていると評価します。
具体的には、
- 親子の関係や自己否定と自己肯定といった心のドラマ
- 運命に抗おうとするキャラクターの姿
- 伝統的な意匠を活かしたキャラクターデザインや色彩感覚
といった要素が、「中国の物語」でありながら、多様な文化圏の観客にとっても自分ごととして感じられるように描かれていることが重要だといえます。
カギは「文化的自信」をどう保つか
蘇氏が若いアニメーターに強調するキーワードが、「文化的自信」です。インタビューのなかで、創作にあたっては「文化的自信をどう保つかを考える必要がある」と語りました。
ここでいう文化的自信とは、単に伝統を守ることではなく、次のような姿勢を指していると考えられます。
- 他国のヒット作を安易にまねるのではなく、自国の文化や物語に根ざして表現すること
- 「自分たちの物語には、世界に語るに値する価値がある」と信じて作品をつくること
- 同時に、観客がどのような点で共感するのかを冷静に観察し、表現を磨き続けること
文化的自信が揺らぐと、作品はどこかで「似ているけれど、本物ではない」印象になりがちです。逆に、文化的自信をベースにしつつ、普遍的なテーマを描けたとき、作品は強い個性と広い共感を同時に獲得できます。
海外クリエイターとの対話がひらく新たな市場
蘇氏は同時に、中国のクリエイターたちに対し、海外の仲間たちともっと交流するよう呼びかけています。世界の市場を理解するには、外からの視点を取り入れることが欠かせないからです。
そうした交流には、次のような意味があります。
- 海外の観客がどんな点に魅力を感じ、どこで戸惑うのかを具体的に知ることができる
- ストーリーテリングやキャラクターづくりの違いから学び合い、新しい表現を生み出せる
- 共同制作や国際的なプロジェクトにつながる可能性が広がる
文化的自信と国際的な対話は、相反するものではなく、むしろ互いを高め合う関係にあります。自らの足場をしっかり持ちながら、外の世界を知ろうとする姿勢が、中国アニメーションの次の飛躍を支えているといえます。
世代の記憶から、世界の記憶へ
上海美術映画製作所の作品は、長年にわたり中国の多くの人々の子ども時代を形づくってきました。蘇氏によれば、いま中国アニメーションは、そうした「世代の記憶」を国内だけでなく、世界へと広げようとしています。
現在の中国アニメーションは、表現の幅が広がり、作品の方向性もより多様で成熟したものになりつつあります。そして、その視線は着実に外の世界に向かっています。クリエイターたちの目標は、「世界中の新しい世代にとって、大切な思い出となるアニメーション映画をつくること」です。
日本を含むアジアや世界の視聴者にとっても、中国アニメーションは、アジアの多様な物語に触れ、自分たちの価値観を静かに揺さぶってくれる存在になっていくかもしれません。いま進行しているこの変化を、国際ニュースとして追いかけながら、一つひとつの作品をじっくり味わっていくことが求められています。
Reference(s):
cgtn.com








