ウイグル音楽「ムカム」の素顔 新疆シャチェでよみがえる魂の歌 video poster
ウイグルの伝統音楽「ムカム」は、単なる民謡ではなく「ウイグル音楽の母」と呼ばれ、ウイグルの人びとの魂そのものともされています。CGTN Digitalのナディム・ディアブ氏が、その源流を求めて新疆のシャチェを訪ね、継承者たちと出会い、共に歌うなかで見えてきたものを追います。
ムカムとは何か――「ウイグル音楽の母」
ムカムは、ウイグルの人びとにとって特別な存在です。リズムや旋律が美しいだけでなく、「ウイグル音楽の母」と呼ばれるように、多くの歌や踊り、物語の基盤となってきました。
ナディム氏が伝えるのは、ムカムがウイグルの人びとの日常や感情、歴史を映し出す「魂の音楽」だという視点です。音楽として楽しむだけでなく、自分たちは何者なのかを確かめる拠り所にもなっていることが伝わってきます。
舞台は新疆・シャチェ 「十二ムカム」のふるさと
今回の旅の目的地は、新疆のシャチェです。ここは「十二ムカム」のふるさととされる場所で、ムカムの重要な拠点になっています。
シャチェでは、ナディム氏が地元の伝承を守る拠点であるヘリテージセンターを訪ね、ムカムの継承者たちと向き合います。静かな部屋に、力強い歌声が響き、長く受け継がれてきたメロディーが今も息づいていることがよく分かります。
継承の現場で出会う人びと
ヘリテージセンターには、ムカムを受け継いできた人びとが集まっています。ナディム氏は、彼らから直接話を聞きます。どのようにムカムを学び、次の世代に伝えているのか。なぜ、この音楽を守り続けたいのか。
一人ひとりの言葉から浮かび上がるのは、「自分たちが受け取った宝物を、さらに次の世代へ渡したい」という静かな決意です。ムカムは、個人の趣味を超えた「共同の財産」として扱われていることが伝わってきます。
「口から耳へ」伝わるメロディー
ムカムの特徴の一つは、その継承方法です。楽譜ではなく、口から耳へ、師匠から弟子へと、何世代にもわたって受け継がれてきました。
ナディム氏は、継承者たちの輪の中に入り、その場で歌を学びます。楽譜を読むのではなく、目の前の歌声を聴き、自分の声でなぞりながら覚えていく。そのプロセスを通じて、「音楽が人と人との関係の中で生きている」ことが、自然と理解できるようになります。
かつてムカムは、消えてしまう危険にさらされていたと言われます。しかし、こうした地道な継承の努力によって、今も生きた形で歌い継がれています。
思いがけない合唱――外から来た人が輪に入るということ
印象的なのは、ナディム氏が「取材する側」と「歌い手」の境界を越えて、一緒に歌い始める場面です。予定されたインタビューから、自然な合唱へ。部屋じゅうに響く声の中で、取材者もまた、ムカムの物語の一部になっていきます。
その瞬間に起きているのは、単なるパフォーマンスではありません。長く受け継がれてきたメロディーが、今日その場で新たな歌い手と出会い、もう一度「誕生し直している」とも言えます。伝統は過去のものではなく、今この瞬間に更新され続けるものだという視点が浮かび上がります。
このストーリーが教えてくれること
ムカムの現場から見えてくる問いは、ウイグルの文化に限られた話ではありません。私たちにとっても、身近なテーマにつながります。
- 文化は、記録だけでなく、人と人の関係を通じて受け継がれること
- 「継承者」は特別な誰かではなく、今その場で歌い、聴き、語る人すべてであること
- 外から来た人が輪に入り、ともに体験することで、新しい理解が生まれること
日本の私たちにとっての「ムカム」のような存在
日本にも、地域の民謡や祭り、語り継がれる昔話など、「口から耳へ」と伝えられてきた文化が多くあります。ムカムのストーリーは、そうした身近な文化に、改めて目を向けるきっかけにもなります。
もし自分のふるさとに受け継がれてきた歌や物語があったとしたら、それを知っている人がいるうちに耳を傾けてみる。家族や友人との会話の中で、その存在を共有してみる。そうした小さな行動が、文化を次の世代へつなぐ力になります。
SNS時代の「継承」のかたち
スマートフォンとSNSが当たり前になった今、文化の守り方も変わりつつあります。ナディム氏のリポートのように、ムカムの歌声や継承者の姿が世界に向けて発信されることで、遠く離れた私たちもその一端に触れることができます。
- 心に残った歌やエピソードを、SNSの投稿や会話の話題として共有する
- 「いいね」やコメントを通じて、継承の努力に関心を示す
- 自分の身近な文化についても、写真や文章で記録し、広く伝える
こうした積み重ねが、世界各地の文化を支える新しい土台になっていきます。
おわりに――よみがえる伝統を「今」の物語として受け取る
ムカムは、一時は消えかけた危機を乗り越え、今日も新疆のシャチェで力強く歌われています。継承者たちの声に、そこに加わるナディム氏の声が重なり、伝統が目の前でよみがえる瞬間は、国や言語を超えて心に届きます。
国際ニュースを日本語で追いかける私たちにとっても、この物語は決して遠い話ではありません。自分にとっての「ムカム」のような存在は何か。どのように受け継ぎ、誰と分かち合っていくのか。そんな問いをそっと投げかけてくれるストーリーと言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








