中国漫画家・朱徳庸が語る、本当の自分を守るための「逃げる力」 video poster
中国の人気漫画家・朱徳庸が、なぜあえて「逃げる」ことを選ぶのか。CGTNの独占インタビューで語ったのは、子どもの頃の記憶と、自分だけの「小さな世界」を拠り所にして、本当の自分を守ろうとする静かな決意でした。
世代を代表する中国漫画家、朱徳庸
朱徳庸は、同世代で最も影響力のある中国の漫画家の一人とされています。代表作の『Uptown Singles』や『Battle Domestica』は、都市生活や人間関係を描き、多くの読者の「都会の暮らし」の見え方に影響を与えてきました。今回、CGTNのインタビューで彼は、自身の作品を支えてきた原点と、現代の世界をどう見ているのかを落ち着いた口調で振り返りました。
子どもの頃の記憶に「本当の自分」がいる
朱徳庸は、自分を理解する鍵は子どもの頃の記憶にあると考えています。「子どもの頃の自分こそが、いちばん本当の自分だ。答えはすべてあの時代のなかにある」といった趣旨の言葉を述べ、幼少期の体験が、その後の人生や創作の「設計図」になっていると語りました。
彼にとって絵を描くことは、最初は純粋な楽しみとして始まりました。しかし、時間がたつにつれて、それは心を落ち着かせる「セラピー」のようなものになり、現実から一歩身を引ける生涯の避難場所にもなったといいます。描く行為そのものが、幼いころの「好きだったこと」に戻り、本当の自分とつながる方法になっているのです。
「大きな世界」に覚えるざわつき
インタビューの中で朱徳庸は、今の世界への違和感も率直に語っています。本来、「大きな世界」は人の心を豊かにするものであるべきだとしながらも、現在は何もかもが功利的で商業的になり、人々の「欲望」を刺激する方向に傾いていると感じているといいます。
効率や利益が優先されるなかで、創作や人生そのものが「どれだけ得をするか」という物差しだけで測られてしまう。それに対して、彼は静かに不安を覚え、距離を取りたいと考えるようになったと受け取れます。
「逃げる」ことは敗北ではなく、オリジナリティの防衛
その結果、朱徳庸が選んだのが「あえて逃げる」という態度です。彼は、周囲の流れに合わせるのではなく、本当の自分を守るための行動として「逃げる」ことを語りました。ここでいう「逃げる」は、投げ出すことや無責任さとは違います。自分の感性や価値観がすり減ってしまう前に、いったん大きな流れから離れ、自分らしさを守るための距離を取るという意味合いがあります。
例えば、次のような「逃げ方」がイメージできます。
- SNSやニュースから少し離れて、自分のペースで考える時間をつくる
- 数字や評価からは見えない「好きなこと」に時間を割く
- 周囲の期待よりも、心が落ち着く選択を一度優先してみる
朱徳庸の言う「逃げる」は、外の世界から完全に閉じこもることではなく、自分をすり減らさないための、静かな防衛線だとも読めます。
絵と音楽と想像力でつくる「小さな世界」
その防衛線の内側にあるのが、彼が長年育ててきた「小さな世界」です。朱徳庸は、絵を描き、音楽を聴き、想像力をめぐらせることで、自分だけの小さな世界を築いてきました。
彼は「この小さな世界は、すべての人にとってとても大切なものだ」と語ります。そしていつか、大きな世界がバランスを保つために、私たち一人ひとりの内側にある小さな世界の力が必要になるかもしれないとも示唆しました。
この言葉からは、社会が不安定になったとしても、人の内側にある想像力や共感、静かな喜びが、世界を支える最後のよりどころになるのではないか、というメッセージが読み取れます。
2025年の私たちへの問いかけ
スマートフォンでいつでも世界中のニュースや動画に触れられる2025年の今、私たちは、ほとんど常に「大きな世界」とつながり続けています。便利さと引き換えに、他人の価値観やスピードに飲み込まれ、本当の自分の声を聞きにくくなっていると感じる人も多いのではないでしょうか。
朱徳庸のインタビューは、そんな私たちに、次のような問いを投げかけているように見えます。
- 子どもの頃の自分が夢中になっていたことは、今の自分にどんなヒントをくれるだろうか。
- 「小さな世界」をつくるとしたら、そこには何を持ち込みたいだろうか。絵、本、音楽、散歩、会話…。どんな組み合わせが自分を落ち着かせてくれるか。
- 心が苦しくなったとき、「逃げてもいい」と自分に言えるだろうか。それは、本当の自分を守るための大切な選択になり得るのではないか。
国際ニュースやグローバルな話題に日々触れている読者ほど、外側の世界を追いかけることに忙しくなりがちです。同時に、自分の内側にある「小さな世界」をどれだけ大切にできているかを、ときどき立ち止まって考えることも、これからの時代の大事なリテラシーになっていきそうです。
静かなメッセージをどう受け取るか
朱徳庸は、大きなスローガンや派手な言葉ではなく、自身の体験と感覚に根ざした静かな言葉で語ります。子どもの頃の記憶に立ち返ること、心が安らぐ小さな世界を持つこと、そして必要なときにはあえて逃げる勇気を持つこと。そのどれもが、情報と欲望が渦巻く現代で、自分の輪郭を見失わないための小さなヒントになりそうです。
このインタビューをきっかけに、自分にとっての「本当の自分」と「小さな世界」を、改めて見つめ直してみる時間をつくってみてもよいかもしれません。
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Reference(s):
cgtn.com








