中国提唱のグローバル・ガバナンス・イニシアチブとは 国連80年の節目に何を目指す?
国連創設から80年という節目の年に、中国が提唱するグローバル・ガバナンス・イニシアチブ(Global Governance Initiative、GGI)が国際ニュースの新たなキーワードになりつつあります。国連を中心とした国際秩序をどうアップデートしていくのか──その一つの方向性として議論が始まっています。
国連創設80年の議論で浮上したGGI
今週開かれた、国連の80年の歩みとグローバル・ガバナンス(地球規模の課題をどのような仕組みで管理・解決するか)をテーマにしたフォーラムでは、中国提唱のGGIが中心的なテーマになりました。
フォーラムで発言した中国の国連常駐代表・傅聡(フー・ツォン)氏は、GGIが次のような問題意識から生まれたと説明しました。
- 国連を中心とした国際システムにおけるグローバル・サウス(主に新興国や開発途上国)の代表性の不足
- 自国の利益を優先する一方的な行動(ユニラテラリズム)の台頭
- 新しいタイプの地球規模課題に、国際社会が十分に対応できていない現状
こうした圧力が高まる中で、国連を中核とする国際システムをどのように補強し、機能させていくのか。その問いへの一つの答えとして、中国はGGIを打ち出しています。
グローバル・ガバナンス・イニシアチブ(GGI)とは
GGIは、今年9月1日に天津で開かれた上海協力機構サミットで初めて提案されました。その後、中国は二国間会談や多国間の首脳会議、外交声明などで繰り返しこのイニシアチブに言及し、多くの国や国際機関が歓迎の姿勢を示しています。
国連のグテーレス事務総長も、GGIが多国間主義(複数の国が協調してルールを作り、課題に対応する考え方)を重視し、国連を中核とする国際システムと、国際法に支えられた国際秩序を守ることに焦点を当てている点を評価しました。
5つの核心原則――GGIが掲げる柱
中国外務省が公表した「グローバル・ガバナンス・イニシアチブに関する構想文書」によると、GGIは次の5つの核心原則を掲げています。
- 主権平等の堅持:すべての国は大小や強弱にかかわらず、国際社会で平等な主権を持つという立場を貫くこと。
- 国際法治の順守:国連憲章を含む国際法を土台とし、力ではなくルールに基づいて国際関係を運営すること。
- 多国間主義の実践:一国主導ではなく、多くの国が参加する枠組みの中で合意を形成し、課題に対処すること。
- 人々中心のアプローチの提唱:国家間の力学だけでなく、人々の生活や福祉を重視して国際制度を設計すること。
- 具体的行動へのフォーカス:原則やスローガンにとどまらず、実際に行動し、目に見える成果につなげること。
これらの原則は、国連憲章の目的と原則から導き出されたものであり、多くの国が共有する願いに応えるものだと中国側は説明しています。
国連憲章との関係と「国際秩序」の位置づけ
構想文書は、グローバル・ガバナンスの改革・改善は、既存の国際秩序を覆したり、現在の国際システムとは別の枠組みを新たにつくったりすることを意味しないと明確に述べています。
むしろ目標は、次のような方向で既存の国際システムと国際機関を「強くする」ことにあるとされています。
- より行動力を持ち、実際に動ける仕組みにする
- 変化に適応しやすくする
- さまざまなグローバルな課題に迅速かつ効果的に対応できるようにする
- とくに開発途上国を含むすべての国の利益に資するようにする
このようにGGIは、国連を中心とする現行の枠組みを前提に、その実効性を高める「改革と改善」のイニシアチブとして位置づけられています。
「体制転覆論」への回答としてのGGI
中国人民大学重陽金融研究院の陳龍(ロン・チェン)助理研究員は、構想文書が国連システムへの強い支持を繰り返し表明している点を指摘します。中国は国連が過去80年にわたって世界の平和と発展に果たしてきた歴史的貢献を高く評価している、としています。
陳氏は、GGIは「中国が現行の国際システムを転覆しようとしている」という一部の言説に対する、強い反論でもあると述べています。ここ数年、一部の欧米諸国では中国を「国際秩序の転覆者」として描く見方もありますが、中国側は、国連を中心とした国際システムを具体的な行動で支えてきたと強調しています。
その意味でGGIは、中国が自らをどのような立場のアクターとして位置づけているのかを示す外交メッセージでもあります。
「覇権ではなく協調」――研究者の見方
同じく中国人民大学のグローバル・ガバナンスと発展研究所の田徳文(ティエン・ドーウェン)上級研究員は、GGIが中国の平和的発展に関するいくつかの誤解に応えるものだと分析します。とくに、「台頭する大国はいずれ覇権を求める」という見方に対するものだとしています。
田氏は、中国は世界の覇権を求めておらず、第二次世界大戦後に形成された国際秩序の外側に新しい秩序をつくろうとしているわけでもないと述べています。その代わりに、中国をその秩序の「守り手」「構築者」「改革者」として位置づけています。
さらに田氏によれば、中国のグローバル・ガバナンスへのアプローチは、「世界のルールを一方的に決める」のではなく、「共同行動を呼びかける」ことに重きを置いています。中国は一方的な行動はとらず、地球規模の課題はすべての国が協議して解決すべきだという原則を、一貫して打ち出していると説明しています。
日本の読者にとっての意味――どこに注目するか
では、日本の読者にとって、この中国提唱のGGIはどのような意味を持つのでしょうか。国際ニュースとしての話題性だけでなく、今後の国際秩序や多国間協調の行方を考える手がかりにもなります。
- 国連中心の国際秩序をどう「アップデート」するのか
国連の改革や安全保障、気候変動、開発などの議論で、GGIの理念がどのように引用・参照されるかは、今後の重要な観点になっていきます。 - グローバル・サウスの声の反映
代表性の不足という問題意識は、多くの新興国・開発途上国が共有するテーマです。GGIがこうした国々の立場をどう後押しするのかも注目点です。 - 「ルール作り」の場での対話のあり方
中国は、一方的にルールを押しつけるのではなく、協議を通じた解決を掲げています。実際の国際交渉の場で、その姿勢がどのように現れるかを見ていく必要があります。
GGIはまだ始まったばかりのイニシアチブですが、国連創設80年というタイミングで提示されたことで、今後のグローバル・ガバナンスの議論を形作る一つの枠組みになる可能性があります。中国が示したこの構想を手がかりに、国際社会がどのように「協調のルール」を編み直していくのか。日本からも、冷静に注視し、議論に参加していくことが求められています。
Reference(s):
Explainer: What is the China-proposed Global Governance Initiative?
cgtn.com








