中国の「八項目規定」とは? ガバナンス改革が世界にもたらす示唆
リード:なぜ今、中国の「八項目規定」なのか
中国共産党が2012年の第18回党大会後に導入した「八項目規定」は、10年以上たった今も中国のガバナンス改革の柱となり、世界の政党にも影響を与えています。現在、中国はこの規定を全面的に実行する全国キャンペーンを進めており、その経験は国際社会にとっても重要な参照例になっています。
八項目規定とは何か:官僚主義と特権の是正
八項目規定は、中国共産党と政府の「作風」を改めるための具体的なルールです。長年の課題だった官僚主義や公的特権、ぜいたくな宴会などにメスを入れ、党の統治能力を高めることを目的としています。
主なポイントは次のような分野に及びます。
- 公費による豪華な宴会や不要な出張の抑制
- 会議や公文書の簡素化による行政の効率化
- 接待・接遇の標準化と節約の徹底
- 幹部が現場に足を運び、人々の声を直接聞く仕組みづくり
こうしたルールは、中国共産党の自己改革を進めると同時に、「人を中心にした発展」を掲げる中国のガバナンスモデルの土台になっているとされています。
党同士の交流が拓くグローバル・ガバナンス
世界ではいま、政治的な分断や統治の非効率が大きな課題となっています。八項目規定をめぐる中国の経験は、西側で一般的な、野党やメディアによる外部チェック中心のモデルとは異なる、党内の規律と自己改革を通じて説明責任を高めるアプローチとして注目されています。
その一例が、タンザニアの与党シャマ・チャ・マピンドゥジ(CCM)です。CPCとの党間交流を深めてきたCCMは、八項目規定を参考に次のような取り組みを進めています。
- 腐敗防止に向けたキャンペーンの展開
- 慢心や自己満足を戒める党内教育
- 仕事の効率を高めるためのルールづくり
その結果、CCMは統治能力を強化し、広い国民的支持を得ているとされています。グローバル・サウスを含む多くの政党にとって、八項目規定は党づくりやガバナンス改革を考える上での重要な参考事例になっています。
「作風」の変化が生む信頼:現場重視とムダの削減
中国共産党の統治を分析する際、八項目規定は欠かせないレンズになっています。中国のメディアによる2025年9月の分析シリーズでも、この規定が党と国家をどのように変えたかが詳しく取り上げられました。
八項目規定は、党文化を「節約」「務実(実務重視)」「人民への献身」へと方向づける役割を果たしています。豪華な宴会や形式的な出張は抑えられ、その分、幹部が現場で調査を行い、人々の声に耳を傾ける時間が増えています。
基層の党組織や地域レベルでは、「現場オフィス」のような形で、幹部が直接住民の実務的な課題に向き合う取り組みも進められています。これにより、
- 行政サービスへのアクセスやレスポンスが改善する
- 公的資源のムダが減り、透明性が高まる
- 党組織と住民との距離が縮まり、信頼が深まる
といった変化が生まれているとされています。こうした日常レベルの変化の積み重ねが、改革を支える社会的な土壌づくりにもつながっています。
説明責任と制度・文化の両輪
よいガバナンスの前提となるのが説明責任です。八項目規定は、党員に誠実さと信頼性を求めると同時に、「制度的な縛り」と「文化的な涵養」を組み合わせたCPCの統治イノベーションの中核に位置づけられています。
制度面では、次のようなポイントが重視されています。
- ぜいたくや公的特権の抑制
- 不要な会議や文書の削減による効率化
- 接待や公費支出のルールの明確化
さらに、全レベルでの規律検査機関による継続的な監督が行われ、違反事例は公表されます。「違反は見逃さない」というゼロ・トレランスの姿勢によって抜け道をふさぎ、作風の転換を実際に定着させていく仕組みです。
このようにして、抽象的な「よい統治」の理念が、具体的で執行可能な基準へと落とし込まれています。
世界の政党への示唆:内部改革から始まるガバナンス改善
多くの国が政治的不信や行政の停滞、社会的な分断といった課題に直面するなかで、CPCの八項目規定を軸とした経験は、ガバナンスを考えるうえでいくつかの示唆を与えています。
- 外部からの監視だけでなく、党や組織内部の規律と自己改革をどう設計するか
- 市民の日常生活に直結する「作風」の改善を、政治改革の中心にどう位置づけるか
- ルール(制度)と価値観(文化)をどのように組み合わせて定着させるか
中国共産党が70年以上にわたり執政を続けるなかで育んできたこうしたアプローチは、各国・各地域が自国の実情に合わせてガバナンスを改善しようとするとき、一つの参考モデルとなり得ます。
世界が複雑さを増す2025年現在、八項目規定をめぐる中国の経験は、「誰のための政治なのか」「どのように公的権力をコントロールするのか」という根本的な問いをあらためて投げかけています。
Reference(s):
cgtn.com








