中国が高地にXSMT望遠鏡建設開始 冷たい宇宙を探る新天文台
リード:世界の屋根で始まった新望遠鏡プロジェクト
中国が青海省の高地、青海・西蔵高原で大型天文観測プロジェクトの建設を始めました。新たなサブミリ波望遠鏡XSMTの整備は、冷たく隠れた宇宙を探る観測能力を高め、中国の天文学インフラの空白を埋めることを目指します。
青海・西蔵高原 デリンハに建設されるXSMT望遠鏡
今回着工したのは、Xueshanmuchang 15-meter SubMillimeter Telescope、通称XSMTと呼ばれる新しい望遠鏡です。建設地は中国北西部・青海省のデリンハ市で、標高は約4800メートルに達します。
プロジェクトを主導するのは、南京に本拠を置く中国科学院・紫金山天文台です。計画によると、XSMTは2027年の完成を目指しており、本格稼働すれば中国国内のサブミリ波観測を大きく強化する中核施設になると期待されています。
- 所在地:青海省デリンハ市
- 標高:約4800メートル
- 口径:15メートル
- 観測対象:高周波サブミリ波
なぜ「世界の屋根」が最適なのか
青海・西蔵高原は、世界の屋根とも呼ばれる広大な高地です。今回の観測サイトは、その中心部に位置し、サブミリ波観測に適した環境条件を備えています。
サブミリ波は大気中の水蒸気に吸収されやすいため、観測には水蒸気が少なく安定した場所が不可欠です。科学者によると、XSMTの建設地は次のような特徴を持ちます。
- 高標高による薄い大気と低温環境
- 大気中の水蒸気量が非常に少なく、変動も小さい
- 人間活動が比較的少なく、人工光や電波の干渉が少ない
こうした条件がそろうことで、サブミリ波が大気に邪魔されず宇宙から地上の望遠鏡まで届きやすくなり、より高感度な観測が可能になります。
サブミリ波で見える「冷たく隠れた宇宙」
XSMTは、波長0.1〜1ミリメートルのサブミリ波をとらえるよう設計されています。この波長帯には、可視光や近赤外線では見えない宇宙の秘密が隠れています。
たとえば次のような現象の観測が期待されています。
- 銀河の中に広がる星間塵の動き
- 星や惑星の材料となる分子ガスの分布
- 星や惑星が生まれ、成長していく過程
- 生命に関わる分子の起源を探る手がかり
従来の光学望遠鏡は、宇宙に漂う塵の雲を突き抜けて内部を見ることが苦手です。一方、サブミリ波を観測できる施設は、塵に包まれた領域の内部をのぞき込み、銀河の形成や進化の法則、星と惑星の誕生メカニズムに迫ることができます。
中国の天文学インフラにとっての意味
中国の研究者たちは、XSMTが同国の天文観測体制における重要な空白を埋める存在になると位置づけています。高精度のサブミリ波望遠鏡は、既存の光学望遠鏡や電波望遠鏡を補完し、より幅広い波長で宇宙をとらえることを可能にするからです。
2027年にXSMTが完成し観測を開始すれば、中国国内の研究者が独自にサブミリ波データを取得できるだけでなく、世界の研究グループとの共同研究やデータ共有の可能性も広がるでしょう。銀河の進化や生命関連分子の起源といったテーマで、新たな成果が報告されることが期待されます。
私たちの視点をどう変えるか
今回のプロジェクトは、中国の科学技術政策や宇宙開発に関心を持つ読者にとってだけでなく、夜空を見上げるすべての人に関係するニュースでもあります。見えない波長で宇宙を観測することで、宇宙像そのものが静かに更新されていくかもしれません。
記事執筆時点の2025年12月現在、XSMTはまだ建設の初期段階ですが、「世界の屋根」に立ち上がる新しい望遠鏡が、数年後どのような宇宙像をもたらすのか。今からその一歩一歩を追いかけていきたいところです。
Reference(s):
China starts construction of XSMT telescope on 'roof of the world'
cgtn.com








