中国の科学技術成果移転が加速 2024年契約額は2269億元に
中国の科学技術政策を担当する中国科学技術部が、2025年の浦江イノベーションフォーラム(開催地:上海)で、2024年の科学技術成果の転化(技術移転)状況に関する年次報告を公表しました。契約額・件数ともに増加しており、中国の大学や研究機関で「研究成果をビジネスや社会実装につなげる動き」が一段と加速していることがうかがえます。
上海で公表された「科学技術成果転化」年次報告とは
今回の報告は、2024年1年間における中国全土の大学や研究機関での科学技術成果の転化状況をまとめたものです。2025年12月8日(月)、上海で開かれている「2025浦江イノベーションフォーラム」の場で発表されました。
ここでいう「科学技術成果の転化」とは、研究室で生まれた技術やノウハウを、企業や社会が使える形に移転するプロセスを指します。具体的には、技術の売却やライセンス供与、企業との共同開発、コンサルティングや技術サービスなど、多様な形態が含まれます。
2024年の契約額は2269億元 前年比約1割増
報告書によると、2024年には合計4,059の大学・研究機関が、科学技術成果を次の6つのチャネルを通じて転化しました。
- 技術の譲渡(トランスファー)
- ライセンス供与
- 株式・持分などによる投資(エクイティ投資)
- 技術開発契約
- コンサルティング
- 各種技術サービス
これらを通じた契約額は合計で2269億元(約319億ドル)に達し、前年に比べておよそ10%増加しました。契約件数も66万1,000件に上り、金額・件数ともに増加傾向が続いていることが示されています。
数字だけを見ると、研究成果の「眠っている特許」を企業に渡すだけでなく、共同開発やサービスなど、より多様な形での連携が広がっていることがわかります。
100億元級の技術移転も増加 大学の「稼ぐ力」が顕在化
研究者や大学を中心としたイノベーションと起業への熱量も、高い水準を維持していると報告書は指摘します。
2024年には、技術移転関連の契約額が1機関あたり1億元(約1,410万ドル)を超えた大学・研究機関が415に達し、前年より4.1%増えました。これは、個々の機関が扱う技術移転案件の「単価」が着実に大きくなっていることを意味します。
大学や研究機関が、論文発表だけでなく、技術移転契約によってまとまった収入を得るケースが増えているとみることもできます。研究成果のビジネス化を後押しする制度や専門人材の整備が進むことで、起業やスタートアップ創出にもつながっていきそうです。
専任スタッフ1万8,000人超 技術移転の「現場」が拡大
科学技術成果の転化を支える体制づくりも進んでいます。2024年末時点で、大学と研究機関には合計1万8,248人のフルタイム職員が、技術転化に専念する形で配置されています。
こうした人材は、
- 研究者と企業の間をつなぐ「橋渡し役」
- 契約や知的財産(IP)の管理を行う専門職
- スタートアップ支援を担うインキュベーション担当
など、研究成果を社会に届ける「現場」の中核として機能しているとみられます。
また、1,000を超える大学・研究機関が、専任の「技術移転オフィス」を設置済みとされています。技術移転オフィスは、特許戦略の立案、企業とのマッチング、契約交渉のサポートなどを担う組織で、研究者が本来の研究に集中しつつ、成果の社会実装を進めるための重要なインフラになりつつあります。
企業との共同R&Dや連携プラットフォームも拡大
報告書はさらに、大学・研究機関と企業との連携が組織レベルで進んでいる点も強調しています。
2024年までに、合計1,329の大学・研究機関が、企業と共同で以下のような組織やプラットフォームを設立しています。
- 共同研究開発(R&D)ユニット
- 共同の技術移転オフィス
- 技術移転やオープンイノベーションのための共同プラットフォーム
研究の早い段階から企業が関わることで、実用性を意識したテーマ設定がしやすくなり、製品化までの時間を短縮できる可能性があります。大学側にとっては、企業ニーズを直接把握しながら研究を進められるため、成果の転化率向上も期待されます。
日本・世界にとっての示唆
今回の中国科学技術部の報告は、科学技術とイノベーションに関心を持つ日本やアジアの読者にとっても、いくつかの示唆を含んでいます。
- 大学・研究機関の技術移転を「制度」「人材」「企業連携」という三層で整えることで、成果の転化を加速させていること
- 専任スタッフや技術移転オフィスといった、中間支援のインフラ整備が、研究者の負担軽減と成果の事業化に直結していること
- 共同R&Dや連携プラットフォームを通じて、企業との対話を研究初期から組み込む重要性
日本を含む各国・地域でも、大学発スタートアップの育成や、研究成果の社会実装をどう進めるかが大きなテーマになっています。今回の中国のデータは、国際ニュースとしての関心にとどまらず、「研究と産業をどうつなぐか」という共通の問いに対する一つのケーススタディとして捉えることもできそうです。
今後、2025年のデータや各地域の取り組みが出そろう中で、科学技術と産業の橋渡しをめぐる国際的な比較と議論が、さらに活発になっていくと考えられます。
Reference(s):
cgtn.com








