革命文化の翻訳で歴史と今をつなぐ 西安発の国際対話
国際平和デーに西安で開かれた「革命文化の翻訳」対話
今年9月21日、国際平和デーに合わせて、中国・陝西省の省都・西安市で「革命文化の翻訳」をテーマにした中英の作家・翻訳者による対話イベントが開かれました。中国人民の抗日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利80周年という節目の年に、歴史をどう他言語に伝え、今日の国際対話につなげるのかが議論されました。
イベントの概要
イベントには、中国の作家He GuさんとMu Taoさん、陝西翻訳協会会長のHu Zongfengさん、イギリス人翻訳者ロビン・ギルバンクさんが登壇し、陝西翻訳協会副会長のSu Ruiさんが進行役を務めました。主催はTranslators Association of China(中国翻訳者協会)、陝西翻訳協会などです。
議論の中心になったのは、次のようなテーマです。
- 革命精神を現代の読者にどう伝えるか
- 翻訳における歴史的な忠実さと表現のバランス
- 延安精神や陝西の物語を通じた国際的な共感の生み方
- AI翻訳と人間の翻訳者の役割分担
革命精神を「実感できる物語」に
作家のHe Guさんは、自身の作品を例にとりながら、革命文化の核にある革命精神とは、深い犠牲の覚悟と国家の再生への強い願いだと説明しました。そのうえで、歴史を遠い抽象的な出来事としてではなく、読者が自分ごととして感じられる物語として描き直すことが重要だと強調しました。
翻訳者にとっても、事実の紹介にとどまらず、その背後にある痛みや希望を読み取り、別の言語の読者が共感できる形で伝える力が求められます。
歴史への敬意と「書きすぎない」姿勢
作家のMu Taoさんは、古代の漢代に行われた中国の文化再編に触れながら、歴史をどう言葉で再構成するかという問題を提示しました。
現代の文章や翻訳では、表現を派手にしすぎるあまり、原文が持っていた歴史的な重みやニュアンスが失われてしまう危険があると指摘します。そのため、原典への敬意と歴史の真正性を守ることが、異文化間の対話を成り立たせる前提になると訴えました。
延安精神は「普通の人」の強さから
陝西で10年以上暮らしてきたというロビン・ギルバンクさんは、延安精神は抽象的なスローガンではなく、困難のなかでも前向きに工夫を続けてきた普通の人々の強さだと語りました。
彼は、アメリカ人ジャーナリストで作家でもあるアグネス・スメドレーのように、楽観、事実を見つめる姿勢、革命的な勇気といった価値観が、文化の違いを超えて響き合ってきた例を紹介しました。
若い世代に対しては、本やスクリーンの中だけで歴史と向き合うのではなく、実際の土地を訪れ、人々の暮らしや記憶に触れることで、より立体的に理解してほしいと呼びかけました。
「黄土高原の鼓動」を世界へ――陝西文学と翻訳
陝西翻訳協会のHu Zongfeng会長は、陝西の文学が持つ独自の歴史性と地域性を強調しました。黄土高原を舞台にした作品には、この地域で生きてきた人々の息遣いと、激動の時代をくぐり抜けてきた経験が刻まれているといいます。
Huさんは、自身らの翻訳チームが長年にわたって、アメリカ人ジャーナリストのヘレン・スノウら国際的な友人の作品を含む陝西ゆかりの物語を世界に紹介してきたと説明しました。それは、黄土高原の「心臓の鼓動」を世界に聞こえるようにする営みだと表現しました。
同時にHuさんは、近年進歩が目覚ましいAI翻訳についても言及しました。機械翻訳は効率を高める強力な道具になりつつある一方で、文化的背景や感情の揺れをくみ取り、心で読む作業までは代替できないと指摘します。言葉の背後にある歴史や価値観を理解し、読者との間に橋をかける役割は、やはり人間の翻訳者が担う必要があるという立場です。
平和の日に考える、翻訳という「対話の技術」
今回のイベントは、国際平和デー当日に、中国人民の抗日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利80周年を記念して開かれました。戦争と抵抗の歴史を語る革命文化は、しばしば国内の記憶として語られがちですが、翻訳を通じて国境を越えた対話の素材に変わっていきます。
登壇者たちの発言からは、次のような問いが浮かび上がります。
- 歴史を忠実に伝えつつ、現代の読者が自分ごととして感じられる表現とは何か
- 他国の人々にとっても意味を持つように、革命や抵抗の物語をどう語り直せるか
- AIが翻訳を支える時代に、人間の翻訳者だからこそできる読み替えとは何か
グローバルな緊張や分断が語られることの多い今だからこそ、翻訳は単に外国の本を読むための技術ではなく、歴史認識や価値観の違いをすり合わせるための対話の技術としての重要性を増しています。西安での静かな対話は、そうした役割を改めて映し出したと言えそうです。
Reference(s):
Revolutionary culture translation: A key to history, global dialogue
cgtn.com








