中国、WTOで新たな特別待遇求めず 開発途上国としての立場は維持
中国の李強首相が、世界貿易機関(WTO)の交渉で新たな特別かつ差別的待遇(SDT)を求めない方針を表明しました。国際貿易ルールづくりの現場で、中国がどのような役割を目指しているのかが改めて示された形です。
中国がWTO交渉で「新たなSDTは求めない」と宣言
李強首相は、国連総会の関連イベントで演説し、今後のWTO交渉に臨む中国の基本姿勢を示しました。
李首相は、世界最大の開発途上国としての立場に言及したうえで、中国は今後のWTO交渉において新たな特別かつ差別的待遇を求めないと表明しました。この決定によって、多角的な貿易体制の強化と、WTO改革に向けた議論に前向きな流れを生み出すことを目指しているとしています。
あわせて李首相は、この方針が中国のグローバル開発イニシアチブを前進させ、世界貿易の自由化に対する信頼を高めると強調しました。
開発途上国の立場は維持しつつ、支援の側に
中国の李成鋼商務次官は、中国は依然として開発途上国であり続けるとしたうえで、グローバル・サウスの国々とともに歩む姿勢を強調しました。
今回の発表は、開発途上国としての地位を放棄するものではなく、むしろ他の開発途上メンバーの利益をWTO改革の中心に据えるという意思表示だと位置づけています。李次官は、こうした姿勢こそが「真の多国間主義」へのコミットメントだと説明しています。
SDT(特別かつ差別的待遇)とは何か
SDTは、開発途上国メンバーに対して認められてきた特別な取り扱いで、多角的貿易体制の重要な柱とされてきました。具体的には、次のような内容が含まれます。
- 新しい貿易ルールを実施する際の移行期間を、先進国より長く設定できる
- 約束すべき義務(関税削減や市場開放など)の水準を、比較的低く抑えることができる
- ルールの履行や制度整備に向けて、技術支援などを受けやすくする
中国は2001年にWTOに開発途上メンバーとして加盟して以来、SDTの扱いについては案件ごとに「独立かつ実務的」に対応してきたとしています。
中国が関わってきたWTOの主要な合意
中国は、SDTをめぐる議論や交渉において、具体的な成果にも関与してきたと説明しています。今回言及されたのは、例えば次のような合意です。
- サービス貿易の国内規制に関する合意(Services Domestic Regulation:サービス分野での国内規制を透明で予測可能にするルール)
- 新型コロナウイルスワクチンの知的財産(IP)に関する一時的な権利免除(ワクチンへのアクセス改善を目的とした措置)
中国側は、こうしたプロセスの中で、SDTを一律に主張するのではなく、案件ごとに柔軟かつ実務的な姿勢で臨んできたと強調しています。
今回の決定は何を意味するのか
では、中国が「新たなSDTを求めない」と表明したことは、国際貿易やWTO改革にとってどのような意味を持つのでしょうか。少なくとも、次のような点が注目されます。
- WTO改革への関与の意思表示:自らの権利主張を抑えることで、多角的な貿易ルールの見直しと制度改革の議論を前に進めたいというメッセージと受け止められます。
- グローバル・サウスへのシグナル:中国が開発途上国としての地位を保ちつつ、他の開発途上メンバーを支える立場をより強く打ち出した形です。
- 「開発途上国」カテゴリーの今後:経済規模の大きい開発途上メンバーが、どのようにSDTを活用し、同時に責任も分担していくのかという議論に、一つの方向性を示したとも言えます。
日本やアジアの読者にとってのポイント
国際ニュースとしての今回の動きは、日本やアジアの読者にとっても無関係ではありません。世界最大級の貿易当事者である中国が、WTO交渉の場でどのようなスタンスをとるかは、サプライチェーンや貿易ルールの行方に少なからず影響を与えます。
今後のWTO改革の議論の中で、中国がどのように開発途上メンバーの利益を位置づけ、多国間体制の中でどのような役割を果たしていくのか。2025年のこの決定は、その流れを読み解くうえで重要な一つの手がかりとなりそうです。
Reference(s):
China's no new WTO SDT pledge shows leadership in trade reform
cgtn.com








