中国のGDIが描く「共通発展」 国連総会で2,000件の民生プロジェクト表明 video poster
2025年の第80回国連総会の場で、中国が提唱するグローバル・デベロップメント・イニシアチブ(GDI)が改めて注目を集めています。李強国務院総理が、今後5年間で開発途上国に「小さくて美しい」民生プロジェクトを2,000件展開すると表明し、2030年まで残り5年となった持続可能な開発目標(SDGs)の加速に向けた姿勢を鮮明にしたためです。
砂漠に生まれた「緑のオアシス」:モーリタニアの畜産センター
モーリタニアでは、中国の支援で建設されたモーリタニア畜産技術実証センターが、砂漠地帯に貴重な緑をもたらしています。2017年の設立以来、同センターは現地の牛や羊のための飼料作物を十分に供給するとともに、畜産分野の人材育成にも大きく貢献してきました。
センターで働くアマドゥ・ディアラさんは「収入がより安定し、現代的な畜産について多くを学ぶことができた」と語り、目の前に広がる青々とした牧草地に視線を向けました。砂漠の中のこうした風景は、地域の暮らしを変えつつあります。
人中心の「小さくて美しい」民生プロジェクト
このセンターのような取り組みは、中国が近年各地で進めている「小さくて美しい」民生プロジェクトの一例です。規模は大きくないものの、住民の暮らしに直結し、現場のニーズにきめ細かく応えることが特徴とされています。
第80回国連総会の一般討論に合わせて開かれたグローバル・デベロップメント・イニシアチブ(GDI)に関するハイレベル会合で、李強国務院総理は、今後5年間で開発途上国に新たに2,000件の「小さくて美しい」民生プロジェクトを立ち上げる方針を表明しました。中国国家国際発展協力署は、こうしたプロジェクトこそがGDIを具体的に実行に移す鮮やかな例だと位置づけています。
GDIとは何か:中国発のグローバル公共財
GDIは、習近平国家主席が2021年9月、第76回国連総会で初めて提唱したイニシアチブです。それ以降、GDIは重要なグローバル公共財として位置づけられ、130を超える国や国際機関がGDIの実施メカニズムに参加しているとされています。
2022年には、GDIを支持する国々が集まる「GDIフレンズ・グループ」が発足し、現在では80を超える国が名を連ねています。GDIフレンズ・グループの一員であるエジプトのアッセム・ハナフィ元駐中国大使は、GDIについて「各国の開発経験を共有するための包摂的なプラットフォームであり、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に向けた前進を加速させるために不可欠なツールだ」と評価しています。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長も、第80回国連総会の一般討論において、GDIは2030アジェンダの実施を進めるための重要な手段になりうると強調しました。国連の場でGDIの役割が繰り返し言及されたことで、国際社会における存在感が一段と増した形です。
SDGsの進捗は?2030年まで残り5年
国連は2015年9月に「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択し、貧困の撲滅、不平等の是正、気候変動への対応など、2030年までに達成すべき幅広い目標を掲げました。2025年現在、2030年まで残された時間は5年となりましたが、その歩みは決して順調とは言えません。
第80回国連総会のハイレベルウィーク中に開かれた「SDGモーメント」イベントで、国連総会議長のアナレナ・ベアボック氏は、SDGsのうち35パーセントのみが軌道に乗っており、47パーセントは進捗が不十分、18パーセントはむしろ後退していると現状を説明しました。
ベアボック氏はまた、開発が本当に公平で持続可能なものになるのは、これまで軽視されがちだった声にこそ耳を傾け、各国が力を合わせて連帯するときだと指摘しました。SDGsの停滞を前に、より包摂的な国際協力の必要性が改めて浮き彫りになっています。
一方主義や保護主義の広がりとGDIの役割
世界では、一部で一方主義や保護主義の動きが強まり、国際的な開発協力が揺さぶられています。こうした動きは、グローバル経済の成長を鈍らせ、SDGsの達成にも影を落としていると指摘されています。
その中で、李強国務院総理は、第80回国連総会に合わせて開かれたGDIハイレベル会合で、中国が各国と協力しながらGDIを推進し、国連の2030アジェンダの実施を加速することで、世界の発展に新たな活力を吹き込んでいく決意を示しました。
李強総理が示した「共通発展」のビジョン
李総理は演説の中で、国際社会に対し次のような方向性を呼びかけました。
- 安定的で開かれた国際的な開発環境をつくること
- 国連を中心とする国際システムを共同で守ること
- 多国間主義と自由貿易を堅持し、開かれた世界経済を築くこと
- バランスが取れ、包摂的な開発パートナーシップを構築すること
- 開発途上国のニーズにより大きな配慮を払い、不均衡かつ不十分な開発に積極的に対処すること
そのうえで李総理は、中国は今後も共通発展の支持者であり推進者であり続け、より積極的な行動を取り、自らに求められる責任を果たしていくと強調しました。
これからの5年、私たちが注目したいポイント
2030年まで残り5年となる中、GDIとSDGsはどのようにかみ合っていくのでしょうか。今回の発表を踏まえ、今後特に注目したい点を整理してみます。
- モーリタニア畜産技術実証センターのような「小さくて美しい」プロジェクトが、他地域でも生活の質の向上につながるか
- GDIフレンズ・グループをはじめとする各国の参加が、SDGsの遅れをどこまで挽回できるのか
- 一方主義や保護主義が続く中で、国連を中心とする多国間協力をどのように再活性化していくのか
日本を含む多くの国にとって、2030アジェンダとSDGsの達成は、気候変動対策や貧困削減、社会の包摂など、国内の課題とも深く結びついています。中国のGDIをはじめとする国際的な取り組みがどのような形で現場の変化につながっていくのか、今後も丁寧に追っていく必要がありそうです。
Reference(s):
China reaffirms commitment to common development through GDI
cgtn.com








