中国が提唱「AI+国際協力イニシアティブ」とは 5つの行動軸を解説
2025年のいま、人工知能(AI)をめぐる国際協力の枠組みづくりが世界的なテーマになっています。そうした中、中国がグローバル発展イニシアチブに関するハイレベル会合で「AI+国際協力イニシアティブ」を提唱しました。
このイニシアティブは、「AIをすべての国、人々のために活用する」という考え方を軸に、公共サービスから産業、文化、人材育成までを包括的にカバーするのが特徴です。本記事では、その内容を日本語でわかりやすく整理します。
AI+国際協力イニシアティブの全体像
イニシアティブの出発点にあるのは、「人工知能は本質的に人々の力を高める技術であり、単なる技術更新ではなく社会全体を変える包括的な変革をもたらす」という認識です。
中国は、AIが国連の「2030アジェンダ」(持続可能な開発目標)を前進させるうえで重要だと位置づけたうえで、次のような方向性を示しています。
- AIを経済・社会発展に深く統合し、新たな生産力を育てる
- 質の高い発展と安全保障を両立させる
- グローバルサウスを含むすべての国の人々がAIの恩恵を享受できるようにする
そのために、中国は各国に対し、自国の状況に応じた「AI+」キャンペーンを展開し、政策交流と実務協力、ベストプラクティスの共有を進めるよう呼びかけています。具体的には、次の5つの分野での行動が掲げられています。
1. 「AI+公共福祉」:暮らしの質を高める
最初の柱は、「AI+公共福祉」です。AIを公共サービスや暮らしの改善に活用し、人々の満足度を高めることを目指します。
特に強調されているのが、医療と教育の分野です。
- 医療(ヘルスケア):
疾病の予防・管理、医薬品の研究開発、診断支援、遠隔医療などにAIを導入し、サービスの質と効率を高めるとしています。これにより、遠隔地や開発が遅れた地域にも医療サービスを広げ、世界全体の健康水準の向上を図る狙いがあります。 - 教育:
AIを活用して、高品質な教育資源をより公平に分配し、教育方法のイノベーションを促し、教育の質を一段と高めることを目指すとしています。
2. 「AI+技術進歩」:グローバルなイノベーションを加速
2つ目の柱は、「AI+技術進歩」です。AIをグローバルな技術革新の「エンジン」として位置づけ、研究開発の進め方そのものを変えていく構想が示されています。
- 研究開発のサイクルを短縮する
- 学際的な新しい研究分野を切り開く
- 基礎科学のブレイクスルーを後押しする
- 分野をまたいだ知識の統合と更新を進める
AIによって、理論と実践のギャップを埋め、科学者や研究者が人類の知のフロンティアをさらに押し広げることを支援するイメージです。
3. 「AI+産業応用」:未来経済の新エンジンに
3つ目は、「AI+産業応用」です。既存産業の高度化と新産業の創出の両方にAIを組み込み、未来の経済成長を支える「新しいエンジン」をつくることが目標とされています。
- 伝統産業の高度化・効率化を図る
- 新興分野の成長を後押しし、新たなビジネスモデルやサービスを生み出す
- 雇用機会を増やし、経済成長に新たな活力を注入する
- 産業・サプライチェーンの安定を各国が協力して維持する
AIによるイノベーションが絶え間なく生まれ、産業の高度化と「AIが生み出す恩恵(AIディビデンド)」が継続的に社会へ還元されていく姿が描かれています。
4. 「AI+文化繁栄」:文明間の相互理解を広げる
4つ目は、「AI+文化繁栄」です。ここでは、AIを文化の継承と発展、そして文明間対話の促進に活用する方向性が示されています。
- 各国の優れた伝統文化をAIによって継承・発展させる
- AIを用いた修復、デジタル保存、没入型展示などの技術で文化財に新たな命を吹き込む
- 文化交流や文明間の対話を積極的に支援し、各国の人々の相互理解と親近感を高める
- 世界の文明の多様性と、それぞれの国の独自の文化を守る
文化をめぐるAI活用は、コンテンツの翻訳やオンライン展示だけでなく、歴史資料の保存や修復などにも及ぶ可能性があり、国境を越えた文化理解を深める手段として位置づけられています。
5. 「AI+人材育成」:AI時代に対応できる力を養う
最後の柱は、「AI+人材育成」です。AIを使いこなし、社会に生かしていくためには、人材の育成が欠かせません。
- AI教育の教材やコンテンツを各国で共同開発し、共有する
- 人材交流を進め、デジタルリテラシー(デジタル技術を使いこなす力)とイノベーション能力、グローバルな視野を持つAI人材を育てる
- AI人材育成の仕組みや制度を整備する
- 各国がAIを理解・受け入れ・活用する能力を高め、急速に変化する時代に適応できるよう支援する
イニシアティブは、AIそのものだけでなく、それを活用できる人材と教育の重要性を強調しています。
このイニシアティブが示すもの
AI+国際協力イニシアティブは、AIを「技術」としてだけでなく、「公共福祉」「技術進歩」「産業」「文化」「人材」という社会の広い領域と結びつけて考える視点を示しています。
- AIの恩恵を世界全体、とくにグローバルサウスにも行き渡らせるという問題意識
- 安全と発展を同時に追求するというバランス感覚
- 各国の事情に応じた柔軟なAI活用を認めつつ、国際協力を進めるというアプローチ
2025年のいま、AIをめぐる国際的な議論はますます活発になっています。その中で、今回のイニシアティブは、AIをどう社会に統合し、どのように国際協力につなげていくのかという大きな方向性の一つを提示していると言えます。
読者のみなさんにとっても、「自分の生活や仕事の中でAIがどのように使われるべきか」「AIの国際協力はどのような形が望ましいか」を考えるきっかけになるのではないでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








