新疆でユルト文化を守る女性職人の物語 video poster
新疆でユルト文化を守る女性職人
中国・新疆ウイグル自治区出身のジェンギスグル・ヌルダヒンさんは、カザフ系遊牧民が暮らしに使ってきた伝統的な住居「ユルト(円形のテント式住まい)」の職人として、長年その技を守り続けてきました。現在57歳の彼女は、古くから受け継がれてきた手仕事を次の世代へつなぐことを目指し、自らの人生を通じてユルト文化を表現する「生きた伝承者」になろうとしています。
ユルトとはどんな住まいか
ユルトは、カザフ系をはじめとする遊牧の人びとが使ってきた円形のテント状の住居です。骨組みを組み立て、フェルトや布を重ねて覆うことで、厳しい自然環境の中でも暖かさと涼しさを両立させる知恵が詰まっています。住まいであり、家族や仲間が集まる場であり、儀礼や祭りの舞台にもなる、生活と文化の中心ともいえる空間です。
ジェンギスグルさんが守ろうとしているのは、単なる建物の形ではありません。材料の選び方、骨組みを結ぶ紐の締め方、装飾の模様に込められた意味など、ひとつひとつの工程に先人たちの経験と思いが刻まれています。
「生きた伝承者」になりたいという思い
ニューメディアやデジタル技術が発達し、暮らしのスタイルが急速に変化するなかで、ユルトのような伝統的な住まいは実際に目にする機会が少なくなりつつあります。その中で、ジェンギスグルさんは「古いものを保存する人」ではなく、「いまを生きる職人」としてユルトの文化を体現したいと考えています。
彼女が「生きた伝承者」であろうとする姿勢には、次のようなメッセージが込められているように見えます。
- ユルト文化は、博物館のガラスケースの中だけで完結するものではないこと
- 日々の暮らしの道具として使われ続けることでこそ、文化は息づき続けること
- 一人の職人の手と身体の動きが、そのまま歴史の継続につながっていること
変わりゆく暮らしの中で伝統をどう残すか
都市化やライフスタイルの変化により、世界各地で遊牧文化や伝統工芸が姿を変えつつあります。新疆でも例外ではなく、固定した住宅に住む人が増え、ユルトが日常の住まいとして使われる場面は少なくなっています。
だからこそ、ジェンギスグルさんのように、基礎からユルトづくりの技を受け継ぎ、実際に形にし続ける存在は貴重です。紙の上の記録だけでは伝わらない「手の感覚」や「素材との向き合い方」が、彼女の仕事を通じて次の世代へ橋渡しされていきます。
デジタル世代が学べること
スマートフォンで世界中の情報にアクセスできる私たちにとって、ユルトの手仕事は遠い世界の話のように感じられるかもしれません。しかし、細部を丁寧に仕上げ、時間をかけて一つのものを完成させる姿勢は、どんな時代にも通用する学びです。
- 時間をかけて技を深めることの価値
- 地域の自然や暮らしに根ざした「デザイン」の考え方
- モノを長く使い続けるという発想
こうした視点は、デジタルな仕事や都市での生活にも応用できるものです。
私たちへの静かな問いかけ
57歳になった今も、ジェンギスグル・ヌルダヒンさんはユルトづくりの伝統を守り続け、「自分自身が文化の一部になる」ことを目指しています。その姿は、新疆の遊牧文化を超えて、私たち一人ひとりに次のような問いを投げかけているように感じられます。
- 自分の暮らす地域で、守りつないでいきたい「技」や「物語」は何か
- 忙しい日常のなかで、どんな手仕事や文化に時間を割きたいか
- 次の世代にどのような形で経験や知恵を渡していけるか
国際ニュースとして伝わるのは、華やかなイベントや大きな政策だけではありません。ジェンギスグルさんのように、黙々と伝統を受け継ぐ一人の職人の歩みもまた、世界の今を映す大切な断面です。私たちが日本語ニュースで国際社会の動きを追うとき、こうした地域の職人のストーリーにも目を向けることで、世界の多様さをより立体的にとらえることができます。新疆でユルトの技を守り続ける彼女の姿から、「文化を受け継ぐ」とはどういうことかをあらためて考えることができます。
Reference(s):
Craftswoman aspires to preserve traditional yurt heritage in Xinjiang
cgtn.com








