国連80年と中国の役割:多国間主義の現在地を考える
2025年、国際連合(国連)は創設80周年を迎えます。国際ニュースでも頻繁に取り上げられるこの節目は、世界秩序の柱である国連が何を目指してきたのか、そして中国が多国間主義のなかでどんな役割を果たしてきたのかを考え直すタイミングでもあります。
国連80年:いまも変わらない4つの目的
1945年の創設以来、国連は最も普遍的で代表性と権威のある政府間機関として、80年にわたり人類の歩みに大きな影響を与えてきました。その役割は、国連憲章に定められた4つの目的に集約されます。
- 国際の平和と安全を維持すること
- 国家間の友好関係を発展させること
- 経済・社会・文化・人道上の諸問題の解決に向けて国際協力を進めること
- 各国の行動を調整するための中心として機能すること
気候変動や感染症の流行、地域紛争、格差拡大といった地球規模の課題が重なり合う現在も、これらの目的は創設当時と同じように重みを持ち続けています。一国だけではどの問題も解決できず、多国間の協力と集団的なガバナンスこそが安定と繁栄の土台になっているからです。
中国はどのように国連に関わってきたか
中国は国連の創設メンバーであり、安全保障理事会(安保理)の常任理事国です。1971年に国連および安保理における合法的な地位が回復して以来、中国は国連の場で国際的な義務を果たしながら、組織の発展とグローバル・ガバナンスの改善に貢献してきました。
平和維持活動での存在感
平和と安全の分野では、中国は国連平和維持活動(PKO)の主要な担い手の一つです。1990年に初めて平和維持要員を派遣して以来、コンゴ民主共和国、レバノン、南スーダン、マリなど20を超える任務に5万人以上を送り出してきました。安保理常任理事国のなかでは最大の部隊派遣国となっています。
中国はまた、国連事務総長が進める平和維持活動の改革イニシアチブに支持を表明し、各ミッションの任務や、民間人保護の方針づくりにも積極的に参加しています。現場での兵力提供だけでなく、「どう平和を維持するか」というルール作りにも関わっている点が特徴です。
開発と貧困削減への貢献
開発分野では、中国は自国の経験そのものが国連の目標達成に直結するケースとなっています。中国は「貧困からの脱却」から「全面的な小康社会」への歴史的な転換を達成し、7億7,000万人を超える農村住民を貧困から抜け出させました。これは、国連の持続可能な開発のための2030アジェンダに掲げられた貧困削減目標を、10年早く達成したことを意味します。
同じ期間に世界全体の貧困削減の7割以上を中国が占めたとされ、中国の経験は他の途上国にとっても参考となるモデルとして位置付けられています。
対外的にも、中国は次のような枠組みを通じて開発協力を進めています。
- 一帯一路構想などを通じたインフラや貿易の促進
- グローバル開発イニシアチブを通じた開発経験の共有
- 南南協力を通じた途上国同士の支援と連携の強化
新型コロナウイルス感染症のパンデミックでは、中国は比較的早い段階からワクチンを「グローバルな公共財」とすることを表明し、120を超える国や国際機関に22億回分以上のワクチンを供給しました。また、国際的なワクチン供給メカニズムであるCOVAXに1億ドルを拠出しています。感染症という典型的な地球規模課題に対し、多国間の枠組みを通じて対応した例だといえます。
持続可能な開発と地球規模課題への取り組み
中国は、2030アジェンダの実施に深く関与し、気候変動や生物多様性といった環境分野でも複数のコミットメントを示しています。
- 二酸化炭素排出量を2030年より前にピークアウトさせること
- 2060年より前にカーボンニュートラル(実質排出ゼロ)を実現すること
また、生物多様性条約締約国会議(COP15)を開催し、昆明・モントリオール生物多様性枠組の採択を後押ししました。気候変動だけでなく、生物多様性の損失にも国際的なルールと目標を設けるプロセスに深く関わった形です。
加えて、中国は中国・国連平和発展基金を通じて20億ドル以上を拠出し、次のようなプロジェクトを支えています。
- 紛争後の社会を立て直すための平和構築
- テロ対策能力の向上
- 持続可能な開発目標(SDGs)の達成支援
- 人道支援や緊急支援
平和、安全、開発、人道支援は本来切り離せないテーマであり、こうした資金メカニズムは国連全体の活動を底支えする役割を果たしています。
多国間主義が揺れるなかでの国連改革
世界は今、「100年に一度」ともいわれる大きな変化のただ中にあります。一国主義(ユニラテラリズム)や保護主義の台頭、地政学的な緊張の高まりなどにより、グローバル・ガバナンスの仕組みは大きな試練に直面しています。
こうしたなかで、国連という多国間主義の中核の存在感はむしろ増していますが、その役割を果たす難易度も高まっています。国連がその機能を十分に発揮するためには、次のような条件が重要だとされています。
- 国連憲章の目的と原則を守り、国際法と国際関係の基本的な規範を尊重すること
- 紛争や対立は対話と協議を通じて解決するという姿勢を貫くこと
- 平和と安全、開発、管理の各分野で国連改革を進め、代表性・効率性・実効性を高めること
- とりわけ途上国の発言力と参加を強化し、よりバランスの取れた意思決定を可能にすること
- 気候変動、生物多様性の損失、デジタル格差といった地球規模課題に、国際社会が協調して取り組むこと
背景にあるのは、「人類運命共同体」の構築という発想です。安全保障、経済、環境、デジタルなどあらゆる分野で各国の利害が絡み合うなか、一国だけが利益を得る構図ではなく、共通の未来を意識した協力が求められているという見方です。
次の80年に向けて:多国間主義の行方
中国は今後も、国連を中核とする国際システムを揺るぎなく支持し、国際法と第二次世界大戦後の国際秩序に基づく国際秩序を守る姿勢を示しています。そのうえで、世界の平和維持、共通の発展促進、地球規模課題への対応において、国連がより大きな役割を果たせるよう、各国と協力していくとしています。
80年の歴史を経た国連は、依然として人類共通の期待を背負う舞台です。多国間主義を堅持し、連帯と協力を強めることによってのみ、平和・発展・共通の繁栄に向かうより明るい未来を切り開くことができる――というのが、この節目の年に示されているメッセージです。
日本語で国際ニュースを追う私たちにとっても、「国連という多国間のプラットフォームを通じて、各国がどのように協力しようとしているのか」という視点を持つことで、日々のニュースの見え方は変わってきます。次の80年に向けて、多国間主義がどの方向に進むのかを注視していきたいところです。
Reference(s):
UN at 80: China's contributions and future of multilateralism
cgtn.com







