中国が2035年NDCを発表 排出7〜10%削減と再エネ3600GWの国際ニュース
中国の習近平国家主席は、国連気候サミット2025で2035年に向けた新たな国別目標(NDC:国が決める貢献)を発表しました。経済全体の温室効果ガス排出をピーク時から7〜10%削減し、風力・太陽光発電の設備容量を2020年比で6倍超となる3600ギガワットまで拡大するという内容で、2030年の排出ピークと2060年のカーボンニュートラルに向けた中間ステップとして注目されています。
2035年NDCのポイント:排出7〜10%削減と再エネ6倍超
今回発表された中国の2035年NDCでは、次の2点が柱となっています。いずれも中国経済全体を対象とする大規模な目標です。
- 2035年までに、経済全体のネット温室効果ガス排出量をピーク時から7〜10%削減する。
- 2035年までに、風力・太陽光発電の設備容量を2020年の6倍超に拡大し、合計3600ギガワットとする。
ネット排出とは、排出量から森林などによる吸収量を差し引いたものを指します。習主席はビデオ演説で、人と自然の調和というビジョンを強調し、各国に行動の加速を呼びかけました。
習主席は演説の中で、人類と地球の関係について次のように述べました。
人と自然の調和という美しいビジョンを実現し、私たちの故郷である地球を守るため、行動を一段と強めよう。
背景にあるこれまでの積み上げ
2020年に掲げた長期ビジョン
中国は2020年、2030年までに二酸化炭素排出のピークアウトを目指し、2060年までにカーボンニュートラル(実質ゼロ)を達成するという長期目標を示しました。今回の2035年NDCは、その長期ビジョンを具体的な数値で補強するものと位置づけられます。
全国炭素市場の拡大と市場メカニズム
新たなNDCの背後には、ここ数年で進んだ国内の制度整備があります。中国は、炭素の吸収源を増やす取り組みと並行して、排出量取引(カーボンマーケット)の拡充を進めてきました。
- 2025年8月末までに、全国炭素市場の累計取引量は1億8900万トン、取引額は181億元(約25.4億ドル)に達し、2024年は2021年の市場開始以来最も活発な年となりました。
- ある報告書によれば、この市場は2024年の電力部門の炭素強度(発電量あたり排出量)を2018年比で10.8%低下させるのに貢献したとされています。
こうした排出量取引は、市場メカニズムを通じて企業の脱炭素投資を促し、排出削減コストを下げる狙いがあります。2024年には、自主的な温室効果ガス削減の取引を行う全国市場も立ち上がり、政策手段の選択肢を広げています。
植林と大気質改善:生態環境の底力
習主席は長年、生態系の保全や森林の再生を重視してきたとされます。2012年から2024年までの中国の造林面積は、ドイツの国土の2倍を超える規模に相当するとされています。
植林だけでなく、大気質の改善も進んでいます。
- 2024年には、中国の222都市が大気環境基準を達成しました。
- 地級市以上の都市におけるPM2.5濃度は1立方メートル当たり29.3マイクログラムまで下がりました。
- 空気が良好とされる日の割合は、年間で87.2%に達しました。
こうした国内の環境改善の実績が、新たな2035年NDCを支える土台になっています。
国際協力「より良い世界へ」:共通だが差異ある責任
習主席は演説で、気候変動への対応における国際的な役割分担についても言及しました。キーワードは、国連気候交渉で使われてきた「共通だが差異ある責任」です。
習主席は、各国の役割について次のように述べました。
各国は共通だが差異ある責任の原則を堅持し、先進国が率先して排出削減義務を果たし、途上国への資金と技術支援を拡大すべきだ。
中国は2016年以降、途上国のクリーンエネルギー導入や気候変動への適応・強靱性強化を支援するために、1770億元超を動員してきました。これまでに42の途上国と気候分野の協力文書を締結し、その数は54件に上ります。
アフリカや島しょ国での具体的プロジェクト
アフリカでは、多数のクリーンエネルギーおよび送電網のプロジェクトを支援しています。具体例として、ケニアのガリッサ太陽光発電所は約7万世帯に電力を供給し、年間約4万3000トンの二酸化炭素排出を相殺しているとされています。南アフリカのデアール風力発電所やルワンダでの水力発電プロジェクトも、その一部です。
インフラ整備に加え、技術相談や人材育成、衛星を使った防災支援も行われています。例えば2022年1月、トンガで大規模な火山噴火が発生した際には、中国の衛星「海丝一号(HISEA-1)」が、緊急対応のためのリモートセンシング情報を提供しました。
習主席は、今後の方向性について次のように語りました。
世界は今、大きなグリーン開発需要に直面している。各国はグリーン技術や産業での国際協調を強め、グリーン製品の生産能力不足に対応し、高品質なグリーン製品が世界中で自由に流通するようにすることが重要だ。
中国は、気候リスクに立ち向かう人類共通のコミュニティを築くことを掲げ、単独では解決できない課題に対して、各国と連携を深める姿勢を示しています。
日本の読者にとっての意味:3つの視点
今回の中国の2035年NDCは、日本やアジアの読者にとっても無関係ではありません。ニュースを追う際の視点として、次の3点が挙げられます。
- グリーン技術とサプライチェーン
再エネ設備を3600ギガワットまで拡大する計画は、太陽光パネルや風力発電機、蓄電池などグリーン関連製品の需要と供給に影響します。日本企業やアジアのサプライチェーンにどのような連鎖が生じるかが注目点です。 - 市場メカニズムによる脱炭素
全国炭素市場や自主的クレジット市場の拡大は、価格メカニズムを使って排出削減を促す実験でもあります。排出量取引やカーボンプライシングに関心のある読者にとって、制度設計や運用の経験は重要な比較材料になりえます。 - 気候協力と国際秩序
途上国支援や「共通だが差異ある責任」というメッセージは、今後の国連気候交渉で、資金・技術支援をめぐる議論に影響を与える可能性があります。日本を含む各国がどのように役割を分担していくのかを考えるヒントになります。
これからの注目ポイント
- 2035年までに、ピーク時から7〜10%のネット排出削減をどのような政策パッケージで実現していくのか。
- 風力・太陽光発電の大規模な拡大に伴い、送電網強化や蓄電などの課題にどう対応するのか。
- 炭素市場や自主的クレジット市場が、今後どのセクターに広がり、どこまで排出削減を後押しできるのか。
- 途上国支援やグリーン製品の自由な流通をめぐる国際協調が、どの程度具体化していくのか。
中国の2035年NDCは、同国の脱炭素のロードマップを一段と具体的にする一方で、世界全体の気候ガバナンスにも影響を与えうる動きです。今後の政策や国際交渉の行方を追いながら、自分たちの生活や産業とのつながりを考えていくことが求められています。
Reference(s):
What's new about China's 2035 Nationally Determined Contributions
cgtn.com








