中国企業のIoT衛星コンステレーション始動 64基で地球規模カバー
モノ同士をつなぐ「IoT(モノのインターネット)」向けの衛星インフラで、中国の民間企業が第1期ネットワークを立ち上げ、南北の極地を除く地球全体をほぼリアルタイムでカバーできる体制を整えました。
64基の衛星で第1期ネットワークが稼働
自動車メーカーとして知られる吉利控股集団の衛星部門「Geespace」は、IoT向けの小型衛星コンステレーション(多数の衛星を組み合わせたネットワーク)を構築しています。水曜日には中国東部・山東省沖の海上からロケットが打ち上げられ、新たに「Geely-06」衛星11基が予定軌道に投入されました。
これにより、Geespaceは2022年から2025年にかけて計6回の打ち上げを行い、合計64基の衛星による第1期ネットワークの配備を完了しました。地上局との組み合わせで、極地を除く地表のほぼどこからでも、リアルタイムの通信が可能になるとしています。
最大2,000万ユーザーを想定 1日3億4,000万件のメッセージ
このIoT衛星コンステレーションは、世界で最大2,000万ユーザーの利用を想定して設計されています。システム全体では、1日あたり最大3億4,000万件のメッセージを処理できる能力を持つとされています。
- 高頻度の通信を行うユーザー:約500万
- 中・低頻度のユーザー:約1,500万
- 1回の送信で扱えるデータ:最大1,900バイト(テキスト、音声、画像など)
データ量は大容量の動画配信には向きませんが、位置情報やセンサー情報、短いテキストや音声メッセージをやり取りするIoT用途には十分な仕様といえます。
第1期72基へ拡張後、第2期・第3期でブロードバンドへ
現在は64基体制ですが、第1期ネットワークは今後72基まで拡張される計画です。衛星数が増えることで、通信容量が増え、途切れにくさやサービスの安定性が高まると見込まれています。
その先の構想も示されています。
- 第2期:衛星264基を打ち上げ、スマートフォンとの直接通信に対応
- 第3期:衛星5,676基によるグローバルなブロードバンド通信ネットワークを構築
第1期の配備が整ったことで、Geespaceは今後、衛星IoTサービスの本格的な商用展開を世界各地で進める計画です。地上のモバイルネットワークが届きにくい地域でも、衛星経由でモノや車をオンラインにつなげることを狙います。
クルマを常時ネットにつなぐ「宇宙 × コネクテッドカー」
この衛星コンステレーションの特徴は、単なるIoTではなく、「宇宙を使ったコネクテッドカー向けネットワーク」として設計されている点です。衛星からの信号を活用し、車両のリアルタイム位置把握やメッセージ送受信を行うことで、走行中の車を常時ネットワークにつなぐことができます。
地上の通信網が混雑したり、災害などで一時的に利用できなくなったりしても、衛星通信がバックアップとして働く仕組みです。すでに一部の吉利系の電気自動車ブランド「Zeekr」や「Galaxy」には衛星通信機能が搭載されており、ユーザーは通信圏外でも衛星経由でメッセージを送受信できるとされています。
海、建設現場、物流…産業分野への応用も
Geespaceは、通信事業者の中国聯通(China Unicom)、自動車メーカーの吉利汽車、建設機械大手の中聯重科(Zoomlion)などと連携し、衛星IoTと地上IoTを組み合わせた実証を進めています。対象分野としては、以下のような領域が挙げられています。
- スマートビークル(高度なネット接続機能を持つ車)
- 海洋・漁業分野(遠洋漁船やブイのトラッキングなど)
- 建設機械・重機の遠隔管理
- 長距離物流・サプライチェーンのリアルタイム追跡
衛星経由で常に位置や稼働状況を把握できるようになれば、燃料の最適化、安全管理、保守の効率化など、多くの産業でコスト削減とサービス向上の余地が生まれます。
日本の読者が押さえておきたい視点
今回のプロジェクトは中国の取り組みですが、衛星IoTや宇宙利用のデジタルインフラが、地上の通信網を補完する重要な要素になりつつあることを示しています。特に、海上や山間部、災害時など、地上ネットワークが弱い場面では、衛星が通信のラストリゾート(最後の砦)になり得ます。
日本の読者にとっては、次のようなポイントが今後の注目点になりそうです。
- どの地域で、どの程度の料金でサービスが提供されるのか
- 災害時の緊急通信や、海上・遠隔地での安全確保にどう生かせるか
- 海外企業の衛星IoTネットワークを、日本や他地域の産業がどう活用していくのか
- 衛星数の増加に伴う宇宙空間のルール作りや、デブリ(宇宙ごみ)対策との両立
モビリティと宇宙、IoTが重なり合う新しいインフラづくりは、今後の国際経済や産業競争力にも影響を与える可能性があります。今回のGeespaceの動きは、その一つの具体例として押さえておきたいニュースです。
Reference(s):
Chinese firm deploys IoT satellite constellation for global coverage
cgtn.com








