李強国務院総理が国連総会で演説 80年目の国連に示した4つのメッセージ
中国の李強国務院総理が国連総会で演説
9月26日、ニューヨークの国連本部で開かれている第80回国連総会の一般討論で、中国の李強国務院総理が演説を行いました。世界反ファシズム戦争の勝利と国連創設から80年の節目にあたる今年、李総理は国連中心の国際秩序の意義を改めて強調し、平和や経済、気候変動、AIを含む新技術まで幅広いテーマで中国の立場を示しました。
80年目の国連に求めた「原点回帰」
演説の前半で李総理は、国連の80年を振り返りながら、そこから得られる三つの「教訓」を整理しました。
- 平和と発展は、すべての国の人々に共通する最大の願いであること
- 連帯と協力こそが、人類の進歩を支える最も強い原動力であること
- 公平と正義が貫かれてこそ、国際社会は安定し繁栄できること
李総理は、一方的な行動や冷戦思考が再び頭をもたげ、過去80年かけて築いてきた国際ルールと秩序が揺らいでいると指摘しました。そのうえで、「力が正義を決める」時代に戻れば、人類はより大きな流血と野蛮に直面すると警告し、すべての国が大小にかかわらず対等に扱われる「真の多国間主義」を守るべきだと訴えました。
国連本部前に並ぶ各国の国旗や、剣を鋤に変える彫像「Let Us Beat Swords into Ploughshares」などに触れながら、李総理は「初心を忘れないこと」が国連創設を記念する意味だと強調し、「より良い未来を共に創ることは、今を生きる私たちの責任だ」と呼びかけました。
4つの柱で示した中国の行動提案
世界が「新たな動乱と変革の時代」に入ったと位置づけた李総理は、国際社会に向けて四つの優先分野を提示しました。
1.平和と共同安全保障
第一の柱は、平和と安全保障です。李総理は、すべての国が「同じ地球村」に暮らしており、安全保障でも相互依存しているとしたうえで、共通・総合・協調・持続可能な安全保障の理念を掲げました。
各国が正当な安全保障上の関心を尊重し、対話と協議によって紛争を解決すべきだと訴え、陣営対立や力による威圧は平和を遠ざけるだけだと強調しました。
中国は、国連平和維持予算への第2位の拠出国であり、安全保障理事会常任理事国の中では最大の平和維持要員派遣国であると紹介。ウクライナ危機やパレスチナ・イスラエル問題などの「ホットスポット」に対しても対話による解決を積極的に働きかけてきたと述べました。
さらに今年、中国が30を超える国々とともに国際調停機構を立ち上げたことに触れ、公平と正義の立場から、紛争の政治的解決に建設的な役割を果たし続けると表明しました。
2.開かれた協力と「ウィンウィン」の経済
第二の柱は、停滞する世界経済に対処するための協力の強化です。李総理は、関税引き上げや障壁の構築といった一方的措置や保護主義の高まりが、世界経済の不振の大きな要因になっていると指摘しました。
そのうえで、自国を孤立させるのではなく、開放と協力を通じて「すべての国に恩恵をもたらす包摂的な経済グローバル化」を進めるべきだと主張しました。
中国については、長年にわたり安定した成長を維持し、世界経済成長への貢献はおよそ3割に達してきたと説明。関税水準の引き下げや輸入拡大に取り組み、5GやAIなど先端技術の国際協力にも積極的に関与していると述べました。また、150を超える国々とともに一帯一路協力を進め、高品質な協力へと転換していると強調しました。
国内では、内需拡大や「新しい質の生産力」の育成に重点を置きつつ、高品質な発展を進めており、今後も世界経済に重要な支えを提供できると自信を示しました。
3.文明間対話と相互理解
第三の柱は、文明間の対話と交流です。李総理は、中国に伝わる「一つの花では春にならず、百花が咲いてこそ春が来る」という言葉を引用し、あらゆる文明には固有の価値と伝統があり、尊重されるべきだと述べました。
いわゆる「文明の優越性」への執着や、イデオロギーにもとづく排他的なグループ作りは、分断と対立を生むだけだとし、包摂的な姿勢での交流と相互学習こそが合意形成と協力を広げる道だとしました。
中国は長年、文明間の交流と相互学習を重視してきたとし、「調和ある共存」といった哲学が中国のDNAに深く根づいていると説明。自らのやり方を他国に押しつけることはないとしたうえで、今後5年間で、途上国との間で文化・文明分野の開発協力プロジェクトを50件実施し、テーマ別の研修やセミナーを200件開催する計画を明らかにしました。
4.気候変動とAIガバナンスで「共通の家」を守る
第四の柱は、気候変動や新技術のリスクへの対応です。李総理は、気候変動を人類共通の重大な課題と位置づけ、共通だが差異ある責任の原則のもとでパリ協定の実施を推進し、グリーン経済での国際協力を強化すべきだと述べました。
同時に、AIやネットワーク通信、バイオ製造などの先端技術は恩恵とともにリスクももたらすと指摘。人を中心に据え、テクノロジーを善のために用い、公平な利益配分を図るという原則を掲げ、関連するガバナンス(ルール作り)を加速させる必要があるとしました。
中国は、世界最大規模で成長速度も最も速い再生可能エネルギーシステムを構築し、新エネルギー産業チェーンも整備していると説明。2日前の国連気候サミットで、習近平国家主席が2035年までの新たな国別貢献目標(温室効果ガス排出削減目標)を発表したことに触れ、すべての経済部門と温室効果ガスを対象にした大きな一歩だと位置づけました。
また、中国がグローバルAIガバナンス・イニシアチブを提案し、世界AI協力機構の設立を提唱していること、さらに今回の総会の機会に、月探査機「嫦娥6号」が月の裏側から採取した月の土壌サンプルを国連に寄贈する計画を示しました。今後もサイバー安全、バイオ安全、宇宙空間などの分野で、各国との協力と国際ルール作りを進めていく姿勢を示しています。
国連と途上国へのコミットメント
演説の終盤で李総理は、中国が国連の権威と地位を守り、国連憲章の目的と原則を支持し続けると明言しました。あわせて、国連改革を通じて効率性と能力を高め、途上国の代表性と発言権を強化するべきだと述べました。
具体的な措置として、中国は国連と協力して「中国・国連グローバル南南協力ファシリティ」を設立し、1,000万ドルの予算支援を行うと表明。また、国連開発計画(UNDP)との連携で、上海にグローバルな持続可能な開発センターを設立し、国連の持続可能な開発のための2030アジェンダの実施を加速させる方針を示しました。
日本の読者にとっての読みどころ
今回の演説は、中国が国連中心の国際秩序や多国間主義を重視していることをあらためて示した内容でした。同時に、平和維持から経済協力、文明間対話、気候変動やAIガバナンスまで、中国がどのような役割を担おうとしているのかを知る手がかりにもなります。
日本やアジアに暮らす私たちにとって、次のような点が考える材料になりそうです。
- 安全保障で「共通・協調の安全」をどう実現していくのか
- 保護主義への懸念と、開かれた経済協力を両立させるには何が必要か
- 気候変動対策とAIガバナンスを、どのような国際ルールで支えていくのか
李総理は、歴史の大きな潮流は前に進み続けると述べました。国連創設から80年を迎えた今、各国がどのように責任を分かち合い、どのような未来像を描いていくのか。今回の国連総会での中国のメッセージは、その問いを投げかけるものとなっています。
Reference(s):
Full text: Address by Chinese premier at UN General Assembly
cgtn.com








