世界アルツハイマー月間に考える 中国で進む認知症対策と早期発見 video poster
毎年9月は世界アルツハイマー月間です。アルツハイマー病や認知症への理解を深めるこの国際キャンペーンのテーマは、2025年の今も世界共通の課題になっています。中国では、患者数の増加に対応するため、早期発見と予防を軸にした国家レベルの取り組みが進められています。
世界で増え続けるアルツハイマー病
アルツハイマー病(Alzheimer's disease)は、神経細胞が徐々に傷つき、記憶や思考、日常生活の能力が少しずつ失われていく神経変性疾患です。認知症の中で最も頻度が高く、世界保健機関(WHO)によると、2021年には世界で約5,700万人が認知症を抱え、そのうち60〜70%にアルツハイマー病が関わっているとされています。
病気はゆっくり進行しますが、一度始まると現時点で完全に治す方法はありません。そのため、どの国や地域でも「いかに早く気づき、進行を遅らせるか」が大きなテーマになっています。
早期発見がカギ 郭毅教授が語るポイント
中国・深圳湾実験室の郭毅(Guo Yi)教授であり、ユナイテッド・ファミリー病院のブレインヘルスプログラム主任専門家でもある郭氏は、インタビューの中で、早期のスクリーニングと危険因子の管理がアルツハイマー病予防の鍵になると強調しています。
とはいえ、通常の加齢による物忘れと、アルツハイマー病の初期症状を見分けるのは簡単ではありません。郭氏によれば、両者の違いは「進み方の速さ」にあります。年齢による自然な変化に比べて、アルツハイマー病では記憶や認知機能の低下がより速いペースで進むのが特徴だといいます。
郭氏は、「少しおかしいかな」と感じた段階で、できるだけ早く医療機関で検査を受けることを勧めています。特に、軽度認知障害(MCI)の段階で診断がつけば、介入の効果が最も期待できるタイミングだとしています。
早期受診のために意識したい3つの視点
- 物忘れや判断力の低下などが、これまでより速いペースで進んでいないか振り返る
- 気になる変化を、単なる「年のせい」と決めつけず、家族や周囲と共有する
- 軽度認知障害(MCI)の段階での診断・介入が重要だと知り、早めの検査を検討する
中国で進む認知症の国家行動計画
中国では、高齢化の進行に伴い、アルツハイマー病やその他の認知症の人が急速に増えています。2024年に公表された公式報告によると、アルツハイマー病を含む認知症の人の総数はすでに1,600万人を超えました。
こうした現状を受けて、中国は国家レベルの行動計画を加速させています。国家衛生健康委員会や国家発展改革委員会など15の機関が共同で打ち出したこの計画では、認知症に立ち向かうための7つの重点課題を掲げ、2030年までに達成すべき一連の目標を設定しています。
計画によれば、2030年までに予防、スクリーニング(検診)、診断、治療、リハビリテーション、介護を一体的につなぐ包括的で切れ目のない認知症の予防・管理システムを構築することが目指されています。地域の医療機関から専門病院、介護の現場までを結び、患者と家族を長期的に支える体制づくりが進められています。
高齢化社会で共有したい視点
アルツハイマー病や認知症は、特定の国だけの問題ではありません。誰もが年を重ねるなかで向き合う可能性のあるテーマであり、家族や職場、地域社会のあり方とも深く結びついています。
中国が進めるような、予防からケアまでを長期的に見通した取り組みは、高齢化社会にあるどの国や地域にとっても参考になる視点を含んでいます。制度づくりと同時に、一人ひとりが認知症について学び、偏見をなくしていくことも重要です。
私たちにできることは、決して特別なことだけではありません。むしろ、身近な人の変化に耳を傾け、気になるサインがあれば早めに相談につなげる姿勢こそが、社会全体の「認知症に優しい環境」をつくっていきます。
- 家族や友人と、アルツハイマー病や認知症について話題にしてみる
- 「最近物忘れが増えた」と感じる人がいたら、「一度病院で相談してみない?」と優しく声をかける
- 9月の世界アルツハイマー月間など、啓発の機会に情報をアップデートする
2025年のいま、アルツハイマー病に対する根本的な治療法の確立にはまだ時間がかかりますが、早期発見と予防、そして社会全体で支える仕組みづくりはすでに動き始めています。中国で進む国家行動計画は、その一つの例です。ニュースをきっかけに、自分と身近な人の脳の健康について考える時間を持ってみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
Health Talk | Mindful care: Navigating Alzheimer's with love
cgtn.com








