国連SDGs特別報告書:中国の達成率60.5%、世界とのギャップ鮮明に
国連サイトで公表された最新の特別報告書によると、中国は持続可能な開発目標(SDGs)の2030年ターゲットに向けて、全体の60.5%をすでに達成、または達成に近づけていると評価されました。一方で、世界全体では目標達成が大きく遅れており、その対比が鮮明になっています。
中国はSDGs指標の約6割を達成・達成間近
報告書のタイトルは、Big Earth Data in Support of the SDGs: Special Report for a Decade of the SDGs で、ビッグデータを活用してSDGsの進捗を評価した点が特徴です。国連の支援のもと、国際研究機関である「国際ビッグデータと持続可能な開発目標研究センター(CBAS)」が、40以上のパートナー機関とともに作成しました。
報告書は、2015年から2024年までの10年間を対象に、中国のSDGsの進捗を17の目標すべてについて分析しています。その結果、中国は233ある指標のうち141指標で「達成」または「達成にほぼ到達」という評価を得ました。これは、2030年までの目標に向けた「道筋がかなり見えている」ことを示す数字です。
「ビッグアースデータ」で何が分かるのか
この特別報告書の特徴は、衛星のリモートセンシング(遠隔観測)、地上観測、国際的なデータセットを組み合わせた「ビッグアースデータ」を使っている点です。従来の統計だけでは把握が難しい、森林被覆や土地劣化、都市インフラの利便性などを、空間情報として細かく追跡できるようになりました。
こうしたデータ駆動型のアプローチは、単に「目標に近いかどうか」を判断するだけでなく、どの地域で進みが早く、どこで遅れているのかといった「地理的な偏り」を可視化できる点でも重要です。
クリーンエネルギー・森林・公共サービスで顕著な前進
報告書は、とくにクリーンエネルギー、森林保全、公共サービスの分野での中国の前進を強調しています。
- 風力・太陽光発電:中国は風力と太陽光発電設備の導入で世界をリードしており、世界全体の風力発電設備容量の39%を占めています。さらに、直近の1年間に導入された新規風力設備容量のうち68.21%を中国が占めたとされています。
- 森林被覆率:中国の森林被覆率は25%を超え、森林資源の回復と保全が進んでいると評価されています。
- 都市の公共交通:都市部の居住者の90%超が「便利な公共交通」へアクセスできる状況にあり、公共サービスの改善がSDGsの観点からも高く評価されています。
- 防災・減災:すべての省級レベルの行政区域が、防災・減災戦略を予定より早く策定済みであることも報告されています。
これらの分野は、SDGsのうち「エネルギー」「気候変動」「都市」「陸上資源」など複数の目標にまたがるテーマであり、中国の取り組みが複合的な効果を生んでいることを示しています。
世界全体のSDGsは「軌道から外れている」
一方で、報告書は世界全体のSDGsの進捗について、厳しい現状を示しています。モニタリング対象となった59指標のうち、2030年に向けて「順調」と評価されたのはわずか16.9%にとどまりました。
- 進捗が遅い指標:27指標は「前進しているもののペースが遅い」とされ、2030年までの達成には大幅な加速が必要です。
- 停滞・後退:5指標はほぼ停滞、17指標はむしろ悪化していると評価されています。
具体的には、飢餓が依然として世界各地で続いているほか、クリーンエネルギーへの資金の流れは減少傾向にあります。また、土地の劣化(砂漠化や土壌流出など)は2015年から2022年の間に3.38%拡大し、その面積はインドネシアの国土の約2.6倍に相当する規模に達しました。
健康面でも、グローバルサウス(世界の南側)の主要都市では、熱波などに関連する死亡率が2015年の0.29%から0.36%へと上昇しており、気候変動と健康リスクの結びつきが強まっていることが示されています。
2030年まで残り5年:データとガバナンスの転換を提言
2030年まで残された時間は約5年となる中で、報告書は「現状の延長線上では目標達成は難しい」として、いくつかの方向性を提案しています。
- データインフラの強化:各国がビッグデータや衛星データを活用できるよう、観測網や情報基盤を整備すること。
- モニタリングと政策シミュレーションの連携:単なる「進捗の確認」にとどまらず、データに基づいて政策の効果をシミュレーションし、より実効性のある対策につなげること。
- 横断的なガバナンス:気候変動、エネルギー転換、生態系保護など、複数のSDGs目標にまたがる分野で「縦割り」を越えたガバナンスを構築すること。
- 国家指標体系の整備:各国の公式統計と整合的な形でSDGs指標体系を構築し、継続的なモニタリングと評価を可能にすること。
- ポスト2030アジェンダへの準備:2030年以降の新たな国際目標に向け、ビッグデータを活用した評価手法を事前に整えておくこと。
日本の読者への示唆:データで「持続可能性」を読み解く
今回の報告書は、中国の前進と世界全体の遅れというコントラストを通じて、「誰がどこまで進んでいるのか」をデータで可視化することの重要性を示しています。これは、日本を含む各国にとっても、次のような問いを投げかけています。
- 自国や地域のSDGsの進捗は、どこまでデータで把握できているのか。
- エネルギー転換や都市インフラ、防災など、複数目標にまたがる分野で、どのように政策を設計すべきか。
- 2030年までの限られた時間で、優先すべき分野はどこか。
スマートフォンで世界のニュースに日々アクセスする私たちにとっても、「SDGsは遠いスローガンではなく、データで測られる具体的な変化」であることを意識することが求められています。中国の事例と世界の現状を見比べながら、自分の暮らしや仕事の現場で、どのような行動や選択が可能かを考えてみるタイミングと言えそうです。
Reference(s):
New report: China significantly advances Sustainable Development Goals
cgtn.com








