シティバンク元副社長が語るAI時代:鍵は「信頼」とガバナンス video poster
人工知能(AI)は電気の発明に匹敵するほどの大きな変革であり、その潜在力を引き出す鍵は社会からの「信頼」だ――シティバンク元副社長のエドガー・ペレス氏は、2025年に放送された中国国際テレビ(CGTN)の特別番組「Embrace the AI era: Global Governance Initiative in action」でこう強調しました。
AIは「電気」に匹敵する変革
ペレス氏は番組の中で、AIがもたらす変化は「電気の発明」に匹敵すると位置づけました。電気が産業、生活、都市の在り方そのものを塗り替えたように、AIもまた、経済や社会のあらゆる領域を作り替える可能性があるという見方です。
現在、AIの応用は金融、医療、製造業、教育、メディアなど、多くの分野で一気に広がりつつあります。生成AIや自動化技術が話題になる一方で、その使い方やルールづくりをめぐる議論も加速しています。ペレス氏の発言は、こうした世界的な流れの中で、AIをどう受け止めるべきかを考える重要なヒントになります。
鍵となるのは「信頼」:透明性・説明責任・公平性
ペレス氏が最も強調したのは、「信頼」を守るための具体的な条件です。同氏は次の3つを挙げました。
- 透明性(どういう仕組みでAIが判断しているのかを分かりやすくすること)
- 説明責任(結果に問題があったとき、誰がどのように責任を負うかを明確にすること)
- 公平性(特定の人や集団を不当に不利にしないこと)
ペレス氏は「透明性・説明責任・公平性を確保しなければ、人々の信頼を壊してしまう危険がある」と警鐘を鳴らしました。逆にいえば、これらの原則を守ることで初めて、AIは社会に幅広い利益をもたらすことができるという考え方です。
信頼がなければ、AIの潜在力は開かれない
番組の中でペレス氏は、AIが「経済のあらゆるセクターを変革する潜在力」を持っている一方で、その力が本当に生かされるかどうかは人々の信頼にかかっていると指摘しました。
例えば、次のような場面を考えることができます。
- 金融サービスでAIが与信や投資判断を支援するとき、そのプロセスが不透明だと、利用者は不安を感じます。
- 医療現場でAIが診断を補助するとしても、なぜその診断に至ったのか説明できなければ、医師も患者も安心して使えません。
- 採用や評価にAIを用いる場合、特定の性別や年齢、出身などに偏った結果を生むと、組織全体への不信感につながります。
こうした不信が広がれば、AIの導入そのものが遅れたり、社会的な反発によって有望な技術が十分に活用されなかったりする可能性があります。ペレス氏のメッセージは、技術の進歩そのものよりも、それを支える「制度」と「信頼」の設計こそが重要だという点にあります。
グローバル・ガバナンスとしてのAIルールづくり
番組タイトルにもある「Global Governance Initiative(グローバル・ガバナンス・イニシアチブ)」という言葉が示すように、AIのルールづくりは一国だけでは完結しないテーマになりつつあります。
データは国境を越えて流れ、AIのサービスはオンライン経由で世界中の人々が利用します。そのため、どの国・どの地域でも最低限守るべき原則として、透明性・説明責任・公平性といった価値を共有できるかどうかが問われています。
ペレス氏の発言は、単に一企業のビジネス戦略ではなく、各国の政府機関や国際機関、企業、研究者、市民社会が一体となってAIのガバナンス(統治・ルール形成)に取り組む必要性を示唆するものと言えます。
読者が押さえておきたい3つの視点
AI時代を生きる私たち一人ひとりにとって、ペレス氏のメッセージは次のような問いかけとして受け取ることができます。
- どのAIサービスを信頼するのか
利用しているアプリやサービスが、どのようなデータを使い、どんな目的でAIを活用しているのかを意識することが出発点になります。 - トラブルが起きたとき、誰が説明するのか
「AIが決めたから仕方ない」で終わらせず、最終的な説明責任を誰が負うのかを確認する視点が重要です。 - 自分や周囲が不当に扱われていないか
AIの判断が、特定の属性を理由に不利な結果を生んでいないかどうかに敏感であることも、社会全体の公平性を守る一歩になります。
AIの議論は、ともすると高度な技術論や専門用語の世界に閉じこもりがちです。しかし、ペレス氏が示した「信頼」というキーワードは、日常生活に直結する、ごく身近な感覚からも考えられるテーマです。
「読みやすいのに考えさせられる」AIニュースとして
今回紹介した発言は、AIをめぐる国際ニュースの一場面に過ぎませんが、「技術の進歩」と「社会の信頼」をどう両立させるかという問いは、2025年の今、世界共通の課題になりつつあります。
AIは便利さや効率だけでなく、公平さや安心感も同時に提供できるのか。私たちはどこまでAIに任せ、どこから人が責任を負うべきなのか。こうした問いを考えるきっかけとして、ペレス氏のメッセージを受け止めてみる価値は大きいと言えるでしょう。
Reference(s):
Former Citibank VP: Building trust is key to unlocking AI's potential
cgtn.com








