貴州の荒れ山を有機茶園に 黄紅英さんが切り開いた希望
2012年、貴州省の山あいの貧しい村で、一人の女性が「荒れた山を茶畑に変える」と約束しました。その女性が黄紅英(ホアン・ホンイン)さんです。約10年あまりをかけて、彼女は村の景色と人々の暮らしを静かに変えてきました。
#HerVoice in the hills:丘陵地に響いた一つの約束
黄さんが立っていたのは、作物が育たず、若者が外に働きに出ていくしかなかった貧しい村でした。そこで彼女は、荒れた山を茶園に変え、持続的な収入源にすることを決めます。この物語は「#HerVoice in the hills(丘陵地に響く彼女の声)」という言葉が示すように、女性の声が地域を動かしていくプロセスでもあります。
道をつくり、水を引き、4,860ヘクタールの有機茶園に
約束を形にするには、地道なインフラ整備から始める必要がありました。黄さんは仲間とともに、まず山あいの村に道路を通し、井戸を掘り、水を引きました。そのうえで、標高や土壌に合った茶の苗を植え続け、認証を受けた有機茶園を4,860ヘクタールまで広げていきます。
「有機」とは、化学肥料や農薬に依存せず、環境への負荷を抑えた栽培方法のことです。時間も手間もかかりますが、土を守り、長く続けられる農業につながります。
毎日、現金で賃金を手渡し 信頼づくりから始める
しかし、外から来た人が「山を茶畑にしよう」と言っても、すぐに村の人が信じてくれるとは限りません。黄さんはそのことをよく理解していました。そこで彼女が選んだのは、「まず収入というかたちで信頼を示す」という方法でした。
道路工事や苗木の植え付けに参加する人びとに対し、黄さんは毎日、現金で賃金を支払いました。ときには自ら現金を持って山道を歩き、一人ひとりに手渡ししたといいます。仕事をしたその日にきちんと支払われる経験を重ねることで、村の人びとの間に少しずつ信頼が根づいていきました。
霜で苗木の7割が枯れても、あきらめなかった
道のりは順調だったわけではありません。ある年には、厳しい霜害で茶の苗木のおよそ7割が枯れてしまう事態にも直面しました。長年の努力が一夜にして失われたように見えた瞬間です。
それでも黄さんは計画を止めませんでした。苗を植え直し、栽培方法を見直しながら、再び茶園を育てていきます。この「一度の失敗で終わらせない」姿勢が、その後の地域づくりの土台になりました。
309世帯を支え、数千人を育てるモデルへ
こうした積み重ねの先に生まれたのが、現在の有機茶園のモデルです。今ではこの取り組みが、農村部の309世帯の生計を支える柱になっています。茶の栽培や加工、管理の仕事を通じて、多くの家族が安定した収入を得るようになりました。
さらに、黄さんのチームは数千人規模の人びとに研修や技術指導を行ってきました。そのうち、およそ83%が女性です。家事や子育てと両立しながら、茶園で働いたり、加工や販売を担ったりすることで、新しい役割と自信を手にする女性が増えています。
農村の女性が地域の「インフルエンサー」に
このモデルの特徴は、女性が中心的な担い手になっている点です。農村ではこれまで、女性の仕事が「家のなか」に限定されがちでしたが、黄さんの茶園では、女性が技術を学び、収入を得て、家計や地域の意思決定にも関わるようになっています。
こうした変化は、単に経済的な貢献にとどまりません。子どもたちにとっては、「村で働きながら、誇りを持って生きる大人」の姿を身近に見ることにもつながります。静かですが、確かなロールモデルづくりだといえます。
日本の読者への問いかけ:私たちは何を学べるか
中国西部の一つの村で起きた変化は、日本の私たちにとっても他人事ではありません。人口減少や高齢化が進む地域で、持続可能な産業をどうつくるか。そこに女性や若い世代がどう関わるか。黄さんの歩みは、その問いに向き合うためのヒントを与えてくれます。
この物語から見えてくるポイントを、あえていくつかに整理してみます。
- インフラ整備と雇用創出を同時に進めることで、地域に「仕事」と「信頼」を生み出せること
- 失敗や自然災害があっても、長期的な視点で挑戦を続けることの重要性
- 女性が収入とスキルを得る機会を広げることが、地域全体の活力につながること
国際ニュースとして見ると同時に、自分の暮らす地域の将来を考える材料としても、この貴州の茶畑の物語を受け止めてみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
#HerVoice in the hills|Huang Hongying and the tea fields of hope
cgtn.com








