人工の花工房から400人の雇用へ ヤン・シューティンの挑戦
交通事故で胸から下がまひしながらも、人工の花づくりを通じて地域に400人以上の雇用を生み出した若い起業家がいます。中国・湖南のヤン・シューティンさんの物語は、障害と地方、そして女性の働き方を考えるヒントを与えてくれます。
20歳の誕生日は手術台の上で
2011年、ヤンさんは若い看護師として働き始めたばかりでした。ある日、交通事故に遭い、胸から下がまひする重傷を負います。20歳の誕生日を迎えたのは、病院の手術台の上でした。
突然、身体の自由と、それまで思い描いていた将来のキャリアを失うことになったヤンさん。しかし、その後の選択が、本人だけでなく地域の人々の暮らしをも変えていきます。
7・7元から生まれた人工の花工房
事故から4年後、ヤンさんは家族とともに小さな人工の花の工房を立ち上げます。ベッドに近い場所でできる仕事を模索するなかで見つけたのが、手仕事による造花の制作でした。
最初の売り上げは7・7元。決して大きな金額ではありませんが、ヤンさんにとっては、新しい人生が動き出した証でもありました。この数字にちなんで、会社の名前はQiqi Techとなります。中国語で七を意味する発音「qī」から取ったものです。
輸出で世界へ広がったビジネス
小さな工房から始まった人工の花づくりは、やがて海外市場にも広がっていきます。2017年には、人工の花製品が海外へ輸出され、その年の輸出額は4200万元に達しました。
病室から始まった仕事が国境を越えていく。そのプロセスには、多くの試行錯誤や学びがあったはずですが、数字が物語るのは、ヤンさんと家族がコツコツと積み上げてきた時間の重みです。
2020年、輸出から国内市場へ舵を切る
2020年、ヤンさんはビジネスの軸足を輸出から国内販売へと移します。これまで海外に届けてきた人工の花を、今度は国内の消費者に届ける方向へとシフトしたのです。
同時に、湖南の農村地域にサテライト型の組立拠点を整備していきます。中心となる工房だけでなく、地域に点在する拠点で花の組立作業を行うことで、より多くの人が仕事に参加できる仕組みをつくりました。
湖南の農村に広がる30カ所超の拠点
現在、湖南の農村には30カ所を超えるサテライト組立拠点が設けられています。そこで働くのは400人を超える地元の人々で、その多くが女性です。
彼らは人工の花の制作を通じて、毎月安定した収入を得ています。通勤時間や移動の負担が少ない形で仕事にアクセスできることは、農村地域に暮らす人たちにとって大きな意味を持ちます。
- 拠点は湖南の農村部に30カ所以上
- 働く人は400人超で、多くが女性
- 継続的な仕事として毎月の収入を確保
#HerVoice in Bloom 花とともに広がる女性たちの声
このストーリーには、ハッシュタグHerVoice in Bloomという言葉が添えられています。花が咲くように、ひとりの女性の声と可能性が広がっていく。その過程で、地域の女性たちの働き方もまた、少しずつ変わり始めています。
ヤンさんの歩みは、こうした問いを私たちに投げかけます。
- 身体的な制約があっても、自分の強みを生かせる仕事の形はつくれないか
- 地方に暮らす人々が、場所に縛られず収入を得る仕組みをどう広げていくか
- 女性が安定した収入とやりがいのある仕事を得るために、地域で何ができるか
事故によりキャリアの途を断たれた看護師が、人工の花を通じて地域に新しい仕事を生み出す起業家へと歩みを進めてきたこと。その背景にあるのは、諦めずに手を動かし続けてきた年月と、家族や地域の人々との協力です。
日々のニュースに追われがちな私たちにとっても、ひとつの数字や小さな一歩が、やがて大きな変化につながることを思い出させてくれる物語と言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








