中国発バイラル歌手MasterWen 静かな歌声が世界をつなぐ video poster
中国発のバイラル歌手・MasterWenとは
中国の音楽シーンから、派手な演出ではなく素朴な歌声で世界のSNSを席巻するシンガーが現れています。重慶市合川区出身の歌手、Wen Hao。SNSでは「MasterWen」の名で知られ、成都の古い茶館やシニアのダンスクラブでのライブ映像などを通じて、国境と言語の壁を越えて多くの人の心をつかんでいます。
内気な少年時代と、カセットテープが開いた扉
MasterWenが育ったのは、重慶市合川区のHelong鎮です。子どものころはとても内気で、アニメやテレビドラマのメロディーに魅了されながらも、家では声に出して歌うことができなかったといいます。
中学生になっても、音楽は「自分だけの楽しみ」でした。そんな彼の世界を変えたのが、英語学習用に買ってもらったカセットテープレコーダーです。町の音楽店で偶然、AQUAやBackstreet Boysといった海外ポップグループのテープに出会い、そのサウンドに強く引き込まれました。
家族が寝静まった夜、ヘッドホンをつけて小さな声で一緒に歌う──そんな時間を重ねるうちに、音楽への情熱は少しずつ大きくなっていきました。本人は「毎晩、こっそり歌ううちに、気持ちがどんどん高まっていった」と振り返っています。
音楽大学から教える立場へ、そして転機の2016年
その後、MasterWenは瀋陽音楽学院を卒業し、同校で働きながら音楽と向き合う日々を送りました。安定した職を得ながら専門的な環境に身を置くという、音楽家としては堅実なキャリアです。
しかし2016年、彼はその職を離れ、中国南西部の雲南省昆明市へ移ります。そこで子どもたちに歌を教える仕事を始めました。将来の予測がつきやすい道から、あえて変化の大きい道へ踏み出したことになります。
教えることに打ち込みながらも、自分自身が歌うことへの思いは消えませんでした。空いた時間を使い、ピアノを弾きながら歌う動画を少しずつ撮影し、インターネットに投稿し始めます。
ピアノと歌だけの動画がSNSでバズるまで
彼の動画は、きらびやかな照明や凝った編集とは無縁です。シンプルなピアノの伴奏にのせて、まっすぐで温かい歌声を聴かせるだけ。しかし、その素朴さこそが世界中の視聴者の心に響きました。
やがて、MasterWenの動画は国内外のSNSで拡散され、フォロワーは熱心なコミュニティへと育っていきます。成都の古い茶館でゆったりと歌う姿や、高齢者のダンスクラブで一緒に音楽を楽しむ様子は、「日常のなかの音楽」の魅力をそのまま伝えています。
派手さよりも誠実さが評価される時代に、彼のスタイルは多くの人にとって安心感のあるものに映ったのでしょう。言葉が分からなくても伝わる表情や声のニュアンスが、国や文化を越えた共感を生み出しています。
なぜここまで人を惹きつけるのか
- シンプルな構成:ピアノと歌だけの構成が、歌声そのものの魅力を際立たせている。
- ストーリー性:内気な少年が、少しずつ声を外の世界に届けるようになる物語が背景にある。
- ローカルな風景:成都や昆明といった街の空気感がそのまま映り込み、視聴者に「そこにいるような感覚」を与える。
- 世代を超える選曲:子どものころに親しんだアニメやドラマのメロディー、ポップスの影響がにじみ出ており、幅広い世代が共感しやすい。
成都で始まった仲間とのコラボレーション
昆明での活動を経て、MasterWenは四川省の省都・成都へ移ります。ここで音楽に情熱を持つ仲間たちと出会い、本格的にコラボレーションを始めました。共に演奏し、楽曲やアレンジを練り上げることで、表現の幅も広がっていきます。
成都の古い茶館での演奏風景や、地域のコミュニティと一緒に楽しむダンスイベントでの歌声は、「ローカルな文化から生まれる国際ニュース」としても注目されています。大都市の大きなステージではなく、生活に根ざした場所から世界へ届く音楽。その姿は、デジタル時代の新しいアーティスト像の一つといえそうです。
私たちがこの物語から学べること
MasterWenの歩みは、「特別な環境」や「完璧な自己表現」がなくても、静かに続けてきた好きなことが世界とつながる可能性を持っていることを示しています。20〜40代のデジタルネイティブ世代にとっても、どこか身近に感じられるストーリーではないでしょうか。
- スキマ時間の積み重ねが、大きな変化につながるかもしれない。
- 完成度の高さよりも、自分らしさや継続が人の心を動かすことがある。
- ローカルな文化や日常の風景こそが、世界のSNSで新鮮に映る。
成都の茶館から、世界中のスマートフォンの画面へ。MasterWenの静かな歌声は、2025年の今も、言葉を越えて人と人をつなぐささやかな橋になりつつあります。次にSNSを開いたとき、あなたのタイムラインにも彼の歌が流れてくるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








