中国で子どもと高齢者の福祉が大幅拡充 第14次五カ年計画期の成果
中国で、子どもと高齢者を対象とした福祉制度がこの数年で大きく拡充しています。第14次五カ年計画(2021〜2025年)の期間を通じて進められてきた取り組みについて、中国の民政相Lu Zhiyuan氏が記者会見で説明しました。
第14次五カ年計画期に福祉が大きく前進
Lu氏によると、現在進行中の第14次五カ年計画(2021〜2025年)の期間に、中国では子どもと高齢者の福祉分野で「顕著な改善」があったとされています。とくに、支援が必要な子どもへの包括的な保護・ケア体制と、高齢者の生活を支える地域インフラの整備が進んだことが強調されました。
要保護児童を包括的に支える新たな仕組み
子どもの分野では、支援を必要とする子どもを幅広くカバーする保護・ケア制度が整えられました。Lu氏は、次の3つのグループが制度の対象として明確に含まれるようになったと説明しています。
- de facto unattended children(実質的に保護者がいない子ども)
両親がいずれも行方不明、重度の障がい、重い病気、服役、国外退去、強制的な薬物リハビリなどの事情で、日常的な養育を受けられない子どもを指します。 - left-behind children(いわゆる留守児童)
親が遠方で働いているため、地元に残されて暮らす子どもたちです。 - 移住して暮らす子ども(migrant children)
家族とともに他地域へ移動して暮らす子どもが、保護・ケアサービスの範囲に含まれました。
これらの子どもたちは、いずれも家庭環境の不安定さやケアの不足が問題になりやすい層です。Lu氏は、こうした子ども全てが、国家の保護・ケアサービスの対象となる包括的な枠組みの中に位置付けられたと述べました。
孤児・要保護児童の生活費が3割前後増加
支援の対象を広げるだけでなく、実際の生活支援額も引き上げられています。2020年と比べて、次のように基礎的な生活手当が増額されたと報告されています。
- 福祉施設で暮らす孤児:26%増
- 家庭で暮らす孤児:32%増
- de facto unattended children:31%増
これにより、経済的な理由で生活が不安定になりやすい子どもたちに対する公的支援の水準が、全体として底上げされた形となります。数字の上でも、子どもの生活を守る方向へ政策の重点が移っていることがうかがえます。
高齢者の暮らしを支える住宅改修とコミュニティ
高齢者分野では、住まいと地域コミュニティの両面で支援が強化されています。Lu氏によれば、特に困難を抱える高齢者世帯を対象に、224万世帯で住宅の改修や高齢者に優しい設備への更新が行われました。
段差の解消や設備の改善など具体的な内容は一つひとつの家庭で異なりますが、「高齢者が安全かつ暮らしやすい環境を整える」という方向性で、住宅環境の見直しが進められた形です。
地域を基盤にした高齢者ケアのネットワーク
住まいの中だけでなく、地域全体で高齢者を支える枠組みも整備されています。民政当局は、次のようなコミュニティ基盤の仕組みを整えたとしています。
- モデル的な地域密着型の高齢者ケアネットワーク:500カ所
- 高齢者に優しいモデルコミュニティ:2,990カ所
- 高齢者向けのコミュニティ食堂:8万6,000カ所
こうしたネットワークや施設の整備は、高齢者が大規模な施設に入所する前に、身近なコミュニティの中で見守りやサービスを受けられるようにするものとみられます。日常の食事の場であるコミュニティ食堂の存在は、栄養面のサポートだけでなく、孤立の防止にもつながりやすい取り組みと言えるでしょう。
約4,940万人の高齢者が給付の対象に
経済的な支援も拡充されています。Lu氏は、高齢者向けの各種補助金や手当が4,940万人以上に行き渡っていると説明しました。
対象となっているのは、とくに次のような高齢者たちです。
- 非常に高い年齢に達した高齢者
- 経済的に困難な状況にある高齢者
- 障がいのある高齢者
年齢、所得、健康状態といったさまざまな側面から支援対象を設計することで、多様なニーズを持つ高齢者それぞれに対し、一定の公的支えを用意しようとする姿勢がうかがえます。
数字から見える中国の福祉政策の方向性
第14次五カ年計画(2021〜2025年)は、2025年末に向けて終盤に入っています。その期間に示された今回の数字からは、中国の福祉政策について、いくつかの特徴的な方向性を読み取ることができます。
- 脆弱な立場にある層への集中支援
実質的に保護者がいない子どもや、経済的・健康面で困難を抱える高齢者など、特に脆弱な立場に置かれやすい人々を明確に対象に据えている点が目立ちます。 - 現金給付とサービス整備の両立
生活手当の増額と、住宅改修やコミュニティ食堂の設置といった「モノ・サービス」の整備が同時に進められていることが特徴です。 - 施設中心から地域・家庭重視へ
地域基盤のケアネットワークや高齢者に優しいコミュニティといった取り組みは、家庭や地域の中で暮らしを支える方向を重視する姿勢を示しています。
日本の読者にとっての読みどころ
日本でも、子どもの貧困対策や高齢者の生活支援は大きな社会課題として語られています。他国の具体的な数字や制度の方向性を知ることは、自国の制度や地域のあり方を考える上での参考材料にもなります。
今回示されたのは、中国の一部の側面にすぎませんが、
- どの層を「重点的に守る対象」と位置付けるのか
- 現金給付とサービス提供をどう組み合わせるのか
- コミュニティの役割をどこまで広げるのか
といった問いを、日本の私たち自身の暮らしに引き寄せて考えるきっかけにもなりそうです。
国や制度の違いを前提にしつつ、こうした国際ニュースを手掛かりに、「自分たちの社会でどんな支え合いが必要か」を静かに考えてみるタイミングかもしれません。
Reference(s):
China reports major improvements in welfare for children and elderly
cgtn.com








