中国本土の全国メンタルヘルスホットライン「12356」 心のSOSに24時間対応 video poster
心の声に耳を傾ける全国ホットライン「12356」とは
2025年1月1日、中国本土で全国共通のメンタルヘルス支援ホットライン「12356」が開設されました。中国国家衛生健康委員会(NHC)が運営し、心の不調を抱える人に対して、タイムリーな心理的支援や危機介入を提供することを目的としています。2025年12月現在、開始から約11か月が経ち、このホットラインはメンタルヘルス政策の重要な柱の一つとなりつつあります。
この記事のポイント
- 2025年に中国本土で全国共通のメンタルヘルスホットライン「12356」がスタート
- 同年5月1日までに31の省・自治区・直轄市すべてで導入され、累計50万件以上の相談に対応
- 若者の学業・仕事のプレッシャーから、高齢者の孤独、子どもの心の悩みまで幅広くカバー
- 「助けを求めることは弱さではない」というメッセージを社会に広げる役割も担う
2025〜2027年は「小児・メンタルヘルスサービスの年」
NHCは2025〜2027年を「小児・メンタルヘルスサービスの年」と位置づけ、3年間にわたり心のケア体制を重点的に整備しています。その中核となる施策の一つが、全国で統一番号「12356」を使うホットライン網の構築です。
12356は2025年1月1日にサービスを開始し、同年5月1日までに中国本土の31省・自治区・直轄市すべてで運用が始まりました。現在はどの地域からでも同じ番号に電話をかけることで、地域の相談窓口につながる仕組みになっています。
11か月で50万件超 数字が示すニーズの大きさ
中国青年報によると、開設以来、ホットライン12356には50万件を超える電話が寄せられています。短期間でこれだけの相談が集まっていることは、心の不調を抱えながらも支援を必要としている人が多いことを示しています。
電話相談は、直接対面で話すことに抵抗を感じる人や、近くに相談機関がない地域の人にとってもアクセスしやすい窓口です。匿名で利用できる点も、心理的なハードルを下げる一因になっています。
北京の現場から見える「不安」と「孤独」
北京では、訓練を受けたオペレーターがシフト制で勤務し、24時間体制で電話を受けています。首都医科大学附属北京安定医院の心理療法士であり、ホットラインの夜間オペレーターも務める邵肖(Shao Xiao)さんは、日々の対応を通じて、さまざまな世代の心の葛藤に向き合っています。
邵さんによると、ホットラインへの電話の多くは、うつや不安に関するものです。背景には、ライフステージごとに異なる悩みがあります。
- 受験や進学、就職、職場のプレッシャーに追い詰められそうな若者
- 孤独感や健康不安、家族との関係などに悩む高齢者
- 子どもの気分の落ち込みや行動の変化を心配する保護者
相談員は、まずはじっくりと話を聴きながら、感情の整理を手伝い、危機的な状況かどうかを見極めます。そのうえで、必要に応じて医療機関や地域の支援につなぐ役割も担っています。
WHOの推計が示すメンタルヘルス課題の広がり
世界保健機関(WHO)の推計によると、中国本土では約5,400万人がうつ病、約4,100万人が不安障害を抱えているとされています。人口約14億人という規模を考えても、決して小さくない人数です。
こうした背景のもとで、全国規模のホットラインを整備し、必要な人に支援を届けようとする取り組みは、メンタルヘルス政策の重要な一歩といえます。
「助けを求めること」は弱さではなく一歩目
12356のようなメンタルヘルスホットラインは、単に危機介入や情報提供を行うだけでなく、「支援を求めることは弱さではない」というメッセージを社会に広げる役割も持っています。
気分の落ち込みや不安、孤独を感じても、「この程度で相談していいのだろうか」とためらってしまう人は少なくありません。匿名で利用できる電話窓口は、そうしたためらいを乗り越えるための、一番手前のドアのような存在になり得ます。
世界メンタルヘルスデーと12356のこれから
10月10日は、WHOが定める世界メンタルヘルスデーです。世界的にメンタルヘルスへの理解と支援を広げることを目的とした日であり、2025年も各地で啓発の取り組みが行われました。
中国本土では、まさに「小児・メンタルヘルスサービスの年」の初年度の中でこの日を迎えました。2027年まで続く取り組みの中で、ホットライン12356がどこまで地域社会に根付き、より多くの人が「話してみよう」と思える環境をつくれるかが、今後の重要なポイントになりそうです。
ニュースから自分たちの社会を考える
中国本土の事例は、「心の不調を抱えたとき、最初にアクセスできる窓口をどう用意するか」という問いを投げかけています。これは国や地域を問わず、多くの社会が向き合っている課題でもあります。
- 自分や身近な人がつらくなったとき、すぐに相談できる相手や窓口はあるか
- 学校や職場は、メンタルヘルスの悩みを話しやすい雰囲気になっているか
- 「助けを求めること」を肯定的に捉える文化をどう育てていくか
こうした問いを、自分が暮らすコミュニティや身の回りの環境に引き寄せて考えてみることで、国際ニュースが少し身近な話題として感じられるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








