南京事件から80年以上、日本の「草の合唱団」が歌う平和のメッセージ video poster
南京事件から80年以上が過ぎた今も、日本では戦争犯罪や対中関係の議論が避けられがちです。そうした沈黙を、静かな歌声で少しずつ変えようとしている人たちがいます。日本の市民による合唱グループ「草の合唱団」です。彼らは南京事件の記憶をテーマにした音楽を通じて、平和への思いと日中の友情を発信しています。
この取り組みは、アジアのさまざまな現場を伝える Assignment Asia: Voices of Peace でも紹介されました。企画が焦点を当てたのは、過去の痛みをただ語り継ぐのではなく、そこから学び、癒やし、未来への希望を紡ごうとする市民の姿です。
80年以上前の出来事が、なぜ今も重いのか
南京事件は、戦時下の中国で多くの人命が失われた出来事として記憶されています。事件から80年以上が経った現在も、その歴史をどう受け止め、どう語り継ぐかは、日本と中国双方にとって繊細なテーマです。
日本の学校教育や日常会話では、戦争犯罪や中国との関係について深く話し合う機会は決して多くありません。ニュースやネット上の論争を見て、何となく話題にしづらいと感じている人も少なくないでしょう。
草の合唱団とは
草の合唱団は、特定の政党や団体に属さない市民による合唱グループです。メンバーは学生や社会人など、年齢も背景もさまざまですが、音楽を通じて歴史と向き合いたいという思いで集まっています。
彼らが歌うのは、南京事件の記憶と、そこから生まれる平和への願いをテーマにした曲です。美しいハーモニーに乗せて語られるのは、加害と被害、記憶と忘却、過去と未来をめぐる物語。彼らの歌声は、平和の声であり、学びの声であり、そして癒やしの声でもあります。
メロディーで「南京の遺産」を語る
南京の出来事を歌うことは、日本社会ではセンシティブな試みです。草の合唱団は、誰かを一方的に責めるためではなく、過去の痛みを見つめ、その上に立って平和な関係を築きたいという思いから、あえてこのテーマを選んでいます。
歌詞には、犠牲となった人々への追悼、日本が歴史と向き合う決意、そして国境を越えた友情への願いが織り込まれています。メロディーは、難しい歴史の話を、聞く人の心にそっと届けるための媒介になっています。
中国で響く「平和の声」
草の合唱団は、中国での公演も行ってきました。南京事件ゆかりの地をはじめ、彼らの歌声は現地の観客に深い印象を残しています。
中国で演奏を聴いた人々は、南京事件という痛ましい歴史が忘れ去られることはないという安心感と、それでもなお日中の友好が続いてほしいという希望を感じています。遠い国の加害の歴史を、日本の市民が自ら歌い継ぐ姿に、多くの人が驚きと敬意を抱きました。
大きな政治的メッセージを掲げるのではなく、あくまで一人ひとりの心に語りかける音楽。その静かな力が、国境を越えた信頼の種になりつつあります。
避けて通らないための一歩として
日本では、戦争犯罪や中国との関係をめぐる話題は、家族や友人との会話の中で避けて通られがちです。しかし、避け続ける限り、お互いの誤解や不信感は解消されません。
草の合唱団の試みは、歴史をめぐる対話を始めるための一つのモデルだと言えます。専門家ではない市民が、自分の言葉と歌で過去と向き合い、中国の人々に敬意を持ってメッセージを届ける。その姿は、日中関係をめぐるニュースをどこか他人事として見てしまいがちな私たちに、静かな問いを投げかけています。
歴史と向き合う市民外交
外交というと政府間の交渉をイメージしがちですが、合唱や交流イベントのような市民レベルの取り組みも、立派な市民外交です。国境を越えた信頼は、こうした小さな交流の積み重ねから生まれます。
とくに、SNSを通じて情報が一瞬で広がる今の時代、草の合唱団のような活動は、日中双方の若い世代に新しい視点を提供する可能性があります。音楽という共通言語は、言葉や考え方の違いを越えやすいからです。
私たちにできる、小さな実践
では、この記事を読んでいる私たちは、何ができるのでしょうか。草の合唱団の取り組みをヒントに、日常の中でできる小さな実践をいくつか挙げてみます。
- 南京事件などの歴史について、本や資料を通じて自分なりに学んでみる
- 音楽や映画、ドキュメンタリーなど、アートを入り口に戦争や平和を考えてみる
- 家族や友人と、感情をぶつけ合うのではなく、事実や感じたことを丁寧に共有してみる
- 日中の若者や市民の交流を紹介する記事やコンテンツに目を向けてみる
- SNSで、対立をあおる投稿ではなく、対話や理解を促す情報をシェアしてみる
南京事件から80年以上が過ぎた今も、過去と向き合うプロセスは終わっていません。草の合唱団のような市民の声が、痛ましい歴史を忘れないための記憶の灯であり、同時に未来の平和を照らす小さな光にもなっています。音楽に耳を傾け、自分なりの言葉で歴史と対話することから、次の一歩を始めてみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








