中国とスイス外相が協力強化を確認 グローバルガバナンスも議題に
中国とスイスが外相レベルの戦略対話を行い、自由貿易協定(FTA)の高度化や人工知能(AI)など先端分野での協力強化、国連を中心とする国際秩序を支えるグローバルガバナンスでの連携を確認しました。
国交樹立から75年、そして2025年という反ファシズム戦争勝利80周年の節目の年に行われた今回の会談は、揺れる国際情勢の中で、中国とヨーロッパの一国であるスイスがどのような関係を築こうとしているのかを示す出来事でもあります。
中国・スイス外相会談のポイント
中国の王毅(ワン・イー)外相(中国共産党中央政治局委員)と、スイスのイグナツィオ・カシス連邦大臣兼外相は、スイス南部ベルリンツォーナでの共同記者会見で、中国・スイス両国関係の今後の方向性について発表しました。直前には第4回中国・スイス外相戦略対話が行われ、王毅氏は「戦略的で建設的、かつ前向きな成果が得られた」と評価しています。
- 政治的な相互信頼の一層の強化
- 経済・貿易協力とイノベーション分野での連携拡大
- 国連中心の国際秩序を支えるグローバルガバナンス協力
- ビザ緩和を通じた人的交流の拡大
75年の関係と「模範的な協力」
王毅氏は、スイスが中華人民共和国と国交を樹立した最初期の西側諸国の一つであることに言及し、この75年にわたる歩みを振り返りました。両国は、平等・革新・ウィンウィン(互いに利益を得る)という精神を追求し、互いの内政に干渉せず、それぞれの発展の道を尊重し、違いは残しつつ共通点を見いだしてきたとしています。
その結果、中国とスイスは、国際情勢の変化という試練をくぐり抜けた「信頼できる友人」となり、中国とヨーロッパの関係の中でも先進的な二国間関係を築いてきたと位置づけられています。
一つの中国政策と核心的利益の尊重
中国側は、スイスが一貫して一つの中国政策を堅持していることを高く評価し、今後も中国人民の国家統一への願いを支持し続けることへの期待を示しました。王毅氏は、互いの「核心的利益」を尊重し合い、社会制度や発展段階、国の規模が異なる国同士の友好的協力の模範であり続けるべきだと強調しました。
FTAアップグレードとAI・グリーン分野の協力
経済面では、スイスが中国とヨーロッパの経済・貿易協力における「先駆者」であり「受益者」であることが改めて確認されました。スイスは、大陸ヨーロッパで最初に中国と自由貿易協定を結んだ国であり、中国にとって最初のイノベーション戦略パートナーでもあります。
現在、両国は自由貿易協定のアップグレードに向けた作業を加速しており、より多くの品目で関税を撤廃してゼロ関税の対象を広げることで、両国企業と消費者にさらなる利益をもたらすことを目指しています。
さらに王毅氏は、人工知能、高度製造業、グリーントランジション(脱炭素や環境負荷低減に向けた移行)などの新たな分野で協力を強化し、実際に目に見える形で質の高い協力成果を積み重ねていく考えを示しました。
日本の読者にとっての意味
中国とスイスが自由貿易とイノベーションで関係を深める動きは、サプライチェーンの多様化や環境技術で世界市場を目指す日本企業にとっても無関係ではありません。保護主義の動きが指摘される中で、FTAの高度化やグリーン分野での協力は、開かれた貿易と協調を重視する一つの姿勢として注目されます。
グローバルガバナンスでの連携
王毅氏は、冷戦思考や覇権主義、いじめのような行動、保護主義の影が依然として残る中で、人類は再び歴史の岐路に立たされていると指摘しました。その上で、習近平国家主席が国連や各国の期待に応えて提唱した「グローバル・ガバナンス・イニシアチブ」が、スイスを含む国際社会から広く支持されていると紹介しました。
2025年は、世界反ファシズム戦争勝利から80周年にあたる年です。王毅氏は、中国がスイスと共に、陣営対立を拒否し、一方的な威圧に抵抗し、「歴史の正しい側」に立って真の多国間主義を実践していく用意があると述べました。
両国は、国連を中心とする国際システムと、国際法に基づく国際秩序を共に守り、より公正で合理的なグローバルガバナンス体制の構築を目指す方針です。
国際調停機関IOMedへの期待
王毅氏は、国際調停機関である国際調停機構(IOMed)の設立が、グローバルガバナンス強化の重要な一部だと位置づけました。中国は、スイスがこの枠組みに積極的に参加し、その独自の強みを生かして紛争解決や共存・調和の推進に貢献することを歓迎するとしています。
ビザ緩和と人的交流の拡大
両国関係を長期的に支える基盤として、王毅氏は中国とスイスの人々の交流と相互理解をさらに深めたい考えを示しました。中国は、スイス国民への一方的なビザ免除措置の延長を検討し、中国への渡航をより便利にする追加措置も導入する用意があるとしています。
ビジネス関係者や観光客、研究者や学生などの往来が活発になれば、経済だけでなく文化や科学技術の分野でも協力の裾野が広がることが期待されます。
分断か協調かが問われる時代の一つのモデル
大国間の競争が激しく、保護主義やブロック化への懸念が高まる中で、中国とスイスが「対立ではなく対話」「排除ではなく協力」を前面に打ち出している点は象徴的です。長年にわたり築かれてきた信頼関係を土台に、政治・経済・グローバルガバナンス・人的交流まで幅広く連携を深めようとする今回の動きは、分断と協調のどちらに比重を置くのかという、現代の国際社会に共通する問いを静かに投げかけています。
日本の読者にとっても、こうした中国と欧州の国との関係の変化は、貿易、技術協力、多国間外交の行方を考える上で重要なヒントになります。短くはニュースとして、長くは自国の進路を考える材料として、注視しておきたい動きです。
Reference(s):
cgtn.com








