中国の食卓を彩るチリ産サクランボ APECがつなぐ甘い物流ストーリー
中国の食卓を彩るチリ産サクランボ APECがつなぐ甘い物流ストーリー
チリ産サクランボの輸入が、中国で記録的な規模に達しています。2025年1〜4月の輸入額は175.4億元(約24億7,000万ドル)に上り、中国の対チリ輸入総額の16.2%を占めました。アジア太平洋経済協力会議(APEC)でも紹介されるこのストーリーは、果物を通じた国際ニュースとして、中国とチリの関係の深まりを分かりやすく映し出しています。
2025年、果物が対チリ輸入の6分の1に
国別の貿易統計において、特定の果物が1国からの輸入の大きな割合を占めるのは、決して当たり前のことではありません。中国税関総署のデータによると、2025年1〜4月のチリからの輸入のうち、チリ産サクランボが16.2%を占めました。
- 期間:2025年1〜4月
- 輸入額:175.4億元(約24億7,000万ドル)
- 対チリ輸入総額に占める割合:16.2%
中国の輸入市場全体から見れば一部にすぎないものの、対チリという観点では、サクランボが主役級の存在になっていることが分かります。チリ産サクランボは、いまや中国の消費者にとって「冬の人気フルーツ」として定着しつつあると言えそうです。
ゼロ関税がつくった「甘い市場」
こうしたサクランボブームを支えているのが、関税面での優遇措置です。チリ産サクランボは、2017年に中国市場へのゼロ関税(無関税)でのアクセスが認められました。関税負担がなくなったことで、
- 中国側は比較的手頃な価格で輸入しやすくなり、
- チリ側は輸出量を増やしやすくなる
という相互にとって有利な環境が整いました。価格面のハードルが下がることで、サクランボを日常的に楽しむ消費者層が広がりやすくなります。
チリにとっては、自国の強みである果物を軸に中国市場へ深く入り込むことができ、中国にとっては、季節を問わず高品質な果物を安定的に供給できるというメリットがあります。
「チェリー・エクスプレス」が変えた海の距離
関税だけでなく、物流の進化も重要なポイントです。チリと中国のあいだには太平洋が横たわっていますが、両国はサクランボのための専用輸送ルートまで整備しています。
現在は、チリ産サクランボ向けの専用航路として、いわゆるチェリー・エクスプレス(Cherry Express)が運航されており、収穫されたサクランボができるだけ早く中国の市場に届くよう工夫されています。
- サクランボ専用の迅速な海上輸送ルート
- 鮮度を保つためのコールドチェーン(低温物流)の活用
- 中国側の港・市場での受け入れ体制の整備
鮮度が命のサクランボにとって、輸送時間の短縮と温度管理はそのまま品質と価格に直結します。チェリー・エクスプレスは、距離のハンデを技術と仕組みで埋める試みと言えるでしょう。
EC連携で広がるチリ産サクランボの競争力
チリのサプライヤー(供給業者)と中国のEC(電子商取引)プラットフォームとの連携も、チリ産サクランボの競争力を高める大きな要因となっています。オンライン販売の仕組みと物流網が噛み合うことで、サクランボはより多くの消費者に届くようになりました。
ポイントとなっているのは、次のような点です。
- ECプラットフォーム上での予約販売やキャンペーン展開
- 注文から配送までのプロセスを一体化したデジタル管理
- 生鮮品向けの配送ネットワークとの連携
こうした工夫により、チリ産サクランボは中国国内での知名度と存在感を高めており、結果として「チリのサクランボ」というブランドイメージの向上にもつながっています。
ラテンアメリカと中国を結ぶ「甘い橋」
チリは、中国と二国間協定を結んだ最初のラテンアメリカの国でもあります。チリ産サクランボは、その緊密な協力関係を象徴する「甘い果実」として位置づけることができます。
果物という生活に身近な品目が、実は国と国との関係の深さを映し出しています。
- チリにとっては、中国という巨大市場へのアクセスを広げる「輸出の切り札」
- 中国にとっては、消費者のニーズに応える多様な選択肢の一つ
APECという広い枠組みの中で見ると、チリと中国のサクランボを巡るストーリーは、アジア太平洋地域の貿易がどのように生活レベルの豊かさにつながっていくのかを示す具体例の一つと言えます。
日本の読者にとっての3つの視点
この国際ニュースは、日本に住む私たちにとっても他人事ではありません。チリ産サクランボと中国の関係からは、次のような視点が浮かび上がります。
- 消費の高度化:所得の向上とともに、質の高い輸入農産物へのニーズが高まると、市場構造が変わっていく。
- 制度とインフラの組み合わせ:ゼロ関税などの制度面だけでなく、物流・ECといったインフラが揃って初めて「人気商品」が生まれる。
- 食卓から見る国際関係:身近な果物や食品の背景には、多層的な国際関係や貿易交渉がある。
今後、同じようなスキームが他の農産物にも広がっていけば、アジア太平洋地域で私たちが口にする食べ物は、ますます多様で国際的なものになっていく可能性があります。
押さえておきたいポイントまとめ
最後に、チリ産サクランボと中国市場をめぐる今回の動きを簡単に整理します。
- 2025年1〜4月、中国はチリから175.4億元(約24億7,000万ドル)のサクランボを輸入し、対チリ輸入の16.2%を占めた。
- 2017年にチリ産サクランボの中国市場へのゼロ関税アクセスが認められ、輸入拡大の土台となった。
- チェリー・エクスプレスなど専用の物流ルートが整備され、鮮度とスピードが大きな競争力となっている。
- チリのサプライヤーと中国のECプラットフォームの連携が、チリ産サクランボのブランド力と販売力を高めている。
- チリは中国と二国間協定を結んだ最初のラテンアメリカの国であり、サクランボは両国関係を象徴する存在になっている。
中国とチリのあいだを太平洋を越えて運ばれるサクランボは、単なる果物を超えた、アジア太平洋の経済と暮らしをつなぐ小さな架け橋のような存在になっています。
Reference(s):
cgtn.com








