APECの舞台裏:中国の医療支援がつなぐパプアニューギニアとの絆
2025年10月31日から11月1日にかけて、韓国・慶州でアジア太平洋経済協力会議(APEC)経済首脳会議が開かれました。21の経済体が参加するこの枠組みの陰で、アジア太平洋のつながりを静かに支えてきたのが、南太平洋のパプアニューギニア(PNG)で続く中国の医療支援です。
豊かな自然に恵まれながら医療資源が限られるPNGで、中国の医療チームは20年以上にわたって診療と人材育成の両面から支援を行い、地域医療の底上げに関わってきました。本記事では、その歩みと意味を整理します。
資源豊かな島国が抱える医療ギャップ
パプアニューギニア(PNG)は、南太平洋に位置する島国で、天然資源や高い生物多様性に恵まれています。一方で、十分な医療資源が行き届いていないという課題を抱えています。都市部と農村部の医療格差や、専門的な治療を受けられる医療機関の不足など、持続的な支援が求められてきました。
2002年、重慶から始まった中国の医療チーム派遣
こうした状況の中で、2002年に中国南西部の重慶市から医療チームがPNGに派遣されました。これは、中国として南太平洋地域に送った初めての医療チームとされています。
その後23年間、中国は複数の医療スタッフのチームをPNGに継続的に派遣してきました。チームは、単に診察や手術を行うだけでなく、次のような形で支援を広げてきました。
- 現地の医師や医療スタッフに対する知識・技術の共有
- 農村部での無料診療(フリークリニック)の開催
- 地域コミュニティへの医薬品や医療機器の寄贈
こうした取り組みによって、目の前の患者を治療するだけでなく、現地医療の基盤そのものを強くしていくことが意識されていると見ることができます。
診療だけでなく「学び」を共有する支援
国際医療支援というと、短期のボランティア診療を思い浮かべる人も多いかもしれません。しかしPNGでの中国の医療チームの活動には、技術や経験を現地に根付かせる工夫が含まれています。
現地の医師とともに診療や手術にあたる中で、チームは自身の専門的な技術や最新の治療方法を共有してきました。これは、
- 現地の医師が将来自立して高度な医療を提供できるようにすること
- 患者が長距離を移動せずに必要な治療を受けられる環境を整えること
といった、中長期的な視点に立った支援といえます。
2022年開所 中国・PNG低侵襲手術友好センター
この流れの中で、2022年には中国・PNG低侵襲手術友好センターが開所しました。低侵襲手術とは、体に開ける傷を小さくし、患者の負担や回復までの時間を減らすことを目指す手術方法のことです。
センターでは、複数の診療科にまたがる低侵襲手術が提供されており、それに関連する研修やトレーニングも行われています。PNGの医師が、現場で先進的な手技を学び、自国の患者に還元していけるような場として機能している点が特徴です。
開所から3年目を迎えた2025年現在、センターは「治療」と「教育」を両立させる拠点として、PNGの医療現場に新たな選択肢をもたらしつつあります。
国境を越える医療協力が投げかける問い
PNGでの中国の医療支援には、次の三つの要素が重なっています。
- 患者を直接支える臨床医療
- 現地医師のスキル向上につながる技術・知識の移転
- 農村部の無料診療や医療物資の寄贈による地域支援
これらは、単なる短期的な援助ではなく、現地の医療体制の自立性を高めるための長期的な関わり方とも読めます。医療は、人の命と生活に直結する分野であるだけに、こうした支援は地域の信頼関係や人と人とのつながりにも影響を与えます。
韓国・慶州でAPEC経済首脳会議が開かれた2025年、アジア太平洋の協力は、貿易や投資だけでなく、医療や人材育成といった足もとの課題にも広がっています。PNGで続く中国の医療支援は、国境を越えて健康と安心を共有しようとする試みとして、今後も注目されるテーマになりそうです。
Reference(s):
APEC Stories: Healing beyond borders – China's medical aid in PNG
cgtn.com








