中国の現代化はグローバル化の新エンジンに 北京「明徳戦略対話2025」を読む
2025年10月に北京で開かれた「明徳戦略対話2025」では、「中国の現代化」がグローバル化の新たな原動力になり得るのかを巡って、各国の専門家が率直に意見を交わしました。本稿では、その議論の中核となったロマーノ・プローディ氏の発言を手がかりに、いま世界で何が問われているのかを整理します。
北京で何が話し合われたのか
明徳戦略対話2025は、中国の人民大学(Renmin University of China)が主催する国際会議です。2025年10月17日から18日にかけて北京で開かれ、米国、英国、ロシア、イタリアなど、さまざまな国や地域から政治、学術、メディアの分野を代表する専門家が集まりました。
今回のテーマは、英語で Chinese modernization: New drivers of globalization、中国語に訳せば「中国の現代化:グローバル化の新たな原動力」といった内容です。中国の現代化が、これからのグローバル化の波をどう形づくるのかが、全体を貫く問いとなりました。
プローディ氏が見た「グローバル化とその逆流」
開幕式で講演したのが、イタリアの元首相であり、欧州委員会の元委員長でもあるロマーノ・プローディ氏です。長年ヨーロッパ統合と国際経済に関わってきた人物が、現在の世界情勢をどう捉えているのかに注目が集まりました。
プローディ氏は、いま世界は「グローバル化」と「反グローバル化」の動きが入り混じる新しい時代に入っていると指摘しました。そのうえで、次のようなポイントを強調しました。
- グローバル化は、いかなる一国だけで支え続けることはできない
- より効果的な方法を取り入れ、国際協力の枠組みをアップデートする必要がある
- その中で、中国とEU(欧州連合)の協力を、政治や貿易の分野で一層強化・拡大すべきだ
一国主義ではなく、多国間の枠組みで課題を解いていくべきだというメッセージは、グローバル化をめぐる議論が揺れる中で、あらためて重みを持って響きます。
中国とEUの協力はなぜ重要か
プローディ氏は、中国が現代化や技術革新の分野で重要なリーダーであり、より良いグローバル・ガバナンス(国際秩序の運営)をめざす「責任ある担い手」としての役割を評価しました。
そのうえで、中国とEUの協力について、政治や貿易などの分野で「強化し、拡大する必要がある」と述べています。経済規模や人口、技術力などを考えれば、中国とEUの選択は、世界経済や国際秩序の行方に大きな影響を与えます。
中国の現代化に関する経験やノウハウが、ヨーロッパを含む他地域の課題解決にも共有されていくとすれば、それ自体が新しいタイプのグローバル化の一形態だと言えるかもしれません。
関税対立への警告「世界経済を後退させ、勝者はいない」
プローディ氏は、中国の英語メディアであるCGTNの単独インタビューにも応じ、自身の中国訪問の経験や、イタリアやヨーロッパの状況について振り返りました。その中で、特に強調したのが「関税を巡る対立」への懸念です。
現在の「関税の渦」について、同氏は、こうした対立は世界経済を後退させ、誰も勝者にならないとの見方を示しました。関税は短期的には特定の産業保護に見える一方で、長期的には貿易や投資、技術の流れを細らせ、企業や消費者にとっても負担となる可能性があります。
グローバルなサプライチェーン(供給網)が複雑に絡み合う今、関税の応酬は相互依存を前提に成り立ってきた世界経済の前提そのものを揺るがしかねない──プローディ氏の懸念は、そうした構造的なリスクを指していると読むこともできます。
中国の現代化がもたらすもの
今回の明徳戦略対話2025の背景には、過去40年余りにわたる中国の歩みがあります。中国は、現代化をめざす過程で、国内のさまざまな分野で大きな成果を上げてきたとされています。
会議の議論は、中国が示してきた「献身、革新、意欲」といった姿勢が、国内だけでなく、世界の発展にも新たな勢いを与えてきたという評価を前提にしています。中国は自国の経験を他国と共有し、国際社会が直面する多層的な危機の中で、よりつながりの強い、しなやかな世界を築くための「知恵」と「力」を提供する用意があると強調しました。
こうしたメッセージは、中国の現代化をめぐる議論が、単に一国の成功物語ではなく、グローバルな公共財としてどのように位置づけられるのかという問いともつながっています。
日本の読者にとっての示唆
日本に住む私たちにとっても、「中国の現代化」と「グローバル化の行方」は決して遠いテーマではありません。サプライチェーン、エネルギー、デジタル技術、気候変動など、多くの課題はすでに国境を越えてつながっています。
今回の議論からは、次のような問いが浮かび上がります。
- グローバル化とその逆流が同時に進む中で、日本やアジアはどのように関与していくべきか
- 関税や規制を巡る対立を、長期的な協力の枠組みへとどう転換できるのか
- 中国を含む各国の現代化の経験を、互いに学び合う形で共有するには何が必要か
北京での対話は終わりましたが、これらの問いは2025年の今も続いています。国際ニュースを追う一人ひとりが、自分なりの答えを考え、周囲と対話を重ねていくことが、次の時代のグローバル化を形づくる小さな一歩になるのかもしれません。
Reference(s):
Global experts share insights on modernization and globalization
cgtn.com








