中国商務省が2025年版「米国のWTO遵守報告」を公表 多国間貿易体制への懸念とは
中国商務省が、世界貿易機関(WTO)に対する米国の対応を評価する2025年版の報告書を公表しました。報告書は、米国の通商政策が多国間貿易体制や世界のサプライチェーンに与える影響への懸念を改めて示しており、今後の国際経済秩序を考える上で見逃せない内容となっています。
中国商務省が2025年版報告書を公表
中国商務省は金曜日、2025年版の「米国のWTO遵守状況に関する報告書」を発表しました。同省によると、この報告書は、米国がWTOのルールをどのように守っているかを分析したもので、米国の通商政策や産業政策に対する懸念をまとめています。
同様の報告書はこれまでに2023年と2024年にも公表されており、今回で3回目となります。中国が継続的に米国のWTO対応を検証していることを示す動きだと言えます。
米国のWTO遵守をめぐる主な懸念点
報告書はまず、米国の通商分野での姿勢について、いくつかの点で問題があると指摘しています。商務省は、米国の行為が「貿易上のいじめ」や産業政策におけるダブルスタンダード(二重基準)につながっていると懸念を示しました。
報告書が挙げる主な懸念点は次の通りです。
- 貿易上の「いじめ」的な慣行(trade bullying)が見られること
- 産業政策で二重基準が適用されていること
- 一方的な措置のエスカレートと、差別的な政策の頻繁な実施
- こうした措置が、多国間貿易体制を損ない、世界の産業・サプライチェーンを混乱させていること
とくに報告書は、米国が導入した「相互主義関税(reciprocal tariffs)」と呼ばれる関税措置や、いわゆる「グローバルな貿易戦争」を展開しているとされる動きに触れ、それらが他国の正当な権利と利益を侵害していると問題視しています。
多国間貿易体制とWTOへの影響
中国商務省は、WTOを中核とする多国間貿易体制を「経済のグローバル化と国際貿易の礎石」と位置づけています。報告書によれば、WTOはルールに基づく国際機関であり、加盟メンバーが自らの権利を享受する一方で、義務を十分に守ることを前提に機能するべきだとしています。
加えて、この体制は加盟メンバー同士の相互監督と協力によって支えられていると指摘し、その枠組みが現在、大きな挑戦に直面しているとの認識を示しました。報告書は、米国の一方的な措置が、こうした多国間の枠組みに負荷をかけていると懸念を表明しています。
中国が米国に求めている対応
2025年版報告書を通じて、中国は米国に対し、具体的な変化を求めています。商務省は、米国が現在のやり方を改め、WTOルールに従うよう促しています。
報告書が示す米国への要請は、主に次のような内容です。
- 「誤った慣行」を速やかに是正すること
- WTOルールを順守し、加盟メンバーとしての義務を履行すること
- 「相互主義関税」など、WTOルールに合致しないとされる措置をできるだけ早く放棄すること
さらに中国は、今回の報告書が、米国に対して他のWTOメンバーと協力し、多国間貿易体制がグローバルな経済ガバナンスの中でより大きな役割を果たす方向へと進むきっかけになることを期待するとしています。
あわせて、中国側は、「公平で秩序ある多極的な世界」と「すべての国と地域にとって裨益的で包摂的な経済のグローバル化」に、各国が共にコミットすることの重要性も強調しました。
日本や世界の読者が注視したいポイント
今回の報告書は、中国と米国という二大経済の関係だけではなく、WTOを軸とした国際経済秩序のあり方をめぐる問題提起でもあります。多国間ルールを重視するのか、それとも一国主導の措置を重ねていくのかという点は、多くの国にとって無関係ではありません。
とくに、次のような点は、今後の国際ニュースを追ううえで鍵になりそうです。
- 米国の関税政策や通商措置が今後どのように変化するか
- WTOを含む多国間の枠組みが、どの程度「ルールに基づく体制」として機能し続けられるか
- 他のWTOメンバーが、こうした問題提起にどのような姿勢を示すか
貿易摩擦やサプライチェーンの分断は、企業活動や雇用、物価にも影響しうるテーマです。2025年版のこの報告書は、国際通商の行方を考えるうえで一つの重要な資料となりそうです。今後の米国の対応や、WTOでの議論の行方にも注目が集まりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








