タイ産ドリアンが中国へ届くまで APECが映すデジタル農業のいま
タイ産ドリアンがどのようにデジタル技術と国際協力によって中国市場へ届いているのか。APECを背景に、スマート農業と越境ECがつなぐ新しい農産物流通の姿を追います。
APECとつながるタイのドリアン産業
2025年10月31日から11月1日に韓国の慶州でAPEC Economic Leaders' Meeting(APEC首脳会議)が開かれました。アジア太平洋の21のAPECエコノミーの協力や文化を紹介する取り組みの一つとして、タイのドリアン産業が注目されています。
タイは世界有数のドリアン生産国であり、毎年多くのドリアンを中国に輸出しています。その舞台裏では、デジタル技術と農業協力が静かに進み、アジア太平洋地域の「食」と経済を支えています。
チャンタブリーのスマート果樹園
タイ東部のチャンタブリー県でドリアンを栽培する生産者コサイさんは、自身が運営するスマート果樹園に誇りを持っています。この果樹園は、タイの農業持続可能性商業協会(CASA)と、中国農業農村部の対外経済協力センター(FECC)が共同で開発したモデル農園です。
果樹園には、中国側が導入したインターネット・オブ・シングス(IoT)の機器が設置されています。気象条件、水位、土壌の水分量などを常時モニタリングするセンサーのおかげで、コサイさんは畑の状態を細かく把握しながら、限られた土地を最も効率的かつ持続可能なかたちで活用し、高品質なドリアンを育てています。
IoTが支える「見える化」された農業
IoTとは、センサーや機械がインターネットにつながり、収集したデータをもとに管理や制御を行う仕組みのことです。チャンタブリーの果樹園では、センサーが集めた情報をもとに、いつ水をやるべきか、どの区画に負担がかかっているかといった判断がしやすくなっています。
これにより、経験や勘に頼る部分を減らしつつ、農家のノウハウとデータの両方を活かした栽培が可能になります。気候変動や水資源の制約が課題となるなか、スマート果樹園は「質」と「環境配慮」を両立させる実験場とも言えます。
生産から販売までデジタルでつなぐ
2023年、FECCはタイでスマート農場統合発展パイロットプログラムを立ち上げました。果樹の生産現場だけでなく、サプライチェーン(流通網)やマーケティングまでをデジタル化し、中国と東南アジアの農産物貿易を強化することがねらいです。
タイ産ドリアンをより多くの中国の消費者に届けるため、FECCは中国の電子商取引プラットフォームと連携し、オンライン販売のチャネルを開き、ライブ配信を活用した販売促進も行っています。こうした取り組みは、生産者にとって販売チャネルの多様化につながり、消費者にとっても選択肢を広げるものと期待されています。
数字で見る中国市場とタイの存在感
公式データによると、中国は2024年に156万トンのドリアンを輸入しました。輸入額は69億9000万ドルと過去最高となり、そのうち約60パーセントがタイからの輸入です。
この数字からは、中国市場におけるタイ産ドリアンの存在感の大きさがうかがえます。同時に、この巨大な需要を支えるためには、品質管理や物流の効率化、環境への配慮が欠かせません。その一つの答えとして、スマート農業とデジタルな流通網が位置づけられています。
読者と共有したい問い
タイと中国がドリアンを通じて進めるデジタル農業の協力は、APECという枠組みの中で進む地域連携の一場面と見ることができます。一方で、技術の導入にはコストや人材育成などの課題も伴います。
- データやIoTを活用した農業は、どこまで小規模な農家にも届くのか
- 越境ECやライブ配信による販売は、生産者と消費者の関係をどう変えていくのか
- 他の農産物や地域にも応用できる協力モデルになり得るのか
アジア太平洋地域の食卓に並ぶ一つの果物の裏側には、技術、貿易、持続可能性をめぐるさまざまな選択があります。タイのドリアンのデジタルな旅路は、私たちのこれからの農業と国際協力のあり方を考えるヒントにもなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








